直腸憩室(diverticulum of the rectum)
直腸憩室は直腸が部分的に拡張したもので、犬に発生し、稀れに馬にもみられる。慢性の糞便停滞coprostasisが存在する時に、糞の圧迫によって生ずるもので、先天性に発生することは稀れです。
糞塊に圧迫された直腸の筋層に断裂がおこり、そこから直腸粘膜が嚢状に膨出する。犬の場合には糞が停滞充満した憩室は会陰部に膨れ出して、そのため会陰ヘルニアと混同することがあります。
直腸検査によって、憩室の存在と糞の停滞を知ることは容易です。慢性の裏急後重tenesmusを伴う。
治療法:停滞した糞塊をしばしば指で排除してやる。外科手術によって直腸憩室を切除するのがよい。
直腸麻痺(paralysis of the rectum)
直腸麻痺は、馬に発生することが一番多く、その他犬および牛でも観察されている。馬では雄よりも雌に起ることが多い。
直腸麻痺が生ずる時は、膀胱、尾、肛門、時には後肢も同様に麻痺しているのが普通です。
脊髄の疾患、馬尾cauda equinaの圧迫麻痺、腰仙部の腫瘍、稀れに伝染病が原因となって発病するが、時にはまったく原因不明のことがあります。
初期の徴候としては、大量の糞が不定の間隔において排泄されることに気付く。糞が貯留して直腸壁が伸張してしまうと、もはや糞を排泄することが不可能になる。
時には尾も脱力し、汚れ、また肛門も弛緩する。膀胱が同時に罹患している時には尿失禁がおこる。起立不能におちいることがある。
膀胱、尾、後肢の麻痺は完全麻痺のこともあり、また不全麻痺のこともある。麻痺の原因によって異なるが、ほとんど大多数の例は不治です。
直腸の不全麻痺の場合は手で糞を排除することができるから、状態はそれほど重篤ではない。仙骨・第Ⅰ尾椎間に生じた骨折が原因となって生じた直腸麻痺でも、完全に治癒した例がある。
1日に数回糞を排除し、直腸内を洗い、膀胱が麻痺している時は、カテーテルを用いて1日に数回排尿させる。以上の対症的な処置以外に、神経刺激薬の投与が試みられていますが、ほとんど効果は期待できない。
直腸の腫瘍(neoplasms of the rectum)
直腸周囲組織には黒色肉腫、肉腫が発生する。
直腸粘膜にはLieberkühm腺の貯留嚢腫、粘膜息肉、息肉様腺腫、線維腫、粘液線維腫、線維脂肪腫、平滑筋腫、肉腫、放線菌腫、および静脈瘤(真性痔疾)の発生が報告されています。
(ⅰ)症状:直腸に腫瘍が発生すると、それによって直腸狭窄、糞便停滞、排糞困難、慢性疝痛がおこることがある。粘膜息肉、嚢腫は排糞の際に目撃できることがありますが、さらに直腸検査によってたしかめることができる。
(ⅱ)治療法:直腸深部の腫瘍は不治です。肛門近くに発生している有茎の粘膜息肉および嚢腫は結紮、絞断、穿刺などの手段によって除去することができます。
いずれにしても摘出した腫瘍の病理組織学的検査が必要です。
