ビタミンは人の栄養学を基準にして類別されているので、家畜ではビタミンとはいえない物質も含まれている。鶏はビタミン要求性が強く、Cを除く殆ど全てのビタミンを要求します。
しかし鶏の殆ど全てが配合飼料によって飼育されており、これらの飼料には十分なビタミンが添加されているので欠乏症が発症する事は稀です。
医薬品としてのビタミンは欠乏症の予防治療薬として用いる薬物ですが、さらに別の薬効を期待して投与することもあります。
ビタミンは脂溶性と水溶性に分ける。両者の性格は著しく異なります。
ビタミンA(vitamin A, VA)
脂溶性ビタミンはA、D、E、Kであり、いずれも側鎖がイソプレン重合体になっている。
動物体内での活性型VAはレチノールです。動物はVA合成能を持たないので植物性飼料中のカロテノイドか肝臓を摂取する必要があります。
体内動態
小腸内で脂肪分解物や胆汁が形成するミセルに取込まれる。上皮細胞では拡散によって吸収される。
カロテノイドは上皮細胞でVA(レチノール)に変換される。
VAはパルミチン酸エステルに変り、カイロミクロン(乳糜脂粒)に溶け込んでリンパ管に入る。
肝はVAパルミチン酸エステルの貯蔵能力が高く、その個体の必要量の約1ヶ月分を貯蔵できる。
肝は必要に応じてVAを蛋白結合型として血中に放出する。
薬理作用
上皮細胞の正常な構造と機能を保持する。
VA欠乏には消化管上皮細胞が特に敏感で、粘液分泌性が低下して角化してくる。
同様な変化は泌尿器や呼吸器の粘膜にもみられる。
アルデヒド型になって蛋白のオプシンと結合してロドプシンになる。
ロドプシンは光のセンサーとして働き、光刺激を視神経に伝える。
VA欠乏による夜盲症は牛、馬、豚、犬、綿羊で報告されています。
牛や馬ではVAの欠乏を起こしやすいので、予防治療に用いられる。
多くの疾病ではVAの消費量が正常より高くなるので補給する。
一部の畜産学者は仕上期の肉牛をVA欠乏飼料で飼育してVA欠乏状態にすると、筋肉細胞間の結合が粗になり、脂肪が入り込む。この方法は霜降り肉を作る一つの技術になると主張している。
本邦の肉牛肥育農家ではこの方法が広く採用されている。
VAは大量投与によって中毒を起こすことの多いビタミンです。
症状は欠乏症に似ており、嗜眠、腹部や関節の疼痛、蹄の脆弱化、脱毛、皮膚の乾燥などがみられる。
この物質は生体内で卵巣に多く分布し、卵巣機能の維持に必要であるらしい。VAの前駆体としてだけでなく、独自のビタミンとしても働くと考えられています。
ビタミンEとセレン(vitamin E and selenium)
動物はビタミンE(VE)を合成できないので、植物中のd-トコフェロール(tocopherol)やその異性体に頼っている。
医薬品・飼料添加物としては合成品のdl-α-酢酸トコフェロールが用いられ、この物質の1mgの活性が国際単位になっている。
VEは抗酸化作用を持ち、またセレンとの関連性が強い。
VEの生理・薬理作用
酸化防止作用によって働く。細胞膜のリン脂質は多価不飽和脂肪酸を多量に含有しており、この脂肪酸の半液状性によって膜の機能を維持している。
不飽和脂肪酸は分子酸素によって容易に過酸化物に変って固体状になるが、細胞膜には常に分子酸素が通過しているので酸化されやすい。
VEはこの酸化を防止し、細胞膜の正常機能を維持していると考えられています。
飼料中の多価不飽和脂肪酸の含有量が多くなるとVE要求量も高くなる。
セレンとの関連
セレンはグルタチオン ペルオキシダーゼの活性基です。この酵素は細胞内に生じた過酸化物を還元して水や水酸基に変え、同時に還元型グルタチオンを酸化型に変える。
VEの欠乏症とセレンの欠乏症は類似しており、どちらの欠乏症もVEかセレンで予防治療できることが多い。
多くの研究者はVEとセレンの一方が極微量でもあれば、その必要量を他方で代用できると考えているが、反論もある。
欠乏動物
VE欠乏もセレン欠乏も成熟動物では稀です。
欠乏症は①VE欠乏飼料や不飽和脂肪酸含有量の多い飼料を給餌された妊娠動物からの出生子とか、②低セレン地帯で生まれた子動物に発生する。
従ってVE欠乏症は低セレン地帯に多い。
本邦では北海道と長野の一部に低セレン地帯があります。
妊娠動物のVEやセレンの欠乏によって新生子に筋ジストロフィーが発症する。
初期の症状は運動不全です。
剖検してみると筋に白斑や白条がみられるので白筋症(white muscle disease, WMD)と呼ばれる。
妊娠中のVEやセレンの欠乏によって新生子の肝と筋に病変が起る。
豚や犬では魚粉の給与が多過ぎると脂肪織炎(黄脂症, yellow fat disease)になることがあるが、大量の不飽和脂肪酸によるVEの破壊が原因だと言われています。
VEの欠乏によって産卵鶏における孵化率の低下やブロイラーにおける脳軟化症、出血性素因などが起る。
脳軟化症は飼料に魚粉配合が多過ぎると起る。
VEにはdl-α-酢酸トコフェロールが、セレンには亜セレン酸塩が注射や経口で用いられている。
またVEとセレンの配合注射剤も子馬の白筋症予防に用いられている。

