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各部の脱臼(Particulars of Dislocation) ~ 肩関節の脱臼・肘関節の脱臼

肩関節の脱臼 脱臼

 
 
外傷性脱臼が多い。しかし素因的には病的脱臼もあり、また習慣性脱臼となるものもある。
 
 

肩関節の脱臼(dislocation of the shoulder joint)

 
 
本症は馬、特に乗馬、競走馬に主にみられ、時には牛、犬にも発生します。
 
 
しかし、一般的に少ない。
 
 

解剖と生理

肩関節articulatio humeriは肩甲骨関節窩と上腕骨頭との関節であって、球関節ではありますが、前後の運動が主です。
 
関節包はよく発達し、その表面に関節上腕靭帯ligg.glenohumeraliaがはしっています。

 
 

原因

関節の過度の屈曲によるもので、しばしば跳躍の際の転倒、あるいは衝突その他激しい外力が肩甲骨に加わった時に発します。
 
概して不(完)全脱臼が多く、完全脱臼はまれです。

 
 

症状

休息中は患肢を前方に提出し、負重を免ずる。突然重度の跛行を呈し、無理に歩行させると患肢にも負重しますが、運歩が短縮し、肢をひきずる。外転歩様がみられます。
 
関節の他動運動では、屈曲や伸展が困難で激痛を伴いますが、内転、外転は比較的に容易です。肩部は腫脹し、圧痛著明、触診では肩甲骨関節端の下方および前方で異常な突起にふれます。
 
本症はしばしば肩甲骨関節窩および上腕骨の骨折を伴い、上記の諸症状がいっそう著明で負重困難になります。長時日(7日)放置すると、患側の肩部の筋肉群の著しい萎縮が現れます。

 
 

治療法

大動物では整復が困難なので、予後は不良です。
 
小動物では、整復は比較的容易ですから、全身麻酔のもとに整復を試み、その後は局所が動かないように胸廓とともに包帯で固定します。

 
 

肘関節の脱臼(dislocation of the elbow joint)

 
 
本症は大動物においてまれですが、犬、特に幼犬にしばしば発生をみます。
 
 

解剖と生理

肘関節articulatio cubitiは上腕骨滑車、橈骨頭窩および前腕骨(尺骨)滑車切痕とからなり、蝶番関節(一軸性関節)です。
 
関節包の内外に内側側副靭帯、外側側副靭帯があります。犬では、さらに肘頭靭帯があります。

 
 

原因

輪禍または墜落による。

 
 

症状

肘関節の伸長が不可能で、屈曲させ、患肢は収縮肢勢をとります。
 
歩かせると運歩は外転します。圧痛は著明です。犬の完全脱臼時には尺骨、橈骨の外方転位をみることがあります。
 
不(完)全脱臼においても、しばしば嚢状靭帯および側副靭帯の断裂を併発します。

 
 

治療法

大動物では整復、固定が困難なので、予後は一般によくない。
 
小動物では、全身麻酔のもとに関節を屈曲位にして、徒手整復を行います。多くの場合、整復後なんらの処置をほどこさなくてもよいが、必要に応じて金属副子あるいはギプス包帯で固定します。
 
幼犬では、他に合併症がなければ、予後は良好です。
 
しかし、X線検査により、尺骨頭に罅裂のないことをたしかめる必要があります。

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