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第一胃および第二胃の疾患 ~ 急性限局性腹膜炎

第一胃および第二胃の疾患 ~ 急性限局性腹膜炎 胃の疾患

 
 

急性限局性腹膜炎

 
 
他の種々の疾患との鑑別を必要とすることが多い。消化不良、急性食滞、ケトージスとの区別は、腹膜炎の場合には発熱、腹部の限局性の疼痛、乳量および食欲の急減が見られる。
 
 
急性の第一胃食滞の時はもっと症状が重くなり、脈拍数は著しくふえ、牛は歩行が蹌踉として横臥し、時に盲目となり、また体温が低下する。
 
 
これは急性び慢性腹膜炎に似ているが、血液は著明に濃縮するのみです。
 
 
泌乳期の初期に創傷性第二胃腹膜炎がおこると、二次的なケトン血症を発する。
 
 
その際、もしも腹膜炎が3~4日しか続かない時は鑑別が困難となる。その時には、白血球と血糖値を調べる。
 
 
また治療に対する反応と病歴とが診断の助けとなる。乳量の減少はケトン血症では、やや経過が緩慢で数日を要し、またその程度は軽い。
 
 
高熱の持続、脈拍数の増加、中毒血症、白血球数の増加、好中球の増加などは、創傷性心膜炎と似ている場合が多いが、それらの程度は、概して心膜炎の方が著しい。
 
 
また心膜炎では心臓の聴診で拍水音をきくことがあり、頸静脈の怒張および拍動など心臓機能の衰弱の徴候が現れる。
 
 
創傷性肝炎および脾炎では、胸壁の圧診によって、それぞれの場所に疼痛反応が見られる。第四胃の潰瘍の穿孔によって生ずる腹膜炎の場合には、急性限局性腹膜炎との鑑別が困難で、第一胃切開によらなければ確実な診断は下せない。
 
 
子宮炎の腹膜炎への蔓延は、子宮炎の徴候を良く調べれば区別することができる。なお、診断のため試験的に第一胃切開術を必要とすることが少なくない。
 
 
治療法:保存的治療法と、第一胃切開術などによる異物摘出法とがあります。
 
 
保存的治療法:なるべく早期に開始する。すなわち前軀を25~30cm高くし、この状態に10~21日間繋養する。この間運動を禁止し安静に保つ。
 
 
特に粗飼料を半減し、また緩下剤を投与する。サルファ剤や抗生物質を与える。24時間絶食後、磁石を飲ませる。3日間経過しても、症状が軽減ないし消失しない時は、もう一度検査をやりなおし、第一胃切開術を行うか、屠場に送るかを決める。
 
 
この保存的治療法は妊娠6ヶ月以降の場合には効果が不十分であるか、あるいは再発することが多い。
 
 

第一胃切開術

 
 
牛の状況がゆるせば実施した方が良い。この疾患の根本原因は異物の存在にあるので、十分な診断にもとづいて、腹膜炎の悪化、異物の心膜への移行前に実施する。また、しばしば診断的にも行われる。
 
 
特に慢性限局性腹膜炎および妊娠末期3ヶ月の時期には、手術によるべきです。しかし異物が第二胃に落下して回復する率がかなり高いから、かならずしも手術がつねにまさるとは限りません。
 
 
急性び慢性腹膜炎の症例は死亡する危険が大きいが、腹膜炎があまり進行しない早期に診断して広範囲抗生物質による強力な治療を行うと症状はかなり緩和されるので、時期をみて手術により異物を除去する。
 
 
牛の体長が長く術者の手が第二胃までとどき難いとき、あるいはすでに異物が第二胃壁外に移動したときには、横臥位で左下腹部を切開することがある。
 
 
この場合には第二胃と腹膜との癒着が著しいことが多いので、手術困難をきたしやすい。
 
 
磁石による異物の除去:第二胃内の金属性異物を磁石によって取り除く方法があるが、第二胃壁に穿刺したものは除去できない場合が多い。この方法はむしろ予防に用いた方がよい。
 
 
予防法:第1には飼養管理に注意し、金属性異物の飼料への混入、牛舎内への散乱を防ぐ。第2には金属探知機による検査を定期的に行う。
 
 
第3には探知器反応陽性牛には、磁石の経口投与によって、第二胃内異物を除去する。棒状磁石を常時、第二胃内に入れておく方法もあります。
 
 
第4には創傷性疾患を疑うものには、血液検査、X線検査を行う。

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