骨のいわゆる一次性治癒
皮膚とその下の組織に生じた創傷の治癒過程になぞらえて、骨折の治癒機転を一次性と二次性に分ける考え方は、かなり以前から存在しました。
堅固な手術的固定法によって、外仮骨の形成がないか、あるいはほとんどない治癒が得られた場合を、一次性治癒といっています。
これは、骨の断端がなめらかで、圧力をうけて互いに押しつけられ、全面的に接着し、著しい血行障害がなく、かつ骨折片の不動化が長く維持される時におこります。
この場合の癒合は、ほとんどすべて皮質のハバース系(骨単位)の再生によって実現するので、直接骨治癒(direkte Knochenheilung)、皮質性治癒(kortikale Heilung)、直接ハバース管治癒(direct haversian healing)などと呼ばれています。
イヌ、ウサギなど大きい実験動物の長骨を切断し、平滑な断端を全面的に接着させ、圧迫プレート法で堅固に固定すると、骨折線に近い領域の骨形成細胞と毛細血管内皮細胞は死に、また同様に、ハバース管をとり巻く骨細胞も死んで、骨折線をはさんで死骨があい対する。
しかし、骨形成細胞と毛細血管が生きている領域から細胞の増殖がおこって、両者が骨折線に向かって伸長します。この時、骨形成細胞から分化した破骨細胞がハバース管を穴ぐり、管腔を拡大します。
骨形成細胞はまた骨芽細胞にも分化し、拡大したハバース管の中に新しい骨を沈着させます。皮質におこるこの二重の経過は骨折線に向かって進行し、環境条件が最良の場合には、新生の骨単位が一方の骨折片から、骨折線をこえて他方の骨折片まで伸びます。
その結果、二つの骨折片は、ホゾつぎ(柄接ぎ、pegging, Verzapfung)の形で皮質が直接結合され、間に他の組織の芽がはいりこまない。
しかし、実際におこる骨折の症例では、しばしば、骨の断端は平滑ではなく、断面の全体が密に接着する個所は数か所にとどまるから、これを圧迫して固定しても、断端の間には多くの空隙がのこります。
そのため、骨折線に向かって伸びる骨形成細胞と毛細血管は、骨折線をこえる前にまずその空隙を骨組織で埋める必要があります。
その骨は未熟型のもので、この時点では、骨単位によるホゾつぎの像は見られない。このような条件の時には、骨折部の全領域にわたって骨の改造がおこり、またホゾつぎによる連結が実現して、強固な癒合が完了するまでに、非常に長い期間が必要であって、時には1年以上を経過することがあります。
また、堅固さが劣る他の固定法を用いる場合でも、形成される外仮骨は約18週で消失し、そのあと断端間におこる変化は、堅固な固定を行った時と同様です。
したがって、いわゆる骨折の一次性治癒は、仮骨形成を経由する通常の治癒と異なった別のタイプの経過ではないと考えられます。
また圧迫プレート法では、外仮骨の代わりにプレートが、仮骨の広範な改造が完了するまで、必要な支持を与えていると解釈されます。
治癒の判定
骨折を治療した後、骨折部が堅固に連結されて固定を解除できる時期は、臨床所見およびX線検査によって判定します。
臨床的には、(ⅰ)骨折部に可動性がない、(ⅱ)骨折部の屈曲を試みた時に疼痛がない、の2点を調べます。
固定があまり良好でない時には、硬い外仮骨が明らかに触知されますが、固定が強固な場合には(たとえば締結プレート使用)、外仮骨がほとんどまたはまったく認められない。
X線検査で癒合を示す主な所見は(ⅰ)骨折部に架橋した骨梁の走行が認められ、それらが骨片に滑らかにつながっており、(ⅱ)骨片線が完全に、またはほぼ完全に消失している、の二つです。
ただし締結プレートを使用した場合には、手術直後あるいは術後の経過のかなり早期に、骨折線が認められなくなる場合が少なくない。
