虹彩炎および虹彩毛様体炎(前ぶどう膜炎)iritis and iridocyclitis(anterior uveitis)
眼球血管膜(ぶどう膜)は眼球の中膜に相当し、虹彩、毛様体および脈絡膜の三者は明瞭な限界なく相互に移行している。したがって、虹彩に炎症があれば、ほとんどつねに毛様体にあるいは脈絡膜まで炎症が波及する。
特に前部ぶどう膜は種々な眼内炎症とも関連しやすく、頻繁に炎症をおこすものです。後ぶどう膜炎(posterior uvei-tis)は比較的少ない。
原因:細菌、ウイルス性全身疾患に継発することが多い。すなわち馬、牛のインフルエンザ、腫瘍、紫斑病、ジステンパーなどの際に発生する。特に馬の月盲症の際にみるものははなはだ特徴的なものがある。その他、外傷、科学的刺激、自己免疫疾患も考えられています。
症状:激しい疼痛、眼瞼痙攣、羞明、流涙、虹彩の腫脹、充血、角膜周縁の充血がある。房水は虹彩の炎症滲出物のため不透明となる。出血性の時は赤色滲出液、化膿性の時は帯黄緑色の膿性滲出物が著明で、線維素性虹彩炎の時は、帯黄灰白色の膠様滲出物をみる。
いずれも日時の経過とともに凝塊となり、次第に前眼房底に沈殿する。瞳孔は縮小し、光線に対する運動性を欠き、虹彩と水晶体の癒着(後方癒着)をおこしやすい。毛様体炎の場合は硝子体混濁をおこすことがある。
診断:正確な診断は細隙燈顕微鏡を用いて前房滲出物(細胞、色素、線維素など)を観察することによってはじめて下される。簡単な方法としては、検眼鏡によりあるいは斜光源から眼房を透視してみる。
ウイルスに起因するものがかなり多いが、その他細菌、原虫、寄生虫などに対する原因療法を全身的、局所的に行う。対症療法として、まず2~4%アトロピンの点眼、または結膜下注射、コルチコステロイドの局所適用および結膜下注射を行う。その他一般的には、鎮痛の目的に、ジオニン点眼、消炎・鎮痛の目的でザル曹などが使われる。
月盲(間歇性眼炎、回帰性虹彩毛様体脈絡膜炎)periodic ophthalmia or moon blindness
馬、ロバなどにおいて回帰性に眼症状を発するもので、きわめて古くから知られ、いまだにその真因の明らかでないはなはだ特異な疾患です。
古くはさまざまの憶説から発し、土壌説、中毒説、細菌説、寄生虫説あるいは馬の過労、飼養失宣にも重大な誘因があるとされてきました。現在は馬のレプトスピラ症の一症候とする考え方が比較的多くの支持をうけている。
なお最近、牛にも同様な回帰性眼炎の存在することを報告しているものもある。
症状:一般に温暖地方に多発し、冬季に少なく盛夏初秋の候に多い。また、従来馬の移動、輸送などの集団に発することが知られています。
眼の変状としては虹彩・毛様体・脈絡膜炎、すなわちぶどう膜炎uveittisと称するものです。初期急性症は、全身症状として、食欲不振、元気沈衰、体温上昇、呼吸、脈拍の増加がおこり、次いで眼症状としては羞明、流涙、虹彩の混濁腫脹、瞳孔の不整狭小、前房の白濁がみられ、さらに血様雲絮状の沈殿を前房下部に生じ、次いで角膜にも白濁をきたす。
多く一眼、時に両眼が同時に冒され、数日ないし1~2週間でいったん炎症症状が去り、跡かたもなく正常にかえる。非発作時にはほとんど異常をみとめないのが普通です。
これらの症状の発作はきわめて不定の間隔で数回繰り返され、いわゆる慢性経過をとって、ついにはさまざまの器質的眼変状を後遺し、時に失明、眼球萎縮などをきたす。
しかしまれに耐過するものもみられる。
対症的(発作時)には暗室で安静にし、易消化飼料を給し、二次的外傷などの発生防止に留意して看護に努める。できれば眼湿布、アトロピン点眼などを行う。レプトスピラ症として抗生物質療法を行う。例えばペニシリン600万~1000万単位を連続投与し、テトラサイクリン、ストレプトマイシンなども投与する。時に転地、環境転換により発作が止むこともある。

