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輸血法(administration of blood) ~ 詳細な臨床諸検査を行って異常の有無を検査し、供血に支障のないものを選定します

輸血法 出血・止血および輸血

 
 

供血動物の検査

 
 
採血に当てる供血動物については、その健康状態、既往症、年齢、体重などについて検査し、特に伝染性疾患、循環機能、肝機能、血液所見などについての詳細な臨床諸検査を行って異常の有無を検査し、供血に支障のないものを選定します。
 
 
特に血液検査においては、血色素量、血球血漿容積比、赤血球数、全血比重、白血球数、血漿総蛋白量などの測定を行う。また、少なくとも受血動物の血液と供血動物の血液との間の交差試験を行って成績陰性のものを選ぶ。
 
 

輸血用器具

 
 
輸血用器材としてはいずれも十分に消毒された次のものを用意する。
 
 
採血瓶(これは後にそのまま輸血瓶として使用する)、輸血用フィルター、採血管、瓶栓、採血針、輸液チューブ(輸液瓶から静脈針に至るチューブで、瓶針にはじまり途中に点滴筒とクランプを挟んで静脈針に至るもの)、静脈針、タコ管、絆創膏などです。
 
 
小動物用の輸血用具としては人医用の輸血プラスチックバッグ、輸液セットを用いることもできる。輸血中に動物が動くと、静脈針が血管外に脱出して血液が漏れることがあるので、留置カテーテルを備えた静脈カニューレを用いるとよい。
 
 

抗凝固薬

 
 
直接輸血に際して大切なことは血液操作に必要な抗凝固薬の選定です。一般に抗凝固薬として使用されているものはクエン酸ナトリウムとヘパリンです。
 
 
クエン酸塩を使用するときの濃度および添加量は、犬で6%のクエン酸塩を採血量の8%添加する方法が最適であるといわれている。
 
 
しかし、生体内のクエン酸が過剰になると、血中カルシウムと結合して、低カルシウム血症をきたし、循環機能の低下や血液凝固に支障を招いて出血をきたす。
 
 
クエン酸ナトリウムの犬に対する致死量は0.17~0.25g/kgとされています。
 
 
ヘパリン使用の際にはヘパリンNa 10IU/mlで十分です。100IU/mlを越えると細胞障害が現れるといわれている。
 
 
稀に過敏症反応を惹起することがあるが、ヘパリンによって生ずる支障の大部分は大量使用における血液凝固機能の低下による出血です。
 
 
なおヘパリンの代用薬として、副作用が少ない硫酸デキストランおよび硫酸ナトリウムが注目されている。
 
 

輸血の実施

 
 
受血動物への注入には静脈内、腹腔内、骨髄内、筋肉内などのルートがありますが、循環系に対する効果や手技の難易などの点で静脈内注入が最善です。
 
 
血圧低下、高度の浮腫などのため駆血法を試みてもなお、血管の怒張が見られないような症例の場合にも、切皮をしてでも静脈内へ輸血すべきで、安易に腹腔内輸血などをおこなうべきではない。
 
 
Bernoulliの定理によると、輸血速度は針の内径の4乗に比例するとされている。注入は一気に続いて行わず、人についてOehleckerの示した実施法のように、最初に10~20mlを輸血したならば2~3分間観察し、異常が無ければ次に50mlだけ注入して、再び2分間観察し、異常を認めなければ引きつづいて輸血をする。
 
 
これによって、急性に発現する輸血反応を早期に発見し、副作用を防止することができる。
 
 

輸血量

 
 
輸血量の決定は受血動物の病状によって定まる。その決定に際して、血液の一般検査と心電図、体重、血圧、尿の1日量および尿検査をすべて行えば十分ですが、欠くことのできない検査としては貧血及び血液濃縮の状態を把握するために赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値、血漿総蛋白量の測定と、循環機能の指標である血圧と脈拍数を測定することです。
 
 
なお、大動物の野外や救急時において測定機器類を使用して正確に測定することが不可能な場合には、可視粘膜によって貧血の程度を知り、触診(大動物では外顎動脈、小動物では股動脈)によって血圧、脈拍数の大要を知ることが出来る。
 
