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骨折の予後 ~ 現実的考慮

骨折の予後 骨折

 
 

動物の種類

 
 
小動物の骨折では、綿密な診断とこみいった治療法が可能であり、また患畜の管理、看護が比較的容易ですから、予後は概して良好です。
 
 
これに対して大動物では、これらの点に多くの困難が伴います。元来臥てすごす時間が長いので、馬にくらべて安静が保持しやすいですが、馬、ことに成馬は起立している時間が長い習性があるため、牛よりも看護が難しい。
 
 
しかしいずれにせよ、牛でも、馬でも治療期間が長くなると、褥瘡性潰瘍の発生、筋の萎縮、健肢の疲労、二次性蹄葉炎の発生、生理機能の種々の障害などのため、固定器具の装着をつづけ得る期間には限度があって、それはおおよそ10~12週間といわれています。
 
 
しかし、化膿性骨髄炎を伴った複雑骨折、側方転位の著明な横骨折、老齢の、あるいは衰弱した牛馬の骨折などでは、骨片の癒合までにもっと長い期間を要するため、たとえ経過が良好ですべての条件が治癒の見込みを示していても、ただ時間だけが制約となって治療を断念し、そのまま衰弱死か安楽死にゆだねざるをえないことがおこります。
 
 
予後不良ないし治癒の見込みがないもの(関節の破壊を伴ったもの、神経幹の高度の損傷が生じたもの)、高度の骨破壊、周囲組織の重度の損傷(大きな血腫の形成、筋断裂、靭帯断裂)、汚染が著しい開放骨折、他の重篤な合併症(不可逆性ショック、重度の貧血、全身衰弱、敗血症)を伴ったものは、初めから治療を断念します。
 
 

動物の気質

 
 
患畜が長期の治療に順応できる気質のものであるか否かを、術前に判定することは難しい。
 
 
しかし一般には、放牧の牛よりは繋がれている乳牛のほうが、放し飼いの若馬よりはよく調教された成馬のほうが、また大型の馬よりはポニーのほうが、管理・看護が容易です。
 
 
しかし固定包帯や副子の装着が、平常はおとなしい動物をいらだたせて、治療、看護を困難にすることがあります。また小動物では、固定包帯や副子を咬み砕くものがあります。
 
 

経済的価値および用役

 
 
大動物臨床では、つねに救命の価値と治療経費とを比較評価することが欠かせません。
 
 
競走用、競技用の馬では、機能が完全に回復するのでなければ治療は意義を失います。しかし牛では、それほどの完全な治癒はかならずしも要求されません。
 
 
関節硬直、骨の縦軸の整復不良、肢の弱化が生じても、泌乳や繁殖成績にはかならずしも反映しません。
 
 
雄牛では自然交配が不可能になっても、電気刺激で精液を採取することができます。
 
 
治療によって生産性が保持されるならば、結果が不完全であっても安楽死よりは好ましい。純血種を維持する目的の場合もまた同様です。
 
 
一方、予後不良と判断されても、急激な体重減少あるいは発育の阻害が予見される肥育牛、栄養良好ではあるが繁殖用に使えない雌牛、癇が強くて取り扱いの困難な牛馬、体重が著しく重い年とった牛などの症例の治療の可否も、経済的見地から判断します。
 
 
ただし、小動物でも大動物でも、動物愛護の見地から、あるいは家族としての愛情から救命をのぞむ畜主の要望には、経済的あるいは獣医学的判断をはるかに越えるものがあります。
 
 

患肢の保存

 
 
患肢を保存できるかどうかは、主として初めに受けた損傷の程度によります。
 
 
四肢の開放性の粉砕骨折、大血管の損傷がある骨折、組織の挫滅・壊死が著しい骨折などでは、患肢の保存の可否について慎重に考慮する必要があります。
 
 

畜主の協力

 
 
最後に、数週間におよぶ看護の努力と冒険を引き受けて、やりとげるだけの熱意を畜主が有するかどうか、また適当な広さの牛(馬)房があるかどうかが、治療の条件になります。

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