有毒植物による中毒
家畜は元来有毒植物を避ける本能を有しますが飢餓の場合や緑芻の欠乏したときは貪食して重症な中毒をおこします。
たとえば早春の放牧や夏期旱魃期に当っては緑色、多汁植物を慕い中国地方の牛のネヂキ、北海道の牛のドクゼりおよび馬のエゾネギ、東北、関東地方の緬・山羊のレンゲツツジによって致死的な被害を見るのは好例です。
また家畜繋留に際し有毒樹木を利用しその摂食によるもの例えば馬のニセアカシア、牛のキョウチクトウあるいはキシミ、チヤなどがあります。
その他放牧地に毒草の密生しているとき、野草類を刈りとる際に毒草が混入したときあるいはアフヒマメ、ジャガイモ、甘藷のごとくふつうでは飼料となしえますが何らかの原因によって毒物を産生して中毒を起す場合などがあつて、実際にはこれが相当な損耗の原因となっています。
腐敗醗酵飼料による中毒
腐敗中毒は飼料や寝藁に生ずる各種の腐敗および醗酵菌で就中食品製造所の副産物および残渣や台所の残物は甚しく変敗しやすく、豚や反芻獣におおく発します。
その他獣肉、魚肉などの細菌性中毒域は腐敗甘藷によるものもこの一部です。
工業製造所付近に発生する中毒
鉱毒のうちもっとも知られているものは鉛、銀、銅などで、このうちには鉛の如く金属直接によるものと鉱石中に砒素などを含有してその被害を受けるものとがあります。
しかもこれらの中毒は煙塵や流水によって鉱業地よりはるか遠い所まで波及することがあります。また、これに類似するものに噴火があり、その他種々のガス中毒も包含されます。
薬品の過失による中毒
過失中毒による薬品は農業薬剤、医療薬剤、化学薬品などで砒酸石灰、砒酸鉛、DDT、BHC等の農薬類を直接舐めたり撒布液の残りを過って与えたりあるいは撒布後の作物を家畜が摂食して被害を受けることが多い。
また獣医師の処方箋の至調剤上の誤りより生ずることがあり、主として激烈な作用のある薬品、たとえば燐、砒素、吐酒石、ロカイ、巴豆油、昇汞、甘汞、水銀軟膏、綿馬エキス、ストリキニーネ、ピロカルピン、モルヒネ、その他各種駆虫剤などです。
薬用の失策はかなり多く外用の際にみられます。例えばタール剤や石炭酸を身体の広範囲に用いあるいは疥癬などで煙草、砒素、昇汞、石炭酸の薬浴により、または皮膚病、外寄生虫駆除の目的で水銀軟膏、硫黄剤その他を用いて牛、犬、猫の舐食したために屢々致死的中毒を招きます。
その他摂生や調剤上の不注意から来るものとして駆虫に際し峻下剤を内服させた役畜の激動や配合禁忌の処方域は調度を誤まった処方のごときもの、不明瞭に書かれた処方箋または類似名の劇毒薬たとえば昇汞と甘汞、硫化加里と硫酸加里を誤り、外見上間違い易い薬品たとえば鉛糖、硝石、明礬を芒硝と誤り、または不注意による薬品の誤秤などがあります。
害虫・駆鼠剤による中毒
家鼠、野鼠、南京虫、蛾などの駆除薬によって犬、猫、豚、鶏等の中毒をおこすことがあります。たとえば、フラトール、硫尿素(アンツー)、ウルファリン、燐、亜砒酸、ストリキニーネ、昇汞などです。
悪計による中毒
この例は犬猫および家禽に多いが場合によっては馬、牛、豚のような大中動物にもあります。
而してこれに使用される毒物は通常前項の所謂毒餌であって燐亜砒酸並びにストリキニーネですが、豚では劇毒物ではなくトウガラシのような弱い毒物によって発病した例があります。
