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膝蓋骨の骨折(fractures of the patella) ~ 脛骨の骨折(fractures of the tibia) ~ 大動物・小動物

膝蓋骨の骨折 骨折

 
 

膝蓋骨(大動物)

 
 
発生は稀れで、それも馬にかぎられています。膝蓋骨に関連する靭帯と関節包が損傷をうけます。診断はX線検査によります。
 
 
安静によって骨片の線維性癒合を得ることがあります。Thomas副子を装着するのが良い。症例のなかには、ネジまたはワイヤーで骨片の圧着に成功する例があります。
 
 
裂離骨折で生じた小骨片の摘出手術は、良い結果をうることが多いですが、しかし一般に予後には注意を要します。
 
 
線維性癒合がおこった場合には、膝関節の機能回復が悪く、疼痛がつづき、変性性の関節疾患が継発します。
 
 

小動物

 
 
犬でも猫でも膝蓋骨の骨折は稀れです。ふつうは横骨折がおこる。
 
 
開放性に整復し、締結の原理にしたがって、ワイヤーを使って骨片を圧着すれば、膝関節の早期の使用が可能になります。
 
 
ワイヤーを膝蓋骨の周囲に巻き、さらに大腿四頭筋の腱の付着部と膝蓋靭帯に通す。多発骨折または粉砕骨折の場合には膝蓋骨を摘出します。
 
 

脛骨の骨折(大動物)

 
 
脛骨の骨折は牛、馬、豚、犬、猫に発生します。
 
 
骨幹の斜骨折、螺旋骨折あるいは顆の骨折が少なくない。骨幹の骨折では、骨片騎乗がおこります。
 
 

大動物

 
 
馬では、ほかの馬に蹴られて発生することが多く、しばしば粉砕骨折になります。牛では骨折の6.8%を占め、放牧中の闘争あるいは輸送中の事故に起因することが多い。
 
 
いずれも複雑骨折になりやすい。
 
 

脛骨近位端の骨折

稀れに滑走が原因となって、近位骨端の分離がおこることがあります。
 
治療は非常に難しい。また骨幹近位部の骨折は、診断がやや困難です。

 
 

脛骨骨幹の骨折

斜骨折または螺旋骨折が大多数で、骨片騎乗がおこります。高度の混跛、下腿部の異常運動がみられ、軋轢音が明らかです。
 
飛節が伸び、肢は脱力して下垂します。疼痛の激しい練粉様の腫脹が、また多発骨折では大きい血腫が、発生します。
 
体重の重い成牛、成馬では治療が難しい。
 
体重が軽い若い牛、馬では、保存的治療法としてギプス包帯とThomas副子の併用、または経皮的にSteinmannピンの刺入による骨片の固定とギプス包帯の併用が行われます。
 
また手術的治療法としては、骨プレート、Rushピンによる固定が適用されます。
 
体重100kg以下の子牛、子馬では、2方向から骨プレートをあてるdouble compression platingだけで良い結果が得られることがあります。
 
豚でも骨プレートによる固定が試みられます。

 
 

遠位端の骨折

若い牛、馬では遠位骨端(線)の骨折分離が発生することがありますが、治療は難しい。しかしギプス包帯とThomas副子の応用または髄内釘による固定が試みられます。
 
馬では吊起帯を併用することがのぞましい。
 
遠位端に裂離骨折が発生した場合には、骨片を摘出します。

 
 

脛骨の複雑骨折の治療

特に成牛、成馬の脛骨の複雑骨折の治療には困難が多い。1~2週間一時的に固定して感染の防止をはかっても、不成功に終わることが多く、その間に軟組織の損傷が憎悪し、血液循環が阻害され、感染が悪化します。
 
むしろ受傷後、ただちにcompression platingを行うのも一法です。
 
予後は、若い牛、馬の単純な皮下骨折の場合でも、治療後の経過を見て判定する必要があります。体重の重い牛、馬の複雑骨折は予後不良です。

 
 

小動物

 
 
犬でも猫でも脛骨の骨折はかなり発生が多い。
 
 
腓骨の骨折を併発することがあります。
 
 

