漿液性関節炎(serous arthritis)
関節軟骨は固有の血管がないため、炎症に際して積極的な反応を呈することはありません。関節包は血管・リンパ管に富み、つねに最初に炎症に侵されます。
したがって、関節炎はつねに滑液膜炎synovitisといわれます。
漿液性関節炎は慢性と急性に大別できます。
急性漿液性関節炎(acute serous arthritis, arthritis serosa acuta)
関節部の損傷(打撲などの挫傷)、捻転あるいは関節の過労により、原発的に発生します。関節周辺の化膿性炎症の波及、あるいは伝染病の一症候として発生することもある。
化膿性関節炎、粘液嚢炎および腱鞘炎との鑑別が必要です。
滑膜は充血、肥厚し、帯黄色透明の漿液様滲出液が関節腔内に貯溜し、腫脹、熱感、疼痛の急性症状を呈し、関節機能は障害され、跛行します。
しかし、化膿性関節炎にくらべ、全体的に程度は軽いが、初期、化膿性炎と区別がつきにくいこともあります。滲出液は線維素が析出すれば混濁します。全身症状は軽度です。
捻挫、過労による場合には、関節周囲の炎症は軽度あるいは欠如するため、関節の輪廓は比較的によく保たれています。
関節部の挫傷によるものは、関節周囲が腫脹し、付近の化膿性炎に継発したものでは、腫脹のため、関節の輪廓は不明瞭となります。また全身症状が現れる場合もあります。
伝染病の一症候として現れたものは、原病の症状が示されます。
数日で急性症状は消散し、滲出液は吸収されます。
しかし、初期の治療の不徹底、原因の反復持続により、しばしば慢性炎に移行します。
すなわち、関節腔内浸出液貯溜持続により、慢性漿液性関節炎(関節水腫、軟腫)となり、または線維素が関節腔内に沈着、関節包は萎縮し、ついには不全強直となる場合もあります。
すみやかに冷罨法をほどこし、滲出液多量の時は、穿刺排液後、圧迫包帯を行います。安静を第一とし、関節を固定します。
外傷があれば、感染予防につとめます。
急性症状をすぎたならば、温熱療法により、滲出液の吸収、関節内部の復旧をはかり、マッサージ、運動などにより、関節機能の回復につとめる。
この際、骨折、脱臼のないことをX線撮影によりたしかめる必要があります。
慢性漿液性関節炎(関節水腫、軟腫)chronic serous arthritis(hydrarthrosis,gall)
急性漿液性関節炎の慢性化によっておきますが、多くは急性炎に至らぬ程度の炎症の反復、持続によって発生します。
滑膜が肥厚し、絨毛が拡大して、関節腔内に突出し、過剰の滑液貯溜のため、関節包が拡張します。本症は馬、ことに重種系の馬に多く発し、球節軟腫、飛節軟腫などがこれに属します。
関節包の拡張は、徐々に発生するもので、発病の原因は軽度の捻挫の反復、関節構造の不良(不良肢勢)・装蹄失宜などによる関節の過労、年齢とともに進行する全身的な消耗などに帰せられる。
しかし時には、一回の捻挫が原因となって発生したことが明瞭な症例もあります。
また、インフルエンザ、腺疫などの伝染病に関連しておこることもあります。
発病初期の発見は困難ですが、軟腫となれば、臨床的な徴候は明らかです。
関節包が拡張し、その表面の丈夫な支持組織の欠けている場所に、緊張した、非炎症性の明瞭な腫脹として、皮下に膨隆する(軟腫)。
拡張した関節包が機械的に関節運動を妨げないかぎり、跛行をひこおこすことはない。
関節周囲には腫脹、増温、疼痛を欠き、完全な炎症とはいえない。
冷却、圧迫包帯、皮膚刺激剤の塗布、滑液の吸引などが行われてきましたが、いずれもその効果は不十分であって、永久治癒はのぞめない。
もちろん原因があれば、その除去につとめますが、特に機能障害がなければ放置してもよい。

