水溶性ビタミンは欠乏症の予防治療に用いるだけでなく、反芻動物のルーメン微生物への作用を期待した用法にも用いる。
チアミン(thiamine, VB₁)
家畜のチアミン欠乏症は抗チアミン物質によって起こる場合が多い。
肉牛子牛に稀に起るチアミン欠乏症で、第一胃内に形成される抗チアミン物質の吸収によって発症すると云われています。
馬はワラビの採食によってチアミン欠乏症を起こす。
主な原因物質はワラビに含まれるカフェイン酸(3,4-dihydroxycinnamic acid)とその誘導体であり、チアミンを非可逆的な酸化還元反応によって破壊する。
カフェイン酸は耐熱性です。
魚類には抗チアミン因子が含まれますが、特に鯉に多い。
この因子はヘモグロビン由来のへミン(hemin)であり、易熱性であるから生で摂取した場合に中毒する。
犬でも発生していますが、キツネやミンクでの集団発生が知られています。
チアミンを注射で投与する。
附)牛のワラビ中毒(bracken fern poisoning)
牛では馬と異なってワラビの採食によってチアミン欠乏症にはならず、致死的な造血機能障害が発症する。本邦では放牧中の乳牛育成牛に多発する。
放牧中の育成牛は早春期からワラビを採食し始めますが、中毒の発症には体重以上のワラビの摂取が必要であるから発症するのは8~9月です。
骨髄の全ての造血機能が侵されるだけでなく、膀胱癌を併発することが多い。
治療にはバチルアルコール(batyl alcohol)が有効だといわれていますが使用経験に乏しい。
ニコチン酸(nicotinic acid, niacin)
ニコチン酸(ナイアシン)とニコチン酸アミドが同一の効果を示す。
欠乏症では口腔粘膜と皮膚の病変が主体であり、重症では潰瘍になる。下痢や貧血も併発します。
鶏と豚の飼料にはトウモロコシとマイロが汎用されますが、これらの穀物のニコチン酸含有量は高い。しかし結合型で非吸収性です。
家畜はニコチン酸を体内で生産できますが、出発物質はトリプトファンです。トウモロコシもマイロもトリプトファン含有量が極めて低い。
このような条件であるから欠乏症発生の可能性はあるが、市販の配合飼料には十分なニコチン酸が配合されています。
猫はニコチン酸の合成系を欠くので、ニコチン酸必要量が高い。
泌乳中の乳牛に10g/head/dayを連続投与すると、①脂肪率補正乳量が10%程度上昇し、②ケトン症発生率が低下する。
ルーメン内のプロピオン酸生産菌を増殖させる作用によるらしい。
コリン(choline)
鶏の飛節症はカルシウムの多給かコリンまたはマンガンの欠乏によって起こることが知られています。鶏のコリン欠乏症は脂肪肝と飛節の腫脹・変形による歩様不全です。
また雌豚では欠乏による繁殖障害が知られている。
これらの疾病はトウモロコシや穀物の多給が原因で起こる。トウモロコシや穀物はコリン含有量もメチオニン含有量も低い。
これらの欠乏症に対してコリンを経口的に投与する。
コリンは乳牛の脂肪肝やケトン症に治療効果があると云われています。
ビオチン(biotin)
ビオチンの欠乏症はブロイラーと犬で知られています。ブロイラーの欠乏症は脂肪肝・腎症候群(FLKS,fatty liver and kidney syndrome)と呼ばれる。
犬は生タマゴを大量に給餌されるとビオチン欠乏症になる。
これは卵白中の卵白アビジン(avidin)がビオチンの腸管吸収を抑制するためです。これらの欠乏症に対してビオチンを経口的に投与する。
タウリン(taurine)
タウリンは猫に特異な必須アミノ酸です。
タウリンは蛋白の構成アミノ酸ではなく、動物細胞の原形質に溶解しており、特に心・網膜・神経細胞・筋などの興奮性細胞に高濃度分布している。
殆どの動物種では体内でタウリンを合成できますが、猫はこの合成系を欠如している。猫をドッグフードで飼養しているとタウリン欠乏症が発生する。
主な症状として網膜中心変性、拡張性心不全、繁殖障害が挙げられる。
猫の必要量を満たすには500mg/kg(dry food)で十分ですが、多くのキャットフードではこの10倍程度が添加されています。


