
ヤギの起原の野生ヤギは、3種と考えられており、それが数か所で家畜化されたとされています。野生ヤギは第3紀の中新紀ころからアジアに現れ、洪積世のころ、当時、陸続きであった地中海をへてアルプス地方、スペインなどのヨーロッパに分布したらしい。
これがウシやヒツジよりは少し遅れて家畜化され、とくに遊牧民族の最初の乳用家畜として、愛用されたらしいのです。現在のヤギの3つの起原は、つぎの通りです。
岩山に群棲し、人間に比較的なれやすい。現在、コーカサス、アフガニスタンなどアジアの一部に分布しています。角は大きく、その切断面は2稜で単純な弓形で後方に曲がり、毛色は冬は灰褐色、夏は黄色または赤褐色です。
顎髯(ヒツジにはこれがない。ヒツジとヤギとの差異の1つです)がある。
⑵マルコール(Markhor : Capra falconeri)
岩の多い森林地帯を好み、ときには平地にもすむ。アフガニスタンから蒙古の北部にまで分布します。角は大きく2稜で、内側から外側によじれています。
螺旋角ヤギ(Spiral-horned goat)ともいわれます。背と顎に黄褐色の長い剛毛があります。
⑶ヨーロッパ野生ヤギ(Capra prisca)
現在は絶えていませんが、往時は北スペイン、南フランスなどに広く分布し、平地にすんでいました。角は螺旋状によじれていますが、先端は外側に向かっている。
ヨーロッパの東南部で家畜化されたとされ、ヨーロッパの現存の螺旋状の角をもつヤギの大部分の起原はこれであるとされています。
以上のうち、もっとも早く家畜化されたのは、マルコールであり、つぎがベゾアールであるといわれています。エジプトでは新石器時代からマルコール系のヤギがいたらしい。
また、B.C. 3,000年ごろのメソポタミアのスメリア人が、すでにヤギをもっていたから、この家畜化はそれより以前と推察され、アジアではB.C. 3,500年ごろとされています。
ヨーロッパで、もっとも古いヤギは、新石器時代のスイスの湖棲民族の遺跡から発見される泥炭ヤギ(Peat goat : Capra palustris)とされています。
この泥炭ヤギは、角の曲がりが少ない点から、おそらく当時その付近に多数いたベゾアールの家畜化されたものでしょう。そしてこれは、青銅器時代(B.C. 5,000~2,000)には同じヨーロッパ野生ヤギの系統の大型のものとさかんに交雑されています。
このようにして広い意味のヨーロッパヤギが作られた。現在乳用ヤギの代表的なものとされているザーネンやトッケンブルグなどは、いずれもその端をここに発しています。
日本における歴史
本邦には野生ヤギはいない。約1,500年ぐらいまえに家畜ヤギが中国、朝鮮などから伝わったらしいです。九州地方に早く伝わり、ここで肉用の小型の在来種となりました。
乳用ヤギは嘉永年間にぺリー提督により小笠原に放飼いされたのが最初であるという。また明治11年(1878)には松方正義侯がフランスから乳用ヤギを持参し増殖をはかっています。
明治末期になってようやく政府もスイスやイギリスから乳用ヤギを輸入しています。これは国の大した積極的な奨励もなかったが、漸次頭数を増やしました。
長野、群馬など一部地方では農家の栄養源として、しっくりと農民と結付いている観があります。
品種の分類法
用途により乳用種、毛用種、兼用種などに区別されます。
兼用種というのは肉用と毛皮用との兼用です。純然とした肉用種というのはありませんが、未改良のものとか、在来種などは実際上、肉用にされている場合が多い。
ヤギの大部分は乳用種です。なお、ヒツジとヤギとは科が同じですが、亜科から異なります。然しこの両者は、よく混同されています。
つぎに両者の違いを記述してみると、(a)ヒツジの被毛は細く、柔らかく、脂肪の付着が多いが、ヤギのそれは毛用種を除いて、一般に粗剛で脂肪の付着が乏しい。
(b)ヒツジには毛髯や肉髯がないが、ヤギはこれらを持つものが多い。
(c)ヒツジには眼瞼腺、三蹊腺、趾間腺などの脂肪分泌腺がありますが、ヤギにはない。
(d)ヒツジは草を好みますが、ヤギはむしろ樹葉を好食する。
(e)ヒツジの発情周期は平均17日で、外部徴候は不明瞭、ヤギはこれが平均21日で外部徴候が判然としています。
(f)染色体数は、ヒツジ、2n=56、ヤギは、2n=60です。

