腸閉塞の診断
腸閉塞の診断には腹痛、嘔吐、腹部膨満、排糞減少ないし停止、粘液あるいは血便の排出、食欲減退または廃絶などの臨床症状、直腸検査所見、脱水状況、尿中インジカンの証明およびX線所見などによって行われますが、経過の急な場合も多いので、試験的開腹手術によらなければならないこともあります。
また類症鑑別も必要で、その主な点は次のごときものです。
他の疾病による腹痛と区別する必要があり、急性腸閉塞では、糞がまったく排泄されず、血液と粘膜のみが排泄されるのが普通です。
牛の第四胃捻転は胃拡張の一つの特殊な例で、その初期には急性の腹痛を伴うので注意が必要です。
牛の創傷性第二胃腹膜炎では、初期に急性の腹痛がおこることがあります。しかし、この時には中等度の発熱など炎症症状が現れ、腹壁の過敏が著しく、便秘はあっても、いくぶん正常な糞が排泄されます。
急性腸炎ないし腸の運動亢進の際にも激痛がある。後者では亢進した蠕動音が聞こえ、また急性腸炎では下痢がある。主として馬の痙攣疝および子牛の飼料に起因する下痢の場合には、腹痛は一過性で治療に対して迅速に反応する。
馬において腸閉塞と鑑別の困難な病気は、腸間膜血管の塞栓および腸の鼓脹症です。いずれもガスによって腸が膨満するが、腸の鼓脹症では普通、激痛を伴うことがなく、閉塞の時のようなショックはみられない。
また閉塞した腸のループを触知することがなく、大多数の例では直腸からガスが出る。腸間膜血管の閉塞では、症状は急性度がやや軽く、血液を混じた糞が排泄されるのが普通であり、直腸検査によって肥厚し、閉塞した腸間膜血管に触れる。
腎臓および尿管の異常に起因する疝痛もまた、腸閉塞に似ている。牛の一過性の腹痛発作は、結石の尿管通過に原因することがあると考えられる。
牛の腎盂腎炎の際には、個々の腎乳頭の急性炎症によって腹痛がおこると考えられる。去勢した肉牛および羊では、尿道閉塞によって腹痛がおこることがある。
しかし、これらの場合には動物は呻吟し、努責がおこり、膀胱の拡張および尿道の過敏があり、排糞には異常がない。
慢性の腸閉塞と、便秘との鑑別も困難なことがある。また腸閉塞の各種の型の相互鑑別もむずかしく、試験的開腹によって診断が確定することもしばしばです。
治療法
普通は、外科手術によって閉塞部をすみやかに除去し、あるいはその原因を取りのぞく。手術療法は犬、猫などの小動物ばかりでなく、牛に対しても実施される。
また特に近年は馬の種々の腸閉塞に対して、全身麻酔下に開腹手術が行われており、馬の疝痛に対する治療法の必須の選択肢の一つとなっている。
手術方法は閉塞の種類・程度により異なりますが、主なものは次のようなものです。
破砕困難ならば、流動パラフィンなどを注入して緩解し、くだす。それでも破砕できない時は、腸切開術をほどこす。
癒着による閉塞:開腹し慎重に時間をかけて剥離する。
索状物による絞扼:開腹し、絞扼している紐状物を剥離または切除する。
捻転による閉塞:開腹のうえ整復する。ただし、あらかじめ貯留しているガスを除去した方が楽に整復できる場合が多い。
重積による閉塞:発症直後で患部があまり傷んでいない時は、開腹のうえ、重積をおこしている腸を静かにしぼり出すようにして引き出すと、整復しうる場合がある。
しかし、これが功を奏さなければ患部を切除し、健康な腸の両端で腸吻合を行う。なお、小児などの腸重積で整復に有効とされている高圧浣腸は、動物では一般に効果を示さない例が多い。
ヘルニアによる閉塞:ヘルニア輪を切開拡大して整復する。以上の場合、腸管がかなり損傷している時、癒着や絞扼物の剥離が困難な時は、患部をまとめて切除し、重積の例にならない腸吻合術を行う。
これらの手術の際、極力感染予防につとめ、特に腸切除、腸切開、腸穿刺においては、内容漏出により、腹腔内を汚染しないように注意する。
また腸吻合の際は、手術後縫合不全による内容漏出がおきぬよう注意するとともに、術後腫脹による内腔狭窄がおこらぬよう慎重におこなわなければなりません。これらの注意を怠ると、術後の腸閉塞が発生することがある。またわずかな失宜も癒着の原因となるので、ていねいに行うことが大切です。
手術後の腸運動の回復はしばしば困難な問題で、発病後4~5日経過すると、患部を外科的に矯正しても、なお麻痺性腸閉塞が持続することがある。これに対しては、下垂体後葉エキスを使用することもあります。少量の副交感神経刺激などの緩刺激剤の方が一般に使われている。
保存的治療法としては、激痛に対しては初期に鎮静剤、脱水に対しては補液を行う。
動物を道の悪い運動場で激しく運動させたり、追い運動を課したりすると、突然腸の変位が矯正されることがあります。この時には、ただちに多量の糞が排泄される。
しかしこれには、ある程度の危険が伴う。また重積の例で、壊疽に陥ったループが脱落して、突然回復した例が報告されています。

