飛節の脱臼(dislocation of the hock joint)
飛節(足根関節articulatio tarsi)は、足根腿関節(足根骨近位列と下腿骨となす関節)、足根間関節(足根骨間の関節)および足根中足関節(足根骨遠位列と中足骨となす関節)よりなります。
関節包は足関節のすべてを包みます。足根腿関節は蝶番関節で運動の主体をなし、その他の関節は、馬では半関節で動かないが、他の家畜では、ある程度の運動性があります。
発生
足根腿関節(距腿関節:距骨と下腿骨のなす関節)の脱臼は、馬、牛では稀ですが、犬、猫では比較的多い。
その他の関節の脱臼は稀れです。
顎関節の脱臼(dislocation of the temporo-mandibular articulation)
顎関節articulatio temporomandibularisは下顎骨の関節突起(下顎頭)と側頭骨の下顎窩(頬骨突起起始部下面にあり)とがなす関節であって、下顎骨の運動に関与し、鞍関節です。顎関節脱臼は解剖的構造から、犬、猫にはみられますが、馬、特に牛には少ないとされる。
過度の開口、打撲、衝突などに起因します。
たとえば牧羊犬、猟犬などが鹿、野牛などの大きな獲物に咬みついて、ぶら下がったような場合、あるいは自動車事故などによって発します。
前方脱臼が多い。
口を広く開き、下顎を下垂し、唾液を漏らし、食物の摂取は不能です。筋突起proc. coronoideus(烏口突起)の眼窩内圧迫で眼球突出をきたすことがあります。
咬筋麻痺(三叉神経麻痺)と類症鑑別の必要があります。前方脱臼が多い。なお犬では骨折脱臼をみることがあります。
治療法
全身麻酔下に整復を行う。
はじめ下顎骨を下方に引っぱり、次いでそのまま後方に向かって押し、正常位にもどす。
脊椎の脱臼(dislocation of the vertebrae)
胸椎、腰椎および尾椎にみられる。
後頭骨と環椎(第Ⅰ頸椎)とは顆状関節をなします。また環椎と軸椎(第Ⅱ頸椎)とは、車軸関節を構成します。
第Ⅲ頸椎以後の脊椎は、それぞれ前後の椎骨と関節突起によって、関節を構成するとともに、椎体は椎間円板によって軟骨結合します。
軸椎の歯突起densの先天性欠如、歯突起の骨折あるいは環椎と軸椎の固定する靭帯(翼状靭帯ligg. alaria、歯尖靱帯lig. apicis dentisおよび環椎横靭帯lig. transversum atlantis)のうち翼状靭帯と環椎横靭帯の断裂がある場合には、環軸関節の亜脱臼がおこり、頸髄が圧迫されて、横断性脊髄障害の徴候が現れます。
犬の症例は少なくない。
環椎と軸椎の棘突起を強い材料で固定して治癒させることができます。カラーによる固定も奏功します。また馬でも起こることがあります。
馬および犬、猫に発生します。
原因
衝突、転倒時にみられ、特に小動物では輪轢・強打などによって、胸椎の後半に発することが多い。
症状
脊髄や神経の損傷程度により異なりますが、重症では起立不能に陥ります。小動物ではX線検査によって確診が得られます。
治療法
安静を旨としますが、重症は予後不良です。
犬・猫にみられ、強烈な外力の作用により、主として第XIII胸椎と第Ⅰ腰椎の間の関節に脱臼がおこり、その多くは椎体の骨折を伴う(骨折脱臼)。
症状は脊髄の損傷の程度によって異なりますが、後軀麻痺、糞尿の停滞を示し、予後不良です。
犬、牛、馬などに発生し、骨折を伴うこともあります。
尾椎は脱臼し、あるいは離開します。骨折を伴わない軽症のものは整復しえますが、整復し得ないものは断尾します。
牛、馬、犬、猫に稀れに発生します。
解剖と生理
仙腸関節articulatio sacroiliacaは半関節であって、強靭な靭帯により取りまかれ、左右の腸骨間に仙骨を支え、脊柱と後軀との結合にあたる。
原因
仙腸関節部に無理な力が加わって発生します。
粗暴な助産、難産、交配などが原因となります。とくに尾をむりにもちあげた時に発生しやすい。
輸送時の過労、馬のいわゆる骨軟症などによって生ずる骨質異常は素因となります。
症状
主に一側性です。
完全離開では、後軀の運動が障害され、対麻痺と同様の症状を呈し、腰椎および仙骨が沈下し、腸骨内角が突出してみえます。患部に圧痛がある。
軽症では、後肢の強拘歩様などの腰萎症状を示しますが、離開の度がすすむにつれて、跛行は明瞭となり、斜行を呈し、ついに起立不能に陥ります。
直腸検査を行えば、仙骨下面の岬角promontoriumの下方転位を触知し、骨盤腔が狭くなっていることを知る。起立不能に陥ったものは予後不良ですが、不完全離開の場合は、かならずしも不良とはかぎらない。
治療法
安静が第一です。
少なくとも数週間は休養させて経過をみます。大動物では吊起帯を装着する場合もあります。局所には皮膚刺激剤の塗擦、超音波などの理学療法を行います。
骨栄養障害がある時は、それに対する治療法を行えば効を奏することがあります。
起立不能となったものには、褥瘡・敗血症の予防につとめます。
