鞍傷(sitfast)
本症は、馬の受鞍部における皮膚および皮下織の挫傷性の損傷で、乗馬および輓馬に多発。
原因:鞍具の長時間にわたる持続的圧迫・鞍具の構造不良・装鞍失宣・積載法の不正、乗御失宣、馬匹の体形不良(鬐甲部の過高・過低・鯉背・平助・凹背・削痩など)、および疲労・発汗・興奮などによって発生しやすい。
また交配時、稀に雌馬が頸背や鬐甲部に咬傷を受けて本症を発する。
鞍傷は、以上のような場合に発生することが多いので、平素の飼養管理の注意によって、十分に予防することができるものです。なお戦時、軍馬に本症が発症した理由は…
(ⅱ):長時間にわたる過載。
(ⅲ):脱鞍を怠ったこと。
(ⅳ):過度の発汗により局所に皮膚病が発生したことなどです。
症状:初期は熱痛を伴った限局性の扁平な腫脹にはじまり、挫傷や血腫を併発するものがあります。患部は指圧に対してきわめて鋭敏で、背部の屈曲をきらうが、圧迫壊死を伴うものではかえって著明でない。
鬐甲粘液嚢(第Ⅴ~Ⅶ胸椎棘突起上の皮下に常在)の炎症を生じたものは、鶏卵大またはそれ以上の限局性の腫瘤を形成し、波動、熱痛を伴う。
本症を経過したものは、一般に局所が脱毛し、中心部は壊死に陥り、その周囲に瘢痕化した肉芽面を現し、表面が痂皮によって被われているものが多い。
周囲の皮膚は硬化して弾力性を欠き、陥没する傾向がある。一般に真皮の障害が顕著なものでは、治癒後その部に刺毛(皮膚損傷により限局性に発生する白毛)の発生をみるのが特徴です。鞍傷の経過中に染毒した場合は、化膿性炎症をおこし、周囲にフレグモーネやリンパ管炎を併発して発熱し、また膿瘍や化膿性瘻孔を形成することが少なくない。
治療法:早期に発見して装鞍を中止し、局所療法を行うのを原則とする。ごく軽症のものでは、局所のマッサージおよび染毒防止(創面消毒薬の塗布)につとめるとともに、鞍褥の患部に接触する部分をえぐって装鞍し、使役に供する。
皮膚に挫傷を伴うものは、肝油軟膏を塗布し、腫脹、熱痛の著しいものに対しては、冷罨法をほどこす。血腫には切開消毒処置を、また壊死部は原則として摘出する。
化膿の徴候のあるものは、防腐的冷罨法やペニシリンなどの注射を行い、特に腫脹がはなはだしく波動を呈する場合は、ただちに縦切開、あるいは反対孔(対孔contra-open-ing)を設けて排液し、必要に応じ串線法をほどこして、開放療法を行う。

