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輸血の適応症(indications)と禁忌(contraindications)

輸血の適応症(indications)と禁忌(contraindications) 出血・止血および輸血

 
 
輸血の目的として挙げられる体液量や循環血液量の維持、血液の酸素運搬能の急速増加のための赤血球の補給、栄養補給として血中蛋白濃度の増加、造血機能に対する有効な刺激、止血のための血液凝固機能の促進維持、各種免疫体の付与、免疫作用など、輸血はその必要のある各種の疾患に対してすべて有効であり、患畜の生命を維持し、疾病の回復に与って大なる力があるとされています。
 
 
とくに外科領域においては、手術前には患畜をできるだけ正常な状態に保って麻酔や手術侵襲に十分耐えられるようにし、術後においては術創の治癒を促進し、また合併症を防止して良好な回復を図るうえで、輸血の効果は非常に大きい。
 
 

ショック

輸血の効果はショックの防止と治療において大いに発揮されますが、ショックの実態についてはいまだ不明な点が多いため、すべての場合に適合するとは限らない。しかし、血(液)原性ショックといわれる外傷、外科手術に起因する出血、筋肉が広範囲にわたって挫滅された場合の挫滅症候群などにおいて、いずれも循環血液量の喪失や血管外への血漿の滲出のため、血圧が急激に低下し、心、肝、腎などの機能が変調をきたして、ショックに特徴的な各種の症状が認められた場合は有効です。

通常のショック症状としては、皮膚の冷汗、四肢冷却、脈拍細小、血液降下などがあげられます。

初期には、これらの症状の一部を欠くこともあって、診断を誤ることもありますが、血圧の変化は血液亡失量に応じて現れるので、血圧測定は欠くことができない。輸血によってショック状態が改善されるのは、一つは血管床の充実、およびこれに伴う血圧の上昇、組織の酸素不足の回復、細胞に過負荷となる代謝産物の除去、血液と蛋白の喪失の補正、中枢神経およびホルモンの調節障害の改善などによる。

したがって、ショック時の輸血は早期大量に実施する必要があり、その効果は輸血速度および方法に関連しています。血圧が低いほどできるだけ早期に、かつ急速に実施すべきであって、時期が遅くなるなるほど輸血必要量は多くなる。

出血性ショックに対する処置として輸血を行う場合には、細胞外液(ECF)のサードスペース(第3の体液区分)への喪失を考慮する必要がある。

すなわち、循環血液量の10%脱血ではECFの減少は脱血中の血漿量と同程度ですが、25%脱血ではECFの減少は失われた血漿量の5倍にも達する。

後者の脱血量のみを還血した場合の生存率は20%であったが、ECF喪失分を乳酸加リンゲル液で補うと死亡率が低下して生存率が80%に上昇したと報告されている。また、輸血とともに乳酸加リンゲル液を加えると間質圧を上昇させることができ静脈還流の改善に役立つとされています。最近では、全血輸血ではなく、投与量を誤らずに使用する限りでは赤血球液と乳酸加リンゲル液で十分であろうとする考え方もでている。

 
 

急性および慢性出血

 
 

急性出血

外傷及び手術に基因する出血の多くはその出血量を正確に把握することが困難です。輸血の必要量は循環血液量の減少の程度その他種々の因子によるので一概にいえないが、血圧、脈拍数を指標として輸血を行い、あわせて血色素(Hb)量、血球血漿容積比(Ht値)、赤血球数を測定し、貧血および血液濃縮の状態を観察して決める。

 
 

慢性出血

外科における慢性出血は悪性腫瘍によるものが多い。

したがって、同時に低蛋白血症を伴う貧血および低蛋白症、手術を必要とする患畜に対しては輸血が必要です。

 
 

術前、術中、術後に対する輸血

手術前に諸検査を厳密に行って、できるかぎり患畜を正常な状態に維持することにつとめ、麻酔、手術侵襲によるショック、術後の合併症の発現を防止しなければならない。

術前輸血の目的は、主として貧血および低蛋白血症の是正にあり、その輸血量は患畜の循環機能の状態、脱水、浮腫の状況、貧血の程度によって勘案する。

術中輸血は、術前から肝疾患、黄疸、慢性感染症、悪性腫瘍などを有する患畜に対しては、早期に開始する方が安全です。

 
 

その他の適応症

 
 

圧挫症候群(挫滅症候群)crush syndrome

重症の筋挫傷を伴い、ショック症状および腎障害が現れ、挫滅された筋肉中に血漿が大量に漏出して血液濃縮が発生する。しかし、血球乏失は少なく、持続時間も短い。

これらに対しては代用血漿または血漿製剤が有効です。

 
 

感染症

敗血症、重症創傷感染症に対して輸血を行うと、免疫体を与え、抗菌作用を付与し、刺激あるいは変調作用が有利に作用するので、従来から輸血の主要な適応症の一つになっている。

 
 

止血

輸血は所要の血液量を補給するとともに、輸注する新鮮血や血漿中には止血作用に関与する因子が含まれているので血液凝固作用に貢献する。外科領域で遭遇する低プロトロンビン血症(閉塞性黄疸、抗生物質の長期投与)および低フィブリノーゲン血症(大手術、特に胸部手術、膵手術、重度外傷、ショック、末期癌など)に対する輸血の効果は、特にその止血作用において著しい。

 
 

輸血の禁忌

高血圧症、肺炎で循環障害を伴うもの、血栓性静脈炎、妊娠、脳疾患(特に脳圧亢進をきたすもの)、心疾患(心肥大、心内膜炎、心筋炎など)アレルギー性疾患などにあっては、輸血に際して必要量以上の輸注を極力避けるか、または輸血を行わない。

また肝、腎などの障害のある場合は、クエン酸中毒に注意する必要がある。しかし、一般には臨床上輸血禁忌の疾患はないといえる。

 
 

輸血の適応と効果

 
 
適応:ショック、貧血、出血、中毒

手術、体外循環(人工心肺)
白血病、再生不良性貧血
顆粒球、血小板、アルブミン、グロブリン、凝固因子などの減少や欠乏

効果:循環血液量・蛋白濃度・その他不足分の増加

酸素運搬能力の向上
血液凝固性の増加
造血機能の刺激
免疫体の付与
免疫作用の賦活
手術動物の回復・治癒促進

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