鉛中毒(lead poisoning):中毒の原因と感受性
米国では子犬の鉛中毒が多い。廃屋からの木切れを口にくわえるためです。
本邦には家屋にペイントする習慣がないので、陶業地区に散発するに過ぎない。
バッテリー廃液の飼料・飲水への混入が原因になる。牛では家屋解体時に出た鉛管、鉛板やその切れ端の摂取も原因になる。
若齢ほど感受性が高い。
犬、牛、馬は感受性が高い。
生体内動態
胃腸管からの吸収率は低く、10%以下ですが、幼弱動物では高くなる。吸収されて血中に入ると大部分が赤血球膜とアルブミンに結合する。
しかし2時間後には50%以上が肝に蓄積されます。その後、徐々に骨に移行しますが、殆ど全量が移行するには2ヶ月が必要です。
幼弱動物では脳への移行率が高い。
臨床症状
急性・亜急性中毒では痙攣などの中枢神経症状と、疝痛、便秘、血便などの消化器症状が出る。慢性中毒では貧血、衰弱、疝痛が特色です。
子犬では過運動性と攻撃性が特色です。
EDTA-Ca-Na₂で治療する。犬ではぺニシラミンの経口投与でも治療できる。
ヒ素中毒(arsenic poisoning)
ヒ素の毒性は三価と五価で異なり、三価ヒ素の毒性が数倍も高い。
三価ヒ素剤の農薬はあるが、特定毒物に指定されているので実際には殆ど使用されず、家畜が中毒する可能性も低い。
犬の糸状虫治療薬に有機三価ヒ素薬が使用されているので中毒する可能性はある。しかし糸状虫の死滅に原因する症状も強いので、区別が困難です。
中毒学ではヒ素を重金属として扱うが、金属イオンの形で摂取されることはない。従って化合物によって体内動態が異なるが、一般に吸収性がよい。
三価ヒ素は胆汁中濃度が血中濃度の10倍になる。このため経口摂取された三価ヒ素の大部分は腸肝循環系に留まる。
体内では三価ヒ素が五価に変換され、尿中に排泄されますが、消失速度は遅い。
亜ヒ酸基(三価)はリン酸と競合する。このためミトコンドリアの酸素利用が阻害される。またヒ素原子として蛋白のSH基と結合するので多くの酵素反応を阻害する。
三価ヒ素の体内動態を反映して胃腸管と肝への作用が強い。
特に腸管上皮細胞は酸素消費量が多いので侵されやすく、経口摂取でも注射でも嘔吐、下痢などの胃腸管症状が著明です。
その他の器官では腎、肺、毛細管が侵され易い。ヒ素中毒は神経症状を伴わないのが特色です。
家畜では急性・亜急性中毒の報告が多く、慢性中毒は殆ど報告されていない。
ジメルカプロールで治療する。
欧米ではアルサニン酸やロクサルソンのような有機五価ヒ素化合物が豚の飼料添加物として使用されています。これらは、①成長促進、②豚赤痢予防、③セレン中毒防止の目的に使用されている。
従って濃度を誤ったための中毒が散発しますが、発現する毒性症状が三価ヒ素の中毒とは異なっており、後肢の運動失調が主な症状になっている。
水銀中毒(mercury poisoning)
水銀の毒性は金属水銀や水銀イオンの場合と、メチル水銀などの単鎖アルキル水銀の場合とで異なり、アルキル水銀の毒性が強い。
水銀や水銀イオンの吸収性は低く、吸収されても中枢神経へは殆ど移行しない。
メチル水銀は吸収性がよく、中枢神経への移行性もよい。
水銀塩の毒性はどの動物種でも腎毒性で、主として近位尿細管上皮が障害される。メチル水銀の毒性は動物種によって異なり、犬、猫、子牛では中枢神経興奮症状が強い。成牛・豚では中枢神経抑制症状が出る。
ジメルカプロールとチオ硫酸ナトリウムで治療する。公害規制の特に厳しい物質であるから、中毒発生の可能性は殆どなくなっている。