脛骨近位端の骨折

10ヶ月未満の犬では、脛骨粗面の裂離骨折がおこることがあります。分離した骨片は上方へ転位する。
 
膝蓋骨も正常より上方に位置し、膝の伸展が制限されます。早期に膝蓋骨の頭側面と外側面の境を縦に切開し、腱に縫合糸をかけて、脛骨にあけた2個の孔に通してとめるか、または締結の原理にしたがって、ワイヤーで固定します。
 
術後はThomas副子を2週間、そのあと1週間、運動を制限します。

 
 

脛骨近位骨端(線)の骨折分離

脛骨近位骨端(線)の骨折分離がおこると、骨片は尾・外側方へ転位します。
 
たいてい側副靭帯が損傷を受ける。治療せずに放置すると肢の機能が損なわれます。
 
非開放性に整復して、Thomas副子を3~4週間装着するか、または開放性に整復し、前脛骨筋を反転して、髄内釘、海綿質用ネジ、骨プレートなどで固定します。

 
 

脛骨骨幹の骨折

脛骨の生木骨折を含む安定型の骨折および若い犬の骨折の場合は、Thomas副子か接合副子または両者の併用で固定します。
 
しかし、大多数の例では開放性に整復固定します。
 
内側面または内側面と頭側面の境を縦切開し、サフェナ静脈と神経をさけて、脛骨の全長を露出する。横骨折、骨折線の短い斜骨折、骨片が少数の多発骨折では、髄内釘を挿入します。
 
骨折線の長い斜骨折、螺旋骨折、縦骨折には、髄内釘とワイヤーを適用します。
 
Kirschner副子は、実際上すべての骨幹骨折、特に粉砕骨折、また骨の癒合遅延または癒合欠如(骨切り術で矯正後)の治療に応用される。肢の内面に装着します。
 
骨プレートも骨幹骨折の大多数、癒合欠如、骨切り術による矯正手術の目的に適用されます。骨プレート、Kirschner副子を補強するために、骨ネジを使用することがあります。
 
猫でも、脛骨骨幹の骨折はかなり発生が多く、しばしば複雑骨折になります。髄内釘で固定する。なるべく、脛骨近位端から挿入します。
 
骨片の軸転を防ぐため、骨折線の上下でワイヤーによる骨縫合を行います。Thomas副子を併用する。

 
 

脛骨遠位端の骨折

未成熟の犬と猫には遠位骨端(線)の骨折分離がめずらしくありません。安定型であれば、ギプス包帯とThomas副子で固定が得られます。
 
しかし固定を確実にするために、犬では内側面で縦に切皮して開放性に整復し、内果と外果からピンを挿入し、髄腔内で交叉させて固定し、あとギプス包帯またはThomas副子で補強します。
 
またその際、髄内釘を踵骨まで挿入して(関節面の損傷は避けられない)、一時的に(3~4週間)関節を不動化することがあります。
 
若い猫では、踵骨の尾側面から脛骨足根骨関節を通って、脛骨の骨幹までピンを挿入します。足関節の角度を120°に保ちます。
 
術後3週間はThomas副子を装着します。約3週間で治癒する。副子とピンをはずします。

 
 

脛骨の内果または外果の骨折

脛骨の内果または外果の骨折は、犬と猫では稀ではありません。
 
足根骨の脱臼または亜脱臼がおこります。関節面を正しく整復して関節の機能を回復する必要があります。果の骨片の転位がない時は、ギプス包帯または接合副子の装着によって治癒させることができます。
 
しかし、骨片の転位がある時は、脛骨、腓骨、足根骨を結合する靭帯群の損傷を伴っているから、脛骨遠位骨端線の分離の時と同様の手術療法が必要です。
 
すなわち、反対側の皮質に十分食い込む長さの、先端にネジ山を切ったKirschnerワイヤーまたは海綿質用ネジで骨片を固定し、あわせて髄内釘を踵骨尾側面から脛骨骨幹に打ち込んで関節を不動にする(4週間)か、あるいはThomas副子を装着します。
 
Thomas副子をはずした時は、釘も抜去しないと、釘が関節腔内で折れることがあります。断裂した靭帯は縫合しておく。

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