第三胃は、ほぼ右側第Ⅸ肋骨間付近の深部にあって、臨床的にはきわめて診断しにくい。しかも第一、二胃と第四胃の間に介在して、狭隘な第三胃管でそれらとつながっており、第一胃および第四胃の疾患ときわめて関連が深いと考えられるが、その病態生理はまだ十分には分かっていません。
大別して四つの疾患があると考えられます。
b.:第三胃アトニーatony of the omasum
c.:第三胃炎omasitis
d.:第三胃機能障害dysfunction of the omasum
これらはまた互いに関連しあい、あるいは合併すると考えられています。
第三胃食滞
第三胃が拡張し、内容がつまり、停滞している状態で、第三胃梗塞または第三胃便秘ともいわれます。
(ⅰ)原因:乾燥粗大な不良飼料または短く切った乾草を大量に与えた結果、発生するといわれている。また第三胃機能障害やアトニーが素因とも考えられます。
しかし、この発生については、多分に疑問点がある。剖検時に第三胃が拡張し著しく硬くなっている時は第三胃食滞と診断されるが、死因は他の疾病と思われる場合もしばしば観察されるからです。
飼料が固く線維が多く、あるいは旱魃地帯の餌を食べた羊にもおこるといわれている。また種々の疾患に継発することもある。
(ⅱ)症状:慢性の消化不良の反復、右側下肋部の深部の圧痛、呻吟、元気・食欲・飲思の消失、重度では脈拍数の増加などが挙げられるが、しかし診断は困難な場合が多い。
(ⅲ)治療法:イ)水と流動パラフィンを第一胃内に投与する。ロ)第一胃切開術を行って、手を第二・三胃口から挿入し、第三胃の内容をできるだけ除去する。
また微温湯をゴム管で注入し、さらに流動パラフィンを第三胃葉間に注入した後、第一胃内面から拳または掌で強力に第三胃のマッサージを行う。
この方法を内容が軟化するまでくり返す。
ハ)第四胃を切開し、その部より手を第三胃内に挿入して、上記の方法を行う。
二)その他、胸壁から第三胃に細かい注射針を穿刺して、薬液を直接注入する方法や第三胃切開も報告されている。なお、診断が確定しない時は、試験的開腹手術(第一胃切開)を行う。
第三胃アトニー
牛では急性の第三胃アトニーが報告されています。すなわち、産後の血色素尿症および産褥麻痺の際に、一次性あるいは二次性に発現する。
第三胃が著しく膨脹し、その襞(第三胃葉)あるいは第三胃壁に壊死点が存在し、これと関連して腹膜炎がみられる。この場合には、第一胃内壁にも壊死がある。
臨床的には食欲の廃絶、亜急性の腹痛および運動を嫌い横臥するなどの所見がある。
第三胃炎
第三胃食滞やアトニーの時に、内容の停滞が長期にわたると、多少の差はあれ、粘膜が炎症をおこすことがあると考えられる。
第三胃機能障害
普通第四胃内へは粗大な飼料は移行しない。
しかし、第四胃内に粗大な不消化の飼料、小石などを発見することがあります。この原因として、第三胃の機能障害が考えられるが、その発生機序の詳細はなお不明です。

