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家畜に対する中毒作用の差異 ~ 家畜の種類・年齢および大きさ・性・改良淘汰・個体

家畜に対する中毒作用の差異 家畜中毒

 
 

家畜の種類

 
 
毒に対する感受性のうち第一に列するものは家畜の種類で、あるものには何ら影響を及ぼさないのに拘わらず他の動物に向い致命的な害作用を与える場合があります。
 
 
例えばベラドンナは人に対し極めて有毒ですが犬猫および鳥類には有毒、馬および豚には僅微、羊、山羊には極めて微弱であり、兎にたいしては無害のようです。
 
 
またモルヒネは人に対し毒力強く家畜には比較的弱く、人に比して(体重1kgに付)犬と馬は10倍、鳥類は500倍を要し、アトロピンにおいて人は0.005gで重い中毒をおこしますが、犬、兎は0.5gすなわち100倍に耐え、その他シクラメンの根塊は豚が好食し、ヒナゲシに対して兎は無害のごとき、家禽はストリキニーネに対し比較的抵抗力強く狷は芫菁および有毒植物に全く感じず、猫はアポモルヒンに対し鈍く犬の10倍量で嘔吐を現わし、また豚には全く感受性がありません。
 
 
これに反し動物によりある種の毒物に対して特に感受性の強い場合があります。例えば馬、牛はクロロホルム、モルヒネ、エゼリンおよびピロカルピンに、犬は甘汞、綿馬エキス、石榴根皮に、緬羊、犬は吐酒石に、猫は石炭酸に敏感であり、また反芻獣は重金属に対し抵抗力が弱く、例えば甘汞の牛に対する致死量は豚の致死量より少なく、灰白水銀軟膏30.0gを塗抹すれば死にますが、同量を犬に塗抹しても全く無害です。
 
 
また馬に対する鉛糖の致死量は500.0~700.0gですが、牛では50.0gです。
 
 
以上、差異を生ずる理由は未だ明らかではありませんが、消化器と神経系の二つが挙げられます。すなわち消化器では歯の状態、胃の数および構造、腸の広狭並に胃との関係、附属腺の発育、分泌機能および量、消化吸収ならびに排泄の機能、あるいは食法を主宰する総ての条件を考慮し、神経系では中枢、脊髄、末梢および内臓神経などの発育および構造の差異であり、その発達は感受性に比例します。
 
 
その他嘔吐の難易は中毒と密接な関係があり一般に馬属は抵抗力がなく、犬、猫、豚の嘔吐性の著しいものは中毒から逃れ易い。
 
 
特殊なものとしては雲雀および鶉はドクセリで飼養しても害はないが、その肉には毒性成分を含有し肉食獣の中毒をおこします。
 
 
また、タカトウダイは山羊に対し特別の変状をおこしませんが、分泌する乳汁は人の中毒を招くことがあります。
 
 
一般の毒に対する動物の感受性は次のような順位と看做されています。
 
 
驢、騾、馬、猫、犬、豚、家禽、モルモット、犬、羊および山羊、家兎
 
 
驢を第一とした理由は発達した中枢と最高の消化力を有するためで殊に胃腺はその数および発育が良好で他の草食獣に利用し得ぬ粗剛植物をも容易に消化吸収する能力があります。
 
 
蓋しこの消化力は有毒植物に対しても速かに分離吸収し毒成分の作用を容易ならしむものです。但しこの意味からいえば牛、羊類は反芻咀嚼によって劣等の飼料をもよく消化する故感受性も強いわけですが、事実はこれに反し複胃を有する動物は一般の毒に対しても抵抗力に富む。これは胃内の諸種酵素によって毒物の分解が行われ稀薄あるいは無毒物に変成されるためです。
 
 
次に中毒と関係のあることは毒成分の排泄機能で消化器系全長の短いものは体内における滞留時間が少ないため毒の大部は糞と共に排泄されまた泌尿器の発達した動物は中毒し難い。
 
 
これについてCornevin氏は興味ある実験を行いました。すなわち、48時間絶食する家兎にキンレンクワ種実30gを短砕して強制的に摂食させ20時間後屠殺し尿ならびに腸内容物を別々に採取しました。
 
 
膀胱内には甚だ溷濁した尿を充満し試験紙を赤変する。この尿を濾過して第1の試験材料とする。次で胃、小腸および盲腸の内容物を採取し煮沸後圧搾濾過して第2の材料とする。
 
 
次に前日来絶食させた2頭の猫に第1、第2試験材料をそれぞれ40g宛皮下注射しました。第1の場合すなわち尿では注射後10時間で嘔心あり激しい反復嘔吐、流涎を来し次で瞳孔散大、蹌踉、転倒、昏睡などキンレンクワ毒の定型的症状を現しましたが、第2材料ではなんら徴候を見出し得ませんでした。
 
 
これによりキンレンクワ毒は尿より排泄すること、膀胱に蓄積した毒は粘膜の健全な限り毒を吸収しませんが、吸収するも極めて僅かで主体を侵す程度に至らないこと、胃腸内の毒物は徐々に折出され著しい量に非ざる限りその排泄も急速に行われるもので、山羊その他消化器系から中毒し得ざる動物に向っても同様のことが推測されます。
 
 

年齢および大きさ

 
 
幼若動物が成熟のものに比し一般に感受性に富むことは周知の通りですがこれは常に体重の軽重のみによるものではありません。
 
 
毒物の中毒量が必ずしも体重と比例して逓減せず壮獣、仔獣に対しその体重比に相応した毒物を適用しても前者は健全なるに拘わらず後者は斃死することが多く、また毒草中毒においても一般に抵抗力に乏しいことは多くの記載が示すところです。
 
 
しかしながらこの原因については明らかでなく僅かに神経組織が他の器官に比し著大なると新陳代謝の旺盛を挙げあるいは薬物の用量として壮馬1として1歳は1/2、0.5歳は1/4、3ヶ月1/8、1ヶ月1/16となる数字を掲げ、要するに体重を標準とすべきことが示されているに過ぎません。
 
 
ただし、例外として甘汞は幼犬の方が壮犬よりも大量に耐える。
 
 
また一般的に見れば動物の大きさと中毒量とは関係があって大動物を1とすれば豚は1/5~1/10、犬、羊、山羊は1/10~1/20、猫、家兎は1/20~1/50とされます。
 
 

 
 
動物では性による感受性の差異は少ないですが子宮、乳汁分泌に対する毒は牝に特有のもので妊娠子宮は麦角などに対し特に感じやすく子宮収縮、胎児の流・早産を見、尚他の毒物でも下痢、疝痛、嘔吐作用の著しいものは間接に同様の結果を招く。
 
 
乳汁に対して不良感作を与うるものは有毒物質の移行並に分泌減少の至涸止です。
 
 

改良淘汰

 
 
家畜は改良淘汰によって抵抗力を減じ疾病に罹り易いですが毒に対しても全く同様です。
 
 
これは体質の繊弱となる点もありますが、常に厩舎や、牧場などで人為的飼料を以て飼育されるためで、牛馬のみならず羊、豚に在っても同様のことがいえます。
 
 

個体

 
 
個体差による適例は皮膚毛色による感受性の差異です。すなわち、一般に白色動物は有色被毛獣にくらべて飼育が困難とされますが、ソバ疹のように中毒に対しても同様で黒色被毛獣は無害であるに拘らず白色獣に対しては特殊な疾病を招きます。

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