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病的浮腫・病的浮腫の治療

病的浮腫・病的浮腫の治療 乳房と乳頭の疾患

 
 

病的浮腫(pathologic edema)

 
 
(ⅰ)産褥性の病的浮腫:
 
 
産褥期に、病的な浮腫のため乳房が腫脹して下垂し、乳頭が接地することがあります。牛は後肢が開張肢勢をとり、起臥が困難になり、歩行が妨げられます。横臥する時には、上側の後肢を後方へ伸ばす。
 
 
乳房の皮膚がぴんと緊張し、光り、少し紅色を呈し、またいくらか痛みに敏感になる。
 
 
皮膚が張りすぎて乳房の根元に裂創が生じ、そのあと漿液が多量に流出して乳房が縮小することがありますが、一方化膿の危険が大きい。
 
 
裂創が乳頭にまでおよぶと、乳頭も腫脹して搾乳が困難になります。
 
 
下垂した乳房と乳頭は踏創をうけやすい。そのため、乳頭がフレグモーネや壊疽に陥り、さらに重度の急性乳房炎に発展することがあります。
 
 
また浮腫が生じると、非臨床型の乳房炎が臨床型にかわることがある。
 
 
浮腫のため乳房の重量が著しく増して(81kgに達した例がある)、乳房提靱帯が断裂することがあります。
 
 
極端な垂れ乳の場合には、提靱帯と腹壁の腹黄膜tunica flava abdominisとの連結が切れて、乳房は皮膚だけでぶらさがる。
 
 
このような乳房の割面をみると、陶器のように白く光り、皮下結合織が著しく肥厚し、特に乳頭の根元で厚く、血管が拡張し、充血している。
 
 
結合織、弾力性組織が腺組織にもはいりこんで、腺は萎縮している。
 
 
(ⅱ)慢性浮腫:
 
 
高能力の乳牛に慢性浮腫が生ずることがあります。
 
 
分娩前2~3ヶ月の頃から浮腫が現れて最高度に達し、泌乳が開始されたのちも数か月続き、その後徐々に軽快するタイプです。これが分娩の度にくりかえされ、かつ次第に腫脹がひどくなります。
 
 
乳房は拡大したままになり、乳房提靱帯が伸びて垂れ乳になる。皮膚は厚く粗になり、皮下織の肥厚と線維化が乳頭にもおよび、乳管洞が狭窄して、器械搾乳が不可能になる。
 
 
これは牛の血統が関係あるものと考えられており、飼料成分は関係がない。
 
 
(ⅲ)分娩と関係のない浮腫:
 
 
これには非炎症性と炎症性とがあります。
 
 
非炎症性の浮腫をもたらす原因としては、心臓性または末梢性の循環障害、乳房の静脈の血栓または静脈瘤、持続的な横臥と褥瘡の発生、妊娠末期の鼓脹症、水血症、搾乳失宜によるうっ血、伝染性貧血(馬)があげられます。
 
 
炎症性の浮腫の一つは、急性の乳房炎を伴わないタイプで、乳房の表在性の炎症に起因する。たとえば、乳房表面の創傷感染、昆虫の刺咬、漿液化膿性子宮炎などが原因となります。
 
 
乳量は減るが、乳質には変化がない。たいがい4~10日でなおる。上皮の落屑を伴う。
 
 
なお、ブルセラ菌感染による未経産牛の流産、トリパノソーマ感染による馬の媾疫dourine,牛伝染性鼻気管炎(IBR)-伝染性顆粒性膣炎、などの際にも乳房に浮腫が現れることがあります。
 
 
他のタイプは急性細菌性乳房炎の前駆症状として発現するもので、乳質は著しい変化を呈する。
 
 
乳房炎が1~2分房にかぎられても、浮腫は乳房全体の皮下織にひろがる。特に大腸菌、エンテロバクターの感染、あるいはブドウ球菌とコリネバクテリウム・ピオゲネスの混合感染による乳房炎の時に著しい。
 
 
結核菌の感染によるものも同様です。
 
 
レンサ球菌、ブドウ球菌によるカタル性乳房炎では、急性症の1/2、慢性症の1/4の例に浮腫が現れる。コリネバクテリウム・ピオゲネスによる亜急性または慢性乳房炎でも浮腫と肥厚がみられる。
 
 
妊娠初期に1~2分房に浮腫が発生し、また分泌物が塩味を呈する時は、おそらくは非臨床型または慢性の乳房炎の存在を示すもので、これらは分娩後に臨床型乳房炎を発する。
 
 
未経産牛乳房炎の際にも、しばしば著明な浮腫が現れる。
 
 

病的浮腫の治療

 
 
分娩前・後に発生する乳房浮腫の効果的な治療法は少ない。
 
 
心血管系刺激薬または下剤の投与、乳房マッサージ、カンフルチンキ塗布と乳房サポーターの使用、分娩前の搾乳、分娩後の頻回の搾乳、飼料の変更(たとえば蛋白質の含量を減らす)などは、ほとんどまたは全く効果がない。
 
 
毎日15~20分の曳き運動を行うと馬ではかえって症状が悪くなる。
 
 
有効とされている方法としては、牛をパドックに自由に放す、牛血清アルブミン300~500gを3時間以上かけて徐々に静脈内に注入する、オサドリン(フェノピラゾンとアミノピリンの合剤)20~50mlを皮下または筋肉内に注射する。
 
 
ヒルドイドを毎日3回乳房によくすりこむ、などがあげられます。
 
 
また利尿薬(ハイドロクロロサイアザイド、アセタゾルアマイドなど)を、初回は静脈内に注射し、あとは錠剤または粉末の内服をつづけることも有効といわれている。
 
 
なお乱切刀lancetで、後乳房の乳頭近く、または前乳房の前方の皮膚を15~25ヶ所、0.5~1cmの深さに乱刺する方法(ささばり)は著しい効果が認められますが、感染の危険が大きいため推奨されない。
 
 
これらの治療法も、分娩前の浮腫にはほとんど効果がなく、定期的に搾乳する以外に方法がない。なお初乳は廃棄せずに残して、子牛に飲ませる。
 
 
慢性の浮腫で、すでに皮下織の肥厚と硬結のあるものは治療の効果がない。炎症性の浮腫に対しては抗生物質療法と利尿薬の投与を行う。

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