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肋骨の骨折(fractures of the ribs) ~ 大動物・小動物

肋骨の骨折 骨折

 
 

大動物

 
 
大動物の肋骨骨折は、転倒、衝突、角突、輸送事故などに基因しますが、発生は少ない。主として皮下骨折(横骨折、斜骨折、多発骨折)で、1~数本の肋骨が損傷をうけます。
 
 
若い動物では、挫滅創と合併することがあります。クル病、骨軟化症、フッ素沈着症がある時には、軽微な誘因によっても発生します。
 
 
徴候は胸壁の損傷個所と骨片の転位の程度によって異なります。頭位の肋骨は、肩甲骨、上腕骨および厚い筋層の蔭になっているので、ふつうは骨折がおこらないが、万一おこった場合には、腕神経叢の損傷が発生します。
 
 
その他の部位の肋骨でも、単純な皮下骨折の場合には、胸壁の腫脹と疼痛だけで、気付かないことがあります。
 
 
しかし、骨の断端によって胸膜、横隔膜または腹膜が傷つけられると、皮下気腫、気胸、血胸、胸膜炎、横隔膜破裂、腹膜炎などがおこり、さらに肺出血、肺炎を見ることがあります。
 
 
また複雑骨折の場合には、肋骨の骨髄炎が継発して、あとに肋骨瘻がのこる。
 
 
単純な皮下骨折では、安静の保持以外に特別の治療をほどこさなくても、予後は良好です。開放骨折および腐骨片が存在して治癒経過が不良な多発骨折では、辺縁切除、骨片・腐骨片の摘出、局所の化学療法および排液法が必要です。
 
 
胸腔または腹腔に穿孔しているものは、症状が重篤で、緊急に処置する必要があり、辺縁切除、骨片摘出、化学療法、創の縫合閉鎖と強力な支持療法を行います。
 
 
予後は注意が必要です。肋骨瘻に対しては、肋骨の切除が必要になります。
 
 

小動物

 
 
小動物の胸部外傷では、肋骨や胸骨に骨折がおこらなくても、横隔膜破裂、心臓タンポナーデ(cardiac tamponade)、大血管の断裂など、重度の損傷が発生していることがあります。
 
 
しかし、これら胸腔内の臓器組織の損傷は、外見では判定しにくいから、まず慎重に検査することが大切で、そのためX線検査、心電図検査などが不可欠です。
 
 
また血圧、血液ガスおよびpH、ならびに排尿量の測定が必要です。
 
 
犬の肋骨骨折は、交通事故、重い物体の落下、犬同士のけんか、牛・馬に蹴られる。誤射による銃弾創が主な原因です。
 
 
肋骨の損傷の程度には‥
 
 

皮下気腫、軽度の気胸か血胸または両者を伴う比較的軽度の骨折

肺の穿刺創、重度の気胸、大量の出血、および重度の心・肺機能不全を伴う重度の骨折

車に胸部を轢かれ、または跳ね飛ばされ、あるいは落下した物体の下敷になって、肋骨がひどい損傷をうけ、胸郭が変形する胸部圧挫症候群(chest crush syndrome)

同じく、強い外力の作用によって、隣接する数本の肋骨に多発骨折が生じて骨片が遊離し、呼吸のたびごとに骨片が浮動する胸部フレイル症候群(chest flail syndrome)がある。

 
 

皮下気腫

皮下気腫のうち、皮膚の損傷に基因するものは、特別の処置を必要としませんが、胸膜または肺の刺創、裂創に基因するもの、特に出血のあるものは危険を伴います。
 
気胸は、胸壁の穿通創または肺・気管支の損傷が原因です。
 
胸壁の穿通創は、大小を問わずすみやかに胸腔内の空気を吸引したのち、縫合閉鎖する必要があります。
 
肺の裂創または肋間動・静脈の断裂によって発生した血胸の場合は、鎮静薬と血液凝固促進薬を投与し、患畜を安静に保つ。
 
しかし激しい進行性の出血の症例以外では、胸腔内の血液を数日間は吸引しないでおきます。外傷性に、受傷後数日~2週間の間に、肺炎が発生することがあります。

 
 

骨片の転位がないかまたは軽度

骨片の転位がないかまたは軽度の場合には、X線検査を行った後、安静を保たせると、若犬では2~3週間、成犬では3~8週間で完全に機能を回復します。
 
単純な皮下骨折でも、同時に数本の肋骨が骨折した場合には、胴体をギプス包帯で包むことがあります。

 
 

骨片の転位が顕著な時

骨片の転位が顕著な時には、手術によって、骨片を整復、固定します。
 
手術中は陽圧換気が必要です。折れた肋骨に平行に切皮し、骨片を整復して、髄内釘またはワイヤーで固定します。
 
軟部組織を重層縫合で閉鎖します。術後は、10日間狭いケージに閉じ込めます。

 
 

胸部圧挫症候群

胸部圧挫症候群は、胸部を車に轢かれて発生することが多い。
 
肺と心筋が挫傷をうけ、血胸、大量の出血、心・肺の機能障害がおこります。ただちに開胸する必要がある。
 
吸入麻酔、補助呼吸、および輸血を実施します。
 
術後は胸腔内にドレーンを留置し、またレスピレーターによって呼吸を維持します。予後は注意を要します。

 
 

胸部フレイル症候群

胸部フレイル症候群では、まず肋骨の骨折の範囲と程度を詳しく診断します。
 
長期にわたって換気を維持するため、レスピレーターの使用が必要になります。手術を行うか否かは症状によりますが、手術の際には、吸入麻酔と補助呼吸をほどこす。
 
銃弾創の場合には、銃弾の大きさとそのスピード、および創をうけた組織について詳しく検査します。
 
心臓タンポナーデの状態に陥った時は、ただちに開胸し、心膜腔を穿刺して、内圧をのぞきます。

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