PR

犬の血液型 ~ 猫の赤血球型 ~ 交差適合試験(cross matching)

犬の血液型 ~ 猫の赤血球型 ~ 交差適合試験(cross matching) 出血・止血および輸血

 
 
犬の血液型はvon Dungern & Hirschfeld(1914)により最初に分類されました。以来、今日までの70年間に数多くの報告がみられますが、それらの中でとくに注目されるのはYoungとSwisherらによる一連の報告です。
 
 
その特徴は、単に赤血球型の分類を目的とするのみでなく、輸血療法を十分念頭に置いた研究内容であって、その成果が獣医学領域にも応用されていった点です。
 
 
すなわち犬の血球を家兎で免疫して得た抗体を用いてD₁、D₂およびD₁D₂の3型を分類したもの、また同種免疫により5抗体(抗A、B、C、D、E)の存在を証明し、またこれに対して赤血球内に5抗原(A、B、C、D、E)が認められ、そのうちの1型は強度の溶血をおこすといわれている。
 
 
他には鶏の免疫血清を用いて犬の血液型をⅠ型、Ⅱ型の2種に分類し、その出現頻度はⅠ型20%、Ⅱ型80%との報告もある。また実際面では、緊急の症例に対して輸血を行う際には、給血犬の血液について交差試験による同種血球凝集反応の検査を行うことが必要とされてきました。
 
 
今日、犬の赤血球型は「犬の免疫遺伝学」と題する国際ワークショップにおいてDEA(dog erythrocyte antigen)システムとして整理統一されています。
 
 
すなわち、赤血球型判定用抗体の比較同定試験により、DEA 1・1、1・2、3、5、6などの標準化された赤血球型の検出が可能となっている。
 
 

猫の赤血球型

 
 
猫の赤血球型の分類はIngebrigsten(1912)以来自然同種抗体を中心にして試みられている。現在、臨床的に重要とされているのは、EyquemらやAuerらの示したABシステムです。
 
 
これは自然同種抗体である抗-A、抗-Bを用いて検出する赤血球型システムです。1982年以降、自然同種抗体について検討した結果抗-Ca抗体、抗-Cb抗体の2種類に大別され、これらの抗体はIgM分画に活性を有することが判明しました。
 
 
これらの抗体を用いて赤血球型の出現頻度を調査したところ、日本産集団においてはCa型に極端に偏在する傾向が認められ、両抗原を欠損する個体はみられなかった。
 
 
他の研究者の報告した赤血球型システムの出現頻度と比較すると、これらのCa型はA型と、Cb型はB型と同一の系に属するものではないかと推定されます。
 
 
また抗-Ca抗体、抗-Cb抗体の猫正常血清中の出現頻度は223例中、それぞれ5.8%、31.4%であり、抗-Ca抗体の頻度は抗-A抗体のそれに比較してきわめて低かった。
 
 
このように日本では、Ca型の出現頻度がきわめて高いこと、いっぽう、抗-Ca抗体の頻度は低い点などから、実際に不適合輸血が発生する例は少ないものと考えられます。
 
 
しかし、このような抗体は自然抗体として猫の血清中に存在するため、不適合があった場合には犬とは異なり、初回の輸血時であっても副作用が発現する可能性が大きい。
 
 
なお、血液型は輸血の場合のほか臓器移植、親子鑑定、個体識別、実験動物の系統樹立などの分野でも不可欠の要因です。
 
 

交差適合試験(cross matching)

 
 
交差適合試験は、血液の不適合による輸血の副作用を防ぐ目的で行われます。本試験は血液型の適合性を検査したうえで、なお輸血の安全性を確認するために必要であって、血液型検査の代用と考えるべきではない。
 
 
交差適合試験の術式は次のようになる。即ち、供血側と受血側から赤血球と血清を採取する。赤血球浮遊液は4%自己血清浮遊液および4%生理的食塩液浮遊液の両者を作製する。
 
 
供血側の赤血球浮遊液と受血側の血清の組み合わせを主試験、供血側の血清と受血側の赤血球浮遊液の組み合わせを副試験といい、各2滴(0.1ml)ずつを小試験管(10x75mm)の中で反応させる。
 
 
赤血球が4%自己血清浮遊液の場合は37℃に15分間、4%生理的食塩液浮遊液の場合は4℃に30分間静置する。各々、1,500rpm、15秒の遠心の後、前者では溶血・凝集の有無を、後者では凝集の有無を観察する。
 
 
前者に於いて反応が陰性~弱陽性の場合は、生理的食塩液を用いてさらに3回洗浄し、抗グロブリン血清を2滴(0.1ml)ずつ加え、室温に15分静置する。
 
 
1,500rpm、15秒の遠心ののち凝集の有無を確認する。
 
 
通常の交差適合試験における猫、犬の検査用赤血球は4%生理的食塩液浮遊液で十分です。しかし、再輸血時には、両者の赤血球浮遊液を作製して検査を進めなければならない。
 
 
臨床的には、検査用赤血球を作製する際の赤血球の洗浄作用を省略しても差し支えない。すなわち、血清を分離したのちの赤血球泥から1滴をとり、4%の割合に浮遊させ、検査に要する時間を節約することができる。

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました