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肝臓の疾患(diseases of the Liver) ~ 肝の損傷

肝臓の疾患(diseases of the Liver) ~ 肝の損傷 肝・胆嚢・脾および膵の疾患

 
 
肝臓は体のなかで最大の腺体で、前腹部に位置し、腺体の大部分が体軸の右側に偏位している。前面は横隔膜と接触するので、横隔面と呼び、後面は胃の前位、すなわち腹腔臓器に接するから臓側面と呼ばれる。
 
 
一般に肉食獣の肝臓は体に比較して草食獣のものより大きい。馬は五葉に分かれ、牛では右葉、方形葉、左葉に尾状突起、乳頭突起が突出している。
 
 
豚および犬は基本的に六葉からなっている。
 
 
肝臓の血管は、固有肝動脈から小葉間動脈、小葉内毛細血管網を経て、門脈系に合流する栄養血管と、門脈から小葉間静脈、小葉内毛細血管網、中心静脈、介在静脈、集合静脈、肝静脈を経て、後大静脈にはいる機能血管がある。
 
 
肝臓はグリコーゲンの貯蔵と物質代謝に深い関係をもつとともに、脂肪の消化に必要な胆汁を生産分泌する。胆汁は胆管、肝管、総胆管を経て、十二指腸に送られる。
 
 
この胆道の途中で、馬以外の家畜はすべて胆嚢をもち、胆嚢管からも胆汁を受ける。馬は胆嚢がないので、肝腸管によって十二指腸憩室に開口する。
 
 
肝臓の機能は上記のように物質代謝や貯蔵と放出、外および内分泌、解毒ならびに胆汁成分としての色素、異物および細菌などの排泄や温度調節など広範におよび、それぞれ相関的なはたらきを示し、またホルモンや自律神経調節を受けながら心臓や腎臓の機能と複雑な関係をもっています。
 
 
したがって、肝臓と胆嚢の疾患の診断にあたっては、稟告の聴取をはじめ、一般臨床所見の異常、とくに肝臓の腫大や感染および膿瘍や腫瘍の有無、腹水症、肝硬変、黄疸などについて検査し、また血液や尿および糞便の検査、血清脂質の検査、その他さまざまの肝機能検査を行います。
 
 
このほかX線検査(胆道造影)ならびに肝臓穿刺による生検法biopsyや腹腔鏡による検査peri-toneoscopyのほか、近年では超音波断層法の有用性が認められている。
 
 

肝の損傷(injuries of the liver)

 
 
肝臓は容積が大きく弾力性の少ない柔らかい実質性の臓器で、横隔膜や後腹膜により固定されて移動性が少ないため、外部からの衝撃によって損傷をおこす機会が多い。
 
 

原因と種類

 
 
(ⅰ)開放性損傷:刺創や射創、ときに切創などに原因し、他の重要臓器の損傷を伴うことがある。
 
 
(ⅱ)皮下損傷:鈍性の外力によって、肝臓に損傷を招いたもので、とくに犬や猫は牛、馬にくらべて腹腔が小さく腹壁が薄いため、打撲や蹴傷および輪轢などで損傷を受けやすい。
 
 
この場合、肝臓のみが破裂することが多く、力の加わり方によって、次のような三つの型に分けられる。
 
 

真性破裂:肝臓の被膜と実質がともに破裂したもの。
 
 
被膜下破裂:被膜に損傷がなく、実質が破裂したもの。
 
 
中心性破裂:肝実質の内部が限局性に損傷をうけたもの。

 
 
(ⅲ)嚥下異物の刺入:牛や緬山羊および犬・猫において、ときに尖鋭な嚥下異物が胃壁や腸壁を穿孔して、肝臓に向かい、創傷性肝炎を発することがあります。
 
 

症状

 
 
肝の損傷における症状の特徴は、受傷時のショックと肝臓からの出血です。この場合、大出血がなければショックはまもなく回復しますが、一般に大出血を伴うことが多いので、重篤な貧血症状を呈し、あるいはそのまま二次性ショックに移行するものがある。
 
 
体温の下降、血圧の低下、振顫、徐脈などの症状を現し、とくに局所の圧痛と腹筋の緊張が見られる。大出血をきたした場合は、早期に開腹して破裂部の止血や縫合および対症処置を行わなければ、予後は不良です。
 
 
なお、開放性損傷や嚥下異物の刺入時は、肝臓の感染に留意する。
 
 
皮下損傷の場合でも、門脈血には細菌が存在するので感染をおこし、また胆管損傷を伴う場合は、腹腔内に胆汁の流出を見ることがある。
 
 

治療法

 
 
ショック症状を呈するものは、輸血・輸液および酸素吸入などの救急処置をほどこして経過を観察する。犬・猫の場合は手術の対症となるので、ただちに開腹し、肝損傷部の出血部を確認して、確実に結紮止血を行う。
 
 
肝臓の断裂部は創面の接着縫合(臥褥縫合)を行うが、損傷が複雑で深い場合は、肝葉切除術partial hepatectomyを行う。なお、ガーゼタンポンによる圧迫止血は、細菌感染が多く、また、その抜去時に大出血を招くことがあるので、やむをえない場合以外は用いない方がよい。
 
 
この肝の損傷における手術にあたって、さらに留意すべき点は、感染による腹膜炎の発生です。したがって、腹腔内への排液管の装着drainageと十分な化学療法および全身的な対症療法を積極的に行う必要があります。

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