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脊椎の骨折(fractures of the spine) ~ 大動物

脊椎の骨折 骨折

 
 

大動物

 
 
骨折は脊柱のどこにもおこります。馬と牛では外傷性に、豚では骨軟化症またはブルセラ症の結果として発生します。
 
 
馬では頸椎の骨折が多く、牛では脊柱の後半に多い。
 
 
脊髄の損傷が問題であって、その軽重の程度が予後を左右します。手術による治療は、尾椎の骨折および胸椎と腰椎の棘突起の骨折以外は、大動物では事実上ほとんど不可能です。
 
 
自然治癒がおこることもありますが、脊柱のねじれや歩行異常がのこる。
 
 

頸椎の骨折

馬は頸が長いことと、激しい調教をうけることに起因して、脊椎の中で頸椎の骨折がもっとも多い。
 
たとえば調教初期の若馬が強く後引きした時に発生することがあります。第Ⅰ~第Ⅳ頸椎、ことに第Ⅰ頸椎(環椎)と第Ⅱ頸椎(軸椎)に、圧迫骨折、関節突起の骨折、軸椎歯突起の骨折がおこり、脱臼を伴うことがあります。
 
しかし、頸髄損傷のため、馬が即死するとはかぎらず、事故のあと明らかな徴候が現れるまでに3日~10日以上経過することがあります。
 
受傷後数時間~3日間は起立していることができますが、そのあと寝たきりになるか、あるいは徐々に進行する脊髄出血(hematomyelia)、骨折血腫または仮骨の圧迫に起因して、四肢、主に後肢から運動失調が明らかになります。
 
斜頸(torticollis)を呈し、項部または頸に沿う腫脹が現れ、頸の他動運動を嫌う。捻髪音は必発ではない。環椎翼の異常運動を触知できることがあります。
 
倒臥したままの患畜で頸の硬直が顕著なことがあり、またしばしば四肢が伸展硬直を呈する。食欲を示すことがあります。
 
しかし人が頭、頸を動かそうとすると急に興奮し、もがいて、その挙句急死することがあります。
 
X線写真をとることが必要ですが、読影にはかなりの困難があります。
 
頸髄の圧迫を軽減するための手術および椎骨の関節固定術は試みる価値があると考えられますが、まだ確立された手術法がない。
 
したがって、実際には吊起帯と頸簾を装着し、飼槽の高さを工夫して、馬房に収容する以外には良い治療法がない。
 
斜頸も、患部の腫脹、筋の拘縮と癒着のため、完全には矯正できない。
 
予後は不良で、倒臥したままになり、あるいは突然死ぬこともあります。やや軽症では、歩行異常は数日、数週、時には数か月の経過で、進行性に悪化しますが、ある期間をすぎると、全身状態が安定することがあります。
 
牛の頸椎骨折は輸送中の事故、牛の闘争などに起因します。
 
損傷が延髄におよんで、呼吸麻痺、四肢の麻痺、鼓脹のため死ぬことがあります。その他、頸の伸展硬直や斜頸による運動と採食の困難、前肢の強拘歩様または運動失調、咀嚼と嚥下の障害がおこります。
 
頭と頸の他動運動に抵抗し、呻吟、捻髪音があり、また卒中のように、突然転倒することがあります。治療は馬の場合と同様ですが、牛は吊起帯で支えることが難しい。
 
飼槽の高さを頭頸の姿勢に合わせる必要があります。
 
牛が回復した場合には、運動と関係のない生産能力は利用できることがあります。

 
 

胸椎と腰椎の骨折

後肢で立ち上がった馬が急に倒れた時、あるいは鎮静法をほどこさずに倒馬した際に激しく暴れた時に、背筋が急激に強縮して椎体に圧迫骨折がおこることがあります。
 
その他、強い打撲による馬の鬐甲部の棘突起の骨折、またやせた牛、馬では腰椎の横突起の骨折を見ることがあります。
 
胸椎~腰椎の椎体または椎弓の損傷では、まれには視診で椎骨の転位が判明することがあり、あるいは脊柱の明瞭な屈折が現れることがあります。
 
また例外的には打診、針刺で損傷部位に明らかな知覚過敏を認めることがあります。
 
しかし、しばしばその個所より尾側に生じた反射の低下ないし欠如、運動失調、後軀の麻痺または不全麻痺、犬坐姿勢または倒臥、前肢の麻痺または伸展硬直、糞と尿の排泄停止または失禁など、知覚、運動あるいは自律神経機能の欠如を示す徴候のひろがり工合から、外力の作用点と脊髄損傷の程度を推定することができます。
 
