骨折治療の本旨は、転位した骨片を正常位に整復した後、骨片の移動を防ぐ固定法をほどこして、自然治癒を待つことです。
骨片の転位が少ない場合には、そのまま固定のみを行うことができます。
骨の整復と固定は、患畜の状況が許すならば、なるべく早く実施すべきです。処置が遅れると、筋の拘縮や軟部組織の腫脹のために骨片が触知しにくく、整復が困難になります。
さらに、骨折部の腫脹が解消するのを待っていると、その間に血腫の器質化と仮骨の形成が進行して、骨片が不正に癒着し、処置がいっそう複雑になります。
骨折の応急処置
しかし、局所の治療に先立って、患畜の生命の安全と損傷の悪化を防ぐ応急処置について、考慮することが必要です。
ショックや出血が顕著で全身状態が不良ならば、それを改善する処置を1~2日間ほどこして、状況の改善を待つのがよい。
次に、動物を鎮静させて、患部の損傷の憎悪、骨膜の剥離、疼痛および感染の拡大を防ぐことが大切です。小動物では、必要に応じて鎮痛薬(非麻薬性または麻薬性)によって鎮静とショックの防止をはかります。
大動物の長骨の骨折はつねに救急治療の対象ですが、ただちに治療に着手できるとは限らないので、たとえ短時間でも、応急に患部が動かないように処置します。
しかし大動物では鎮静薬、鎮痛薬によって安静と催眠を得ることは困難であり、またそれらによって疼痛が軽減すると、患肢で負重したり、あるいは獣医師が、骨折以外の他の損傷を見逃す危険がむしろ大きくなります。
したがって、これに対しては、応急に患部を不動にする手段を講じたあと、静かな環境に移して畜主に看護させるのがよい。
やむをえない時には、抱水クロラール(i.v.)による深い鎮静と催眠がのぞましい。また忘れず破傷風血清を注射します。
患部の応急処置としては、多量の綿、セルローズ、発泡ゴム、褥などをあてがい、板などの芯を入れて、隣接の関節を含めて包帯します。
プラスチック製の樋、細長い空気褥などを利用する方法もあります。
患部の保護を怠ると、皮下骨折が二次性に開放骨折になることがあります。開放骨折では数層の滅菌ガーゼでおおい、包帯を巻いて患部を保護します。
なお骨片の移動を防ぐための包帯は、犬では肘または膝から下の骨折には必要ですが、上腕骨と大腿骨の骨折では効果が疑わしい。
大動物では手関節または足関節から下の骨折の場合にほどこします。
骨折した成馬、成牛を横臥で輸送するためには、荷台の広い屋根付きのトラックが必要です。ピクアップ型トラックや馬用トレーラーでは広さが十分ではない。
積み下ろしが難題ですが、動力で動く昇降板が車に付設されていると好都合です。
起立のままで運ぶ時には、吊起帯で保定する必要があります。

