特性
(1)効力の持続期間が長いこと。
薬液を根から吸収させると4~6週間も残効があり、葉面撒布でも2~3週間持続します。
(2)薬剤撒布が不完全でも、有効成分が植物体全部に浸透し殺虫力を発揮すること。
(3)益虫などの天敵を殺さないこと。
他の撒布薬剤では同時に天敵をも殺しますが、浸透殺虫剤を根から吸収される場合は全く天敵に影響がありません。
(4)人畜に対しての毒性が強い。
(5)植物体内の残効期間が長いので、収穫期近くのものには使用できず、大体1ヵ月以前に中止すべきです。
(6)植物の生育の盛でないときは、薬液の浸透や吸収が悪いので効果が劣る。
原因
有機燐製剤は本来毒性が強く、接触毒ですが、同時に消化、呼吸毒ともなるもので、自然中毒の発生は経口、経皮、経気道の何れからも浸透、吸収されて、人畜ともに現在の農薬中最も多いものです。
また、最近はこの毒薬で自殺、他殺あるいは家畜、家禽、蜜蜂などの殺害犯罪が現れています。
昭和30年8月、毒物及び劇物取締法の一部、また9月に毒物および劇物取締法施行令を改正し、パラチオンを含むもの、シュラーダンおよびモノフロロ酢酸(フラトール)などを特定毒物とし、その取締が強化され、製造、輸入、使用、用途、譲渡、譲受、所持について強い規則が設けられました。
また、他の有機燐剤例えばEPN、ダイアジノン、マラソン、クロールチオン、DDVVなどに対しては各県で特定毒物に準ずる規則を以て同様に強化しています。
TEPPはその後特定毒物とされました。
パラチオン剤による中毒例数につき厚生省薬務局ならびに農林省薬事課の調査(昭和29年1~10月)をみると、即ち、人では薬液の撒布時に最も被害が多く、全体の75.5%に達し、次いで自殺ですが、撒布地立入によるものや隣接地のために起きた中毒、死亡もまた大いに注意しなければなりません。
これは撒布後の標識や危険区域の告知に不充分な点もありますが、それよりも更に大切なことはパラチオンという猛毒な薬剤に対する農民の注意の不足などに基因し、このことは直ちに家畜中毒の原因にも直結しています。
一方、家畜、家禽に対しては撒布による畜体付着、撒布後の草、作物、水の摂食、撒布時の吸入、薬剤、容器の不始末、その他となり、哺乳動物は撒布後の経口摂取によるものが最大であり、鶏は撒布時飛散したため直接吸入する呼吸毒の作用が甚だしい。
家畜の中毒原因の頻度を見ると凡そ下記のようです。
(1)薬剤撒布後の田畑で畦畔草や作物の給与によるものは大中家畜中毒の70%にあたります。
(2)薬剤の撒布時に飛散した薬液によるものは大・中家畜の少数と鶏の大部分がこれである。
(3)薬剤撒布地などの飲水や、田の水を飲んだものは大・中家畜中毒の約10%にあたり、役畜である和牛におおい。
(4)薬剤及び器具の不始末によるものは大・中家畜に少数例があります。
(5)故意に本剤を混入した場合としてアヒル6500羽があり、今後養畜家はもちろん我々も中毒の原因を探求するに際し大いに参考となる事項です。
(6)生後10週のダックスフント雄犬が、トマトに撒かれたTEPPを舐めて約2時間後、中毒発症した例があり、稀有な中毒原因です。
従来報告された家畜中毒の実例について2~3を記載すると次の通りです。
牛
①1000倍ホリドール液を田へ撒き、その際畦草にも濃厚に附着した。
1週間を経てその畦草を刈り取り牛に凡そ20kgを2回に分けて切藁と共に給与し、後15時間を経て発病した。
②ホリドール粉剤を撒布後、約24時間繰返し牛が稲を約1坪位盗食し、その水田の水を飲み斃死した。
③青森県においてリンゴ園に撒布したホリドール乳剤による牛馬の被害があった。
④ホリドール撒布用器具を洗った水を飲み、和牛が中毒し30分で呼吸速迫、虚脱、流涎、水様性の吐物が40ℓに及んだものがある。
⑤畜主がパラチオンの空瓶に梅酢と水を入れ、疲労した和牛に与え、30分を経て中毒した。空瓶に残ったパラチオンは0.5~1ccであった。
⑥ダイアジノン乳剤500倍液で消毒した苗代の附近の雑草を食べ約12時間位で発症した和牛が治療により快方に向かった。
⑦PIN乳剤2000倍液に青刈牧草を2~3分浸し、水を切った後、山羊に与えた試験によれば1日1.4~0.6kgを与えると(PIN剤原液1日75±20mg)、変形赤血球の発現増加、白血球の増加、赤血球減少、4~5日で下痢を起こす。
剖検では腸間膜リンパ腺の腫大が著明。
馬
①ホリドール撒布後、約10日を経て畦草を給与し、牛馬が中毒した。
②2000倍ホリドール液撒布後、9日を経た水田のヒエを与えて中毒した。
③6月中旬、2500倍ホリドールで消毒した水稲苗を約14日を経て、凡そ15束を食べさせ、後間もなく発病した。
