胃食滞および胃拡張(gastric impaction and dilatation)
過食した時、または胃内容の十二指腸への後送が妨げられると、胃内容は増加停滞して食滞となる。胃内容が急激に増加すれば、胃壁は拡大して急性胃拡張を発症し、また胃壁が緊張力を失って慢性に胃が拡張した状態を、慢性胃拡張という。
したがって、食滞と拡張は往々同時に発症し、またしばしばこれらの言葉は混同して用いられます。
原因:過食は飼養失宣によっておこりやすい。特に盗食、長い空腹後の採食または貧食後に多発する。
腸の便秘や閉塞、不良な飼料の給与、頻回の嘔吐、異嗜、胃内異物、胃の新生物、迷走神経障害などの場合には、胃弱、アトニー、胃炎がおこり、胃運動は減退し消化不良に陥り、胃内容の十二指腸への後送が障害される。
腹部手術、外傷、分娩、全身麻酔、あるいは内科的疾患は素因となる。
胃捻転、大量の乾燥飼料採食後の飲水、激動は、拡張を急性化する。
症状:馬では過食疝をおこす。馬は嘔吐しにくいため、時には胃破裂をおこして急死する。豚にはしばしば食滞が発生する。
犬は嘔吐しやすいため、単純な過食などでは胃内容を吐出して、自然に回復する。しかし、上記のような種々の原因がかさなると、食滞あるいは胃拡張が発症する。
特に胃捻転を伴えば急性経過をとる。
治療法:馬では経過が急速で、手術不可能な場合が多い。豚では、まず内科的治療を行う。犬ではすみやかに開腹して胃切開を行い、また捻転の場合には整復する。
胃内の異物(foreign bodies in the stomach)
犬の胃内には、しばしば異物が発見される。猫にもみられる。
原因:犬はしばしば種々の異物を嚥下する。多くの場合に小腸へ移行するが、過大なものあるいは多量の場合には、異物が胃内に停滞する。
1歳以下の幼若な犬がゴムマリ、ゴム人形、あるいはガラス玉などにたわむれて、嚥下することがあり、また骨片、石、プラスチック製品、その他靴、グローブなどの革製品をのみこむこともあります。
これらは多くは偶然にのみこむのですが、しかしゴムマリなどを水中に投げて捕捉させる訓練の場合に、犬があやまってのみこむこともあります。
症状:犬の胃内に存在する異物は、それが長時間停滞するのでなければ、通常あまり重篤な症状は現さない。しかし、それが尖鋭な異物の場合には重い症状が現れる。
胃の閉塞は、通常不完全または間歇性であって、異物が長時間胃内に停滞しても、症状は軽度なことがあります。しかし、腸内異物による閉塞と合併すれば、症状は重くなる。
第一に観察される症状は嘔吐です。
異物が胃壁を刺激して嚥下後1時間以内に嘔吐がおこる。しかし、飲んだ液体は比較的良く胃内にとどまる。表面が平滑な軽い異物の場合には、胃を刺激することは少ないが、その他の場合には、1~2日間上記のような食後の嘔吐をくり返した後、食欲がなくなる。
しかし、胃の刺激が重度の時には、早期に食欲を失い、また異物が尖鋭な時あるいは長時間停滞している時には、胃の疼痛が認められる。
嘔吐が続くときは、脱水症状が現れ、非常に慢性に経過した場合には削痩する。
診断:胃内の異物はなるべく早く診断を確定する必要があります。それは動物の全身状態が悪化しないうちに、異物を除去する必要があるからです。
可能ならば、全身麻酔をほどこした後に異物の触診を行う。この場合には、犬の前軀を高くして、胃を下垂させると触診が容易になる。
骨、硬いゴム、金属などの異物はX線検査によって、明瞭に確認することができる。この場合は横臥させ、あるいは背位に保定する。
またX線写真に写らない物体は造影剤を使うことによって、その存在を知ることができる。種々の方法を講じても、診断が確定しない時には、試験的開腹手術を行う。
治療法:異物の除去は、全身麻酔のもとに胃を切開して行うことができる。この場合は、犬があまり衰弱しないうちに行う。
表面の平滑な小さい異物は下剤投与、または浣腸によって除去できることもある。

