開放(複雑)骨折の治療
応急処置をほどこした開放(複雑)骨折の治療は、清潔な環境のもとで、なるべく早く開始します。治療の目的は、①活性を失った組織と異物をすべて除去し、血液循環の良好な健康組織をのこして、感染の成立を防ぐ、②骨片の動きをとめて、それ以上の損傷の発生を防ぐことにあります。
軟部組織の損傷が著しい開放骨折では、菌が創の深部に押し込まれて感染が成立する危険がつねに大きい。また応急処置の困難、患畜の輸送、患畜の自虐的行為(咬む、かじる)など、および受傷時またはそれ以後に発生した組織の病変は、二次感染がおこる可能性を非常に大きくします。
したがって、開放骨折に対しては、感染防止法と創の外科的処置をほどこし、骨片の安静化をはかることがつねに必要です。
感染防止のためには、抗生物質の全身的投与を開始し、感染が制圧されるまでつづけます。また、特に馬、牛には破傷風血清の投与を忘れずに行います。
軟部組織の損傷の程度から、局所の治療を、次のように3段階にわけて考えることができます。また皮膚創を縫合閉鎖するか否かは、①受傷後の経過時間、②汚染の程度、③損傷の範囲によって決まります。
第1度 骨の尖った断端が内側から皮膚を貫いている
この場合は、創の周囲を環状に切除し、骨の断端を機械的に清浄にします。あとは皮下骨折の場合と同様に、保存的固定法または骨接合術を行います。
創は縫合して、非開放性に整復・固定するか、または骨接合術の皮膚切開に組み入れる。
第2度 軟部組織の損傷が、本質的には外から内に向かって波及していて、明らかに挫創の病変が認められる
これに対しては、創の周囲を剃毛し、温湯と石鹸でよく洗い、損傷部を十分露出して、創内を生理食塩液(消毒薬液は不可)で洗滌し、異物を取り除き、壊死組織(皮膚、皮下織、筋など)を切除します。
なお、強力な洗滌や過度に広範囲の辺縁切除は、菌を深部に押しこみ、また組織の活性を失わせるから、避けるべきです。
受傷後6~8時間以内であり、創を十分に清浄化することができ、また創を緊張なく縫合閉鎖できるなどの条件があって、骨片の固定が感染防止に役立つ見込みが十分にあれば、つづいて、骨接合術を行います。
その際、すでに壊死が明らかな骨片、あるいは著しく汚染した骨片は除去しますが、その他の骨片はできるだけ温存します。
これらの条件が揃わない時は、患部を包帯で保護し、動物を安静に保ち、手術は創がなおるまで延期します。予後は、整復が可能な状態が得られるか、また保存的固定法によって骨片の著しい転位が避けられるかどうかによって、きまります。
第3度 皮膚と軟部組織の損傷が特に重度で、またその大多数に粉砕骨折がおこっている
このような症例にほどこす処置は、創の清浄化、開放創の局所的治療、およびフルピン副子の経皮的刺入による外固定、または固定包帯による外部からの骨片の不動化に限られます。
そのような時に、人に適用される有窓ギプス包帯、架橋ギプス包帯などはあまり堅牢でないため、ことに大動物に使用することは実際的ではありません。
大きな創には、細いドレーンを設置して、2日間洗浄と抗生物質(たとえばポリミキシンB 25万単位、バシトラシン1250単位、フラジオマイシン25mgの混合液)の注入を、1日に2~4回行った後ドレーンを抜き、あとは包帯交換時に抗生物質を局所に使用して、良性の肉芽組織の発生を待ちます。
感染に対する処置のほか、出血が著しい開放骨折では、血管断端の結紮、また可能な場合には、血管の吻合術を行う必要があります。
また神経断裂に対しては、神経鞘の端端縫合を行って、機能の回復をはかります。
なお軸索断裂がおこった時には、損傷部より末梢の軸索に生じた変性は徐々に回復する(中枢側の神経線維から軸索が再生して、1日に1~1.5mmの割合で伸長する)。
射弾骨折の治療
抵抗の大きい骨に弾丸(片)が衝突すると、周囲に向かう爆発的な破壊力がはたらいて、骨の硬い部分には蝶形骨折、粉砕骨折が発生します。
皮質が薄い骨端部では抵抗が小さいので、管状あるいは溝状の射創が生じる。また弾丸(片)が不潔な皮膚を通過するため、感染の危険が非常に大きい。
したがって、これらは応急処置および開放骨折の治療の方式にもとづいて処置します。
なおあわせて他の臓器・組織の損傷の有無について十分検査する必要があります。