 
輸血の必要量はおおよそ受血動物と供血動物の血液のPCVまたはHb含有を基礎にして計算され、次のような式が適用されます。
 
 
輸血量(ml)=$\frac{期待PCV値(%)- 受動動物のPCV値(%)}{供血動物のPCV値(%)}$

x 受血動物の体重(kg)x90(犬)または70(猫)
 
 
一般に術前のPCVが20%以下またはHbが7g/dl以下の場合には、輸血を行ってPCVを27~30%、またHbを7~10g/dl程度に改善することが必要です。
 
 
また貧血(PCV 10~15%)のため元気・食欲がない場合に10ml/kgの輸血では効果が小さく、20ml/kgを注入すれば明らかな臨床的効果が得られるものです。
 
 
いずれの計算法による場合でも、輸血実施後は輸血前と同様の検査を行ってその効果を確認し、必要ならば輸血を持続するか、または手術を延期するなどの判断が必要です。
 
 
術中に起きた出血を補うための輸血量は、詳しくは術前と術後の循環血液量の差をEvansblueを用いて測定する色素法によって計算されますが、他にガーゼに吸い取った血液の重量を測定して求める重量法(血液のほかに滲出液量も含まれる)、手術中にガーゼに含まれた血液を水で滲出し塩酸ヘマチンとして血色素計で測定して計算する比色法(赤血球の喪失を主とする)の3法がある。
 
 
一般には重量法が簡単なので使用されています。これは一般にガーゼに吸い取った血液の重量を測定して求めるWangensteen法によるが、測定結果は実際の循環血液量の減少より少なめなことが多いため、輸血量は測定した出血量の1.2~1.5倍が良いとされています。
 
 
術中の輸血にさきだってブドウ糖加リンゲル液の輸注を行う必要があり、またこれを輸血中も継続すれば水、電解質代謝に効果的で、利尿にも資する。
 
 
術後の輸血量については術中と異なって、術後の出血量の測定が困難なので、血圧、脈拍、Hb量、Ht値、赤血球数などにもとづいて輸血量を定める。
 
 
術前、術中の輸血が適切に行われていれば、術後少量の後出血があっても、さらに輸血の必要はないが、術中に大量の出血があり、これに対して十分な輸血が行い得なかったものには、後出血が認められなくても不足量の輸血は実施する。
 
 
術後出血の特に多い胸部手術(心、肺)、腹部手術(膵、肝、腸など)、食道、直腸などの手術後には十分な輸血を行うが、その際には、血圧、脈拍、Ht値などを指標として決定する。
 
 

輸血速度

 
 
静脈内輸血は普通は点滴注入法によって行いますが、その速度は受血動物の状態によって異なる。犬、猫では1分間に1mlの割合で注入するのがもっとも安全です。多量の出血などのために血圧が低下し、出血性ショック状態にあるときは、血圧を指標として大量を急速輸血する。
 
 
また反対に、慢性の貧血症などの場合は基準速度で輸注するか、またはより緩徐な速度で行わないと、嘔吐、痙攣などの副反応が現れる。
 
 
一般に受血動物の血圧は輸血速度の緩急に応じて変化するので、脈拍や血圧などの循環機能を監視しながら輸血速度を決定すべきです。
 
 
点滴輸血で注意すべきことは、針先が凝固でつまることや静脈の痙縮をきたすことです。長時間同一の血管を使用すると血栓性静脈炎をおこしやすいから、おおむね24~48時間後には注入部位を別の新しい血管に換える。
 
 

輸血中の監視

輸血において、特に注意を要することは、循環血液量の確実な補充と同時に、過剰輸血による循環器への過負荷および肺水腫です。

これがためには輸血中に動脈圧および脈拍数を測定するほか、中心静脈圧(CVP)を計測することが必要です。この三者を測定して判定することによって循環機能の状態がより正確に把握できる。

CVPは右心負荷において異常な上昇を示すが、その絶対値よりもその推移を観察しなければなりません。CVPの測定によって全血液量の70%以上を容れる静脈系の充満度を総括的に知り、全静脈血の右房への流入圧、つまり全静脈還流量を駆出する1回の心拍動の強さが判定され、結果的には脈管腔内の循環血液量の多少が推察される。

CVPの測定は輸血、輸液時における重要な指標です。

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