乳房炎の原因
素因あるいは誘因に加えて、乳房炎の大多数は病原微生物が感染することによって発生します。原因となる微生物としては、各種の細菌、マイコプラズマ、真菌類が知られ、またウイルスの関与も考えられていますが、主役を演じるのは細菌です。
乳房炎の原因となる主な細菌は、各種のレンサ球菌、ブドウ球菌、大腸菌群、緑膿菌、コリネバクテリウム、ブルセラ菌、結核菌その他です。
なかでもレンサ球菌、ブドウ球菌による乳房炎がもっとも普通ですが、大腸菌群による臨床型乳房炎も注目されています。
レンサ球菌のうち、牛の乳房炎において多く検出される種類は、無乳レンサ球菌Streptococcus agalactiae、減乳レンサ球菌Str. dysgalactiae、牛レンサ球菌Str. bovis、乳房レンサ球菌Str. uberis、糞便レンサ球菌Str. faecalisなどです。
ブドウ球菌のなかでは、黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusがしばしば検出されますが、抗生物質に耐性の株が少なくない。
表皮ブドウ球菌Sta. epidermidisが分離されることもある。また大腸菌群では、大腸菌Escherichia coli、クレブシエラKlebsiella pneumoniae、エンテロバクターEnterobacter aerogenesなどが問題となる。
近年はまた緑膿菌Pseudomonas aeruginosaによる乳房炎も報告されています。
これらの細菌が乳房に感染をおこす経路は三つある。
(ⅱ)は乳頭や乳房の外傷から侵入して乳腺に到達する主としてリンパ性の経路
(ⅲ)は全身の他の部位の病巣から侵入する血行性の経路です。
原因別にみた乳房炎の性状
日常遭遇する乳房炎の性状には、感染した病原体の種類によってそれぞれ特色がある。
ただ同一の菌種でも、菌株や感染機序の違いにより、また牛が自然に備えている抵抗力によって、乳房の呈する反応は異なるし、さらに搾乳や環境因子もストレスとして乳腺に作用して反応に影響を与える。
実際面では、ことに菌の混合感染のために、病性が複雑化することが少なくない。
甚急性とよばれる重症の場合には、炎症の徴候(腫脹、帯熱、発赤、疼痛、機能障害)がいずれも明らかで、さらに全身的徴候として、体温の上昇(39~42℃)、脈拍数の増加(90~120/分)、筋の震え、元気沈衰、食欲不振、体重の急減が現れます。
急性の乳房炎では、乳房の炎症徴候と発熱および元気沈衰が見られる。
炎症徴候が軽度で、全身的な異常を伴わないものは、亜急性です。また炎症はあるが、外見上臨床兆候が認められず、主としてミルクの検査結果から乳房炎の存在が明らかにされるものが、非臨床型乳房炎です。
炎症が数か月あるいはさらに長く次の泌乳期まで持続するものは、慢性乳房炎とよばれる。
非臨床型乳房炎は、ときどき炎症が再燃して亜急性または急性の形をとることをくりかえして、慢性に移行することが多い。

