ホルモン薬の種類と特色
一部の例外を除けばホルモンはポリペプチドかステロイドですが、ペプチドホルモンとステロイドホルモンの体内動態や作用機序は同一系に属するホルモンであれば極めて類似している。
①体内ホルモンの不足を補う
②ホルモン類似の合成品によって天然ホルモンの持つ一部の作用を強く発揮させる。
③拮抗薬によって体内ホルモンの全てまたは一部の作用に拮抗させる。
ホルモン薬の多くは生物学的定量法によって効力を測定し、基準品と比較してその量を単位で表現している。
一部のホルモン薬では実重量表現も用いられている。
ペプチド系ホルモンとステロイド系ホルモンの動態の比較
●ペプチド系ホルモン
・ホルモン
下垂体ホルモン、膵臓ホルモン、消化管ホルモン、上皮小体ホルモン
・分泌細胞中の存在
顆粒中に蓄積されている。
・分泌
分泌刺激によって細胞内にCa²⁺流入
ホルモンをエキソサイトシスによって分泌
・血漿中濃度
静止時は10⁻¹⁰M以下
活動期には静止時の5~100倍
・血中動態
蛋白との結合なし。間質液にも急速に分布。
消失速度速い(t½が数秒~30秒)
・受容体
標的細胞の細胞膜受容体と結合する。
・作用発現を仲介する過程
細胞内の二次メッセンジャーの濃度を変化させ、特定の機能を促進する。
●ステロイド系ホルモン
・ホルモン
副腎皮質ホルモン、性ホルモン
ビタミンD、(甲状腺ホルモンの動態も類似)
・分泌細胞中の存在
複合体で蓄積される。
・分泌
ペプチド系ホルモンの刺激によって分泌
・血漿中濃度
血中濃度はゆっくり変動し、ペプチド系ホルモンの様なサージ(surge)は認められない。
・血中動態
高度に蛋白と結合し、組織間液には徐々に分布。
消失速度は遅い。
・受容体
標的細胞の細胞質または細胞核内の特異受容体と結合する。
・作用発現を仲介する過程
核内DNAに働き、特定のRNAを合成させ、特定の蛋白の合成を促進する。
ペプチドホルモンにはアミノ酸数が数個の小型分子から200程度の大型分子まである。但しいずれも分子量が4万以下であり、毛細管で濾過されて間質液に入る事が可能です。
大型ホルモンの一部では動物種差が明確です。
成長ホルモン(somatotropin, ST, growth hormone)
ソマトトロピン(ST)のアミノ酸組成や作用には動物種差が大きい。一般に特定動物のSTは分類学上の類縁動物種や進化論上の下位動物種にはある程度の有効性が期待できるが、進化論上の上位動物種には無効であると言われている。
DNA組替え技術を用いて牛(bovine somatotropin,BST)、豚(porcine s.t., PST)、鶏、魚類などのソマトトロピンが生産されている。
薬理作用
子牛にBSTを、また肥育豚にPSTを連日注射すると、脂肪組織が退化して筋肉組織が増加する。組織学的に調べてみると筋肉の細胞数が増加している。
β作動薬では細胞数が増加せずに細胞あたりの蛋白量が増加するので、作用機序が異なる。分布改善作用に伴って飼料効率も改善される。
搾乳牛にBSTを連日注射すると脂肪率補正乳量が25%程度も上昇する。
肝細胞に働いてインスリン様成長因子(IGF)を分泌させ、間接的に作用する。
徐放性注射剤が作られており、1ヶ月に1回の投与でよい製剤まである。
下垂体前葉からのSTの分泌を刺激するソマトメジンとか、分泌を抑制するソマトスタチンの拮抗物質などがSTと同じ目的に研究されています。

