体内皮質ホルモンであるヒドロコルチゾンを大量投与すると抗炎症作用を示しますが、副作用が強く現れるために使用が制約されます。
このため、誘導体を作ることによって抗炎症作用が強く、副作用の弱い薬物が多く合成されており、ステロイド系抗炎症薬と総称されています。
プレドニゾロン(prednisolone)とデキサメタゾン(dexamethasone)が代表的薬物です。
体内動態(吸収)
プレドニゾロン、デキサメタゾンなどの消炎ステロイドの体内動態は類似しており、またエステル型の相違は吸収性だけに関連するので、アルコール型の動態について記載します。
消炎ステロイドは経口投与すると吸収されます。吸収率は薬物の種類やエステル型によっても異なりますが、20~30%程度です。
どのエステル型の吸収率が高いかは薬物によって異なります。
筋注されて吸収されたエステルは血中および肝のエステラーゼによって加水分解されてアルコール型に変る。
蛋白結合
血液中では70%程度がアルブミンと結合する。
in vitroの試験によって、消炎ステロイドはアルブミンとの結合力が強いがグロブリンとの結合力をほとんど持たないことが知られています。
この点は内因性コルチコイドとの相違点であり、体外から投与された消炎ステロイドが血清のコルチコイド結合性グロブリンに対して内因性コルチコイドと競合することはありません。
分布
消炎ステロイドは全身に分布するが、肝と腎には血漿中の数倍の濃度に分布します。その他の組織では血中濃度とほぼ等しくなり、血中濃度の低下と並行して減少してゆく。
したがって、肝、腎以外の組織では投与12時間後には最高濃度の1/5以下になりますが、肝、腎にはさらに24時間後にも検出される量が残留します。
消失
消炎ステロイドは主として尿中に排泄されますが、尿中の化合物の50%が未変化化合物であり、代謝率は高くない。主な代謝物はグルクロン酸抱合体と硫酸抱合体であり、肝で酸化される部分は投与量の小部分に止まる。
内因性のコルチコイドでは肝での代謝率がきわめて高いので、この点も内因性ステロイドとの相違点です。尿中へは48時間以内に50~60%が排泄される。
薬理作用
用いた方法によって数値が異なってくる。例えば糖代謝に対する作用を肝のグリコーゲン蓄積で調べるか血糖上昇で調べるかによって数値が異なる。
また抗炎症作用では実験動物に於ける実験的炎症反応に対する抑制効果を調べますが、実験的炎症の種類は多く、どの方法を用いたかによって数値が異なってくる。
しかし、大体の傾向としてプレドニゾロンは消炎効果が弱く、塩類代謝に対する影響も残っているが、デキサメタゾンなどの9-F化合物ではヒドロコルチゾンの数十倍の消炎効果があり、また塩類代謝には影響しないと考えてよいでしょう。
抗炎症作用
消炎ステロイドは炎症の局所への微量の適用で有効であるから、炎症局所への直接作用であると考えられています。
皮膚の炎症部位に適用するとその部位の疼痛、熱感、腫脹が抑制される。
顕微鏡で観察すると血管拡張、浮腫、フィブリン沈着のような初期炎症反応だけでなく、毛細管増成、線維芽細胞増殖、コラーゲン沈着のような後期反応も抑制されてくることが判る。
さらに炎症の原因が放射線、機械的侵襲、科学的侵襲、感染、免疫反応など、どの原因であってもその炎症反応を抑制する。
消炎ステロイドは組織の防御反応である炎症反応を止めるだけで、原因となった起炎刺激に対しては何の作用も示さない。特に炎症の原因が感染である場合には防御反応が失われる結果として感染が加速度的に進行することもあります。
したがって炎症のうち、原因刺激より炎症反応自体が生体にとって有害であるような疾病に対しては消炎ステロイドの有効性・有用性は高いが、急性感染症のように原因刺激の有害性が高い場合には消炎ステロイドの使用が危険です。
抗アレルギー・抗リウマチ作用
アレルギーやリウマチ症における病変は変則的な炎症反応でもあるから、広範囲な抗炎症作用を示す消炎ステロイドが有効に働くと説明されています。
抗ケトン症
牛のケトン症に対して消炎ステロイドが強い治療効果を示すことが、動物用医薬品として汎用される理由の一つです。
作用機序
ステロイド系抗炎症薬の消炎作用の機序として次の作用が主張されています。
副作用
連続投与の副作用は強い。最も危険な副作用は感染症の悪化と誘発感染症の発症です。これらの危険は高用量ほど、また反復投与するほど高くなります。
感染症に対して、抗菌性薬剤と消炎ステロイドを同時投与する方法は原因菌がその抗菌性薬の有効菌株であるとは限らないので危険です。
妊娠動物に対する投与は流産死や後産停滞の原因になる。特に高投与量ではこの副作用の発生頻度が高い。
消炎ステロイドでもACTH分泌抑制作用を持つので、連用すると本来のホルモン分泌を抑制し、投与を中止したときに副腎皮質不全症を発症させます。
ただし、この副作用はヒトでは強いが犬ではかなり弱く、猫ではさらに弱い。
一般には局所適用では危険性がなく、全身投与でも4日間程度の連用では危険性が少ない。元来、用量依存性の不明確な薬物であるから、高用量投与の論拠は少ない。
臨床応用
犬猫では各種の難治療性炎症や骨髄性腫瘍の治療にプレドニゾロンが経口投与で用いられる。長時間作用型の薬物・薬剤は殆ど用いない。
抗炎症薬の副作用は、ヒトではステロイド系が強く、非ステロイド系が弱いので、主として後者が使用されています。
犬猫での副作用は、ステロイド系ではヒトより弱く、非ステロイド系ではヒトより強い。
このためにプレドニゾロンの使用頻度が高い。
牛に対しては主としてケトン症の治療薬として用いる。
デキサメタゾンは崔流産薬とか出産誘起薬としても用いることができますが、PGF系薬物の方が確実です。