椎骨の転位が著しければ、脊髄が挫滅または切断される。転位がなくても、脊髄の出血と浮腫のために、脊髄が著しい損傷をうけ、比較的些細な誘因から、あらためて危険な合併症(骨片の壊死、二次感染-化膿、後出血)がおこって、予期しない死にいたることがあります。
 
椎体の骨折が明らかで、倒臥したままとなり、麻痺が顕著で、脊髄の重度の損傷を示すものは、予後不良であるから、安楽死にします。
 
皮下骨折のうち、症状が軽度な場合、すなわち、脊髄の損傷が、ただちに生命を脅かすほどの機能障害(ショックの持続、昏睡、心・肺機能の著しい障害、高度の麻痺)を呈していない場合には、保存的治療法を試みます。
 
重症例でも、次の3~5日間に意識、運動、採食に明らかな改善の徴候が現れた時には、時間はかかりますが、なおる可能性はのこります。
 
ただし病変が長くのこって、動物の利用性の低下は避けられないことが多い。
 
保存的治療法としては、安静、局所の冷却、頭頸の姿勢と動きに合わせた飼槽の高さの調節、嚥下困難には軟餌の給与または人工栄養法などを行います。
 
骨亀裂または骨折が疑われる症例では、ビタミンB複合体、ビタミンD、リンを豊富に含むミネラルを給与して、経過を見る。
 
棘突起の骨折の場合には、神経系の異常が欠如するか、ないしは軽度です。背線が変形し、触診と打診に過敏です。
 
成牛、成馬では困難はありますが、つとめてX線検査を行います。骨片の摘出によって、背線部の疼痛と運動障害から救うことができる。

 
 

仙骨の骨折

仙骨の骨折は牛におこることが多く、野外の自然交尾、体重の重い雄牛の駕乗、難産の際の過度の牽引などに起因しますから、雌牛に発生が多い。
 
尾の付着部が凹んで切れ込みが深いことは素因になります。ほかには、転倒、打撲、堅固な柵からの脱走なども原因になります。
 
骨折個所と馬尾神経に対する骨(片)、凝血または浮腫による圧迫の程度によって、神経症状が異なります。
 
仙骨の頭側部分の骨折では、後軀の不全麻痺または麻痺が突発し、また肛門、直腸、膀胱、尾が麻痺することがあります。
 
これに対して、尾側部分の骨折では、尾の麻痺のみが現れます。また、仙骨の部分または一部が腹側へ転位します。
 
仙腸関節の分離を合併することが少なくありません。
 
触診、圧診(上方から強く)、直腸検査、X線検査(屈曲可能なカセットを直腸内に挿入)を行います。後軀麻痺を示す症例では、かならず仙骨の骨折を疑って調べる必要があります。
 
起立、歩行が可能で、糞と尿の排泄が維持されている時は、予後が良好です(ただし、尾の麻痺は長くのこる)。
 
症状が進行性に悪化するものは、治癒の見込みがなく、予後不良です。
 
治療としては、自力で排泄できないものは、毎日人為的に排泄させ、また馬尾神経麻痺に対する処置としてプレドニゾロン100mgを3~5日間、毎日硬膜外腔に注射します。
 
これには無菌操作が必須ですが、さらにペニシリン10万単位とストレプトマイシン100mgの注入をあわせておこないます。

 
 

尾椎の骨折

牛では尾椎の骨折がめずらしくない。
 
尾が牛舎の排泄溝のロストルの間隙に挟まる、隣の牛に尾を踏まれる、牛を起立させるため尾を強く引っ張る、あるいは強情な牛を動かすため尾を強くねじる、牛を手荒くこらしめる、などに起因します。
 
牛の尾を柱に固く縛りつけたり吊り上げたりしてはいけません。しばしば椎間板の破裂、靭帯の断裂を伴い、その結果椎骨の脱臼がおこります。
 
皮下骨折では、尾の動きの異常、屈折、局所の腫脹と疼痛、捻髪音が認められ、近位端の骨折では、尾の麻痺が現れます。X線検査を行う。
 
新鮮な皮下骨折では、褥(下敷)をあてた上からギプス包帯か副木を装着して固定することによって治癒しますが、尾の変形がのこることが多い。
 
尾が麻痺すると、尾や肛門の周囲が糞で汚れるため、断尾が必要になります。開放骨折の場合にも、断尾が必要になることがあります。
 
尾の麻痺がなければ生きることには差し支えありませんが、変形は共進会などの審査に不利になります。形成手術が可能な例もあります。

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