固定(fixation, immobilization)
整復した骨片は、骨性癒合が完了するまでの期間、動かないように固定します。これによって、疼痛もまた著しく軽減されます。
骨片の転位、角度形成、旋回がおこらないよう、本来の解剖学的位置に固定することが大切です。固定したあと経過を観察して、可能と判断されたならば、なるべく早期に運動を開始することによって、筋の萎縮と関節の硬直を防ぎます。
種々の固定法がありますが、大別すると、保存的方法として…
①硬化包帯、②接合副子、または、③Thomas副子による外固定法があり、また手術による固定法として、④ピン副子による外固定法と、⑤骨接合術による内固定法があります。
硬化包帯(cast)による外固定法
硬化包帯の代表的なものはギプス包帯(plaster bandage)で、古くから広く使用されてきました。焼石膏(dried gypsum, plaster of Paris)をまぶした包帯を、いったん濡らしてから患部に巻きつけると、時間の経過とともに硬化して固定の役をはたす。
非開放性に整復した骨折の外固定法として、小動物、大動物を問わず、主に四肢の骨折に応用されています。
ギプス包帯をほどこす場合には、患部の毛を刈ったり剃ることはしません。
また骨の突出部を保護するため、メリヤス布、綿、フェルトなどをあてがって下敷(褥)にします。下敷は突出部では薄く、陥凹部では厚くします。
ただし下敷が厚すぎると、固定が不十分になって、骨片が動くおそれがあります。また下敷は、ギプス包帯の上縁および下縁からはみだす長さとして、皮膚の擦過傷の発生を防ぎます。
焼石膏を丹念にまぶした包帯に、30~40℃の微温湯または1%ミョウバン溶液を、気泡がでなくなるまで十分に浸みこませた後とりだし、余分の水分を絞ってから、すみやかに下敷の上に巻きつけます。
最初の数層の締め加減が大切で、きつすぎないように注意します。
巻きながらさらに石膏泥をぬりつけ(ずぶ濡れは不可)、手でよくなでつけます。最後に良くなでて仕上げます。そのあと、一応負重可能な程度にギプスが硬化するには3~4時間が必要であり、さらに硬化が完了するまでには24時間以上かかります。
骨折個所の近位および遠位の関節を含めて、ギプス包帯を巻き、それらの関節を同時に不動化する必要があります。ただし、趾端は包まずに露出させておき、ギプス包帯を締めすぎた時におこる循環障害の検査に役立たせる。
ギプス包帯は、四肢の骨折の治療に好んで応用されます。
特に、骨片の転位がない安定型の骨折、たとえば生木骨折、断端が鋸歯状の横骨折、嵌入骨折などの治療に有用です。大動物では、幅の広いギプス包帯を使う必要があり、また貫通ピンによる骨片の固定、またはThomas副子を併用することが多い。
開放骨折の場合には、創傷の治療を可能にするため、有窓ギプス包帯(fenestrated plaster bandage)にすることがあります。しかし、有窓にするとギプス包帯の堅牢性が低下するので、大動物の四肢の骨折には適しません。
ギプス包帯はかなり重いので、もっと軽量の硬化包帯として触媒液(硬化剤)に浸すと約30分で硬化するプラスチック包帯(Aire-Cast, Wz)が考案されました。
これは下敷をあてることなく、四肢に直接巻くもので、肢の外形によく適合し、収縮せず、目が粗く通気性があります。波長3500~3700Åの光をあてると、熱を発することなく数分間で硬化するプラスチック包帯(Light Cast, Wz)もまた、軽く、堅く、多孔性です。
骨折した直後に硬化包帯をほどこすと、後発する炎症性腫脹のために激痛を発し、また血行障害が発生します。また腫脹がはなはだしい時期にほどこすと、後で腫脹が減退して包帯が弛緩するおそれがあります。
したがって、ふつうは腫脹の減退を待って、5~7日後に装着するのがよく、その間はまず接合副子またはThomas副子で固定をはかる。
ギプス包帯を解除する時期はかならずしも一定ではありませんが、小動物では4~5週間後、馬では少なくとも2ヶ月後とされています。
四肢の骨折の場合には、その骨が体重の負担、あるいは筋肉の強い作用にたえうるほど十分に堅牢になるまで、待つべきです。

