第二胃炎
異物が単に第二胃内に存在して、第二胃粘膜を刺激しているか、粘膜(ひだ)に浅く穿刺している場合には、消化不良など、通常の胃炎の症状が現れ、またそれが時折り繰り返されることがあります。
急性限局性腹膜炎
食欲急減、乳量著減、鬐甲部の関連痛反射withers-referred pain reflex、歩行を嫌う、不安な表情、眼の活力の減退、背をかがめる、肘を外転させる、背と腹の筋肉を緊張させ腹部が巻き上がる、呻吟する。
体温は正常か、あるいはわずかに高く、脈拍と呼吸は正常かあるいは増加する。心音には異常がない。吸気時に肺の呼吸音がわずかに粗である。
第一胃の収縮が弱く回数が減る。糞は減量し普通より少し水分が少ない。疼痛のため排糞の際にうなる。胸骨剣状軟骨のすぐ後方を圧迫する時、あるいは直腸から手を入れて、胃を前方に押すと痛みが強く現れる。
この段階における症状の持続は短い。
その代表的な徴候は発病の第1日目にもっとも著明です。その後多くはすみやかに消退して、第3日には認め難くなり、第4日にはまったく消失する。
しかし、その後、間歇的に再現することが多い。ただし異物の種類、穿刺部位、治療の如何によって経過に差があり、時にはそのまま症状が消えてしまうこともあります。
白血球総数は第1日に8,000~12,000/mm³に増加して12~24時間続き、第3日には、ほぼ正常に復し、この間好中球が50~70%にふえ、また桿状核好中球が増加する(核の佐方推移)。
この桿状核増加は診断に役立つ。
急性び慢性腹膜炎
急性限局性腹膜炎において観察された症状がもっと顕著に現れる。
両者の移行、境界は不明瞭なこともありますが、普通限局性の症状が発現してから1~2日で重度の中毒血症の症状が現れる。
消化管の運動はまったく停止し、元気沈衰、体温上昇、脈拍数は100~200、腹壁はどこをさわっても疼痛があり、動くことを極度に嫌う。
その後急速に虚脱状態に陥り、末梢循環不全となり、疼痛反応が消失する。最後に乳熱に似た横臥姿勢をとり、昏睡comaに陥る。
び慢性腹膜炎の場合には、たとえ感染が克服されても、後に著しい癒着がのこり、このために著しく削痩し、内臓の正常のはたらきが機械的に妨げられて、大多数は2~7日の経過で死亡する。
白血球数は著しく増加することもあり、逆に著しく減少することもあります。容易に正常値にもどらず、また未成熟型の好中球が増加する。
慢性腹膜炎
この場合、一番普通に見られる徴候は、消化不良と間違えやすい発作の反復か、あるいは数週間~数か月の経過で進行する原因不明の削痩です。
したがって、いったん消化不良あるいは創傷性第二胃炎と診断され、その後慢性に進行性削痩がおこった時には、慢性腹膜炎を疑う必要があります。
その間、食欲と泌乳量は完全に正常にまで回復することはなく、疼痛は明らかではないが、ゆっくりとかつ注意深く歩き、反芻、排糞、排尿時にうなる。
反芻は抑制され、第一胃の運動にはあまり変化はないが、慢性的に軽度の鼓脹が存在する。
白血球数は長期間やや高いレベルにとどまり、また単球が5~9%に増加するのが特徴的です。数か月の経過ののち助かることがありますが、また死亡するものもあります。
診断
異物の有無とその位置の検査および腹膜炎の診断が主なものです。
胃の異常徴候がつねに伴うので、他の胃腸疾患との鑑別が必要であり、また腹膜炎とその他の炎症性疾患との鑑別および創傷性心膜炎・脾炎・肝炎などとの類症鑑別も大切です。
異物検査
主に金属探知器が用いられている。検査にあたっては、剣状軟骨下面を中心に、その前後および左右の胸側をしらべる。
探知器の発信音が第二胃の収縮周期(30~60秒)に伴って断続すれば、異物は単に第二胃底に沈下しているか、あるいはたとえ胃壁に刺さっていても、まだ第二胃腹膜炎による癒着はおきていないと考えられます。
もし発信音が継続して聴取され、その位置が前方~上方であれば、異物の横隔膜穿刺、第二胃と横隔膜の癒着を疑う。
大型X線装置によって透視すれば、異物の穿通位置が確認できる。しかし、それにはかなり強力(300kV)な出力の装置が必要です。
腹膜炎の診断:白血球数の増加、好中球の増加および核の左方推移が診断の目安となる。ただし、腹膜炎の種類・程度によって差があり、また他の原因による腹膜炎との鑑別が必要です。