腕関節腱鞘軟腫
本症には、屈腱の腱鞘軟腫と伸腱のそれとがあります。前者は手根関節(腕関節)後面の深および浅屈腱を含む腕屈腱鞘carpal sheathに発し、腕弓水腫galls of the knee-bowともよばれます。
後者は総指伸筋、橈側手根伸筋、長母指外転筋および外側指伸筋などの腱鞘に発生します。
いずれも慢性の経過をとり、軟腫(漿液性、漿液線維素性、線維素性)を形成しますが、時に急性炎として発することがあります。
原因:
腱の激しい運動の結果、腱鞘が持続的に機械的刺激をうけて発するものですが、誘因の不明瞭な場合あるいは外傷性の場合もあります。
症状:
本症は徐々に腱鞘内に滑液が貯留して、波動性を帯びた腫瘤を形成し、ふつうは熱痛を伴わない。
しかし、時には急性腱鞘炎が発生して跛行を伴うことがあります。
屈腱の腱鞘軟腫は、腕関節の後面で、同関節上方約10cmから中手骨の上1/3にわたって著しく膨隆した長形の腫脹が生じ、無痛柔軟で、波動は普通腕関節の上または下において触知しやすい。
伸腱の腱鞘軟腫のうち、外側指伸筋の腱鞘軟腫は、腕関節の直上外側面に鶏卵大ないし、鵞卵大の限局した腫瘤を形成します。
総指伸筋の腱鞘軟腫は、腕関節前面の正中線からやや外側寄りに、橈骨下端から中手骨上端にわたる細長い腫脹を発する。
橈骨手根伸筋の腱鞘軟腫は、腕関節の直上前面に円形の腫瘤を形成し、長母指外転筋のそれは、腕関節前面において上外方から内下方へ斜めに索状の腫瘤を形成します。
これらはつねに慢性の経過をとり、無痛で跛行を伴わない。
牛における腕関節腱鞘軟腫は結核性に発するものがあります。
腕関節前面にわたって、び漫性の腫脹を呈し、前腕前部におよぶこともあります。帯痛性で熱感があり、高度の跛行を伴い、かつ肩甲部諸筋の萎縮や全身の削痩が見られる。
治療法:
本症のうち跛行のないものは、外観を損うのみで、特に治療の必要はない。
急性症で跛行を伴う場合には、消炎処置をほどこす。また同時に装蹄療法を行うと、しばしば効を奏する。
さらに頑固なものには、強皮膚刺激剤の塗擦または焼烙をほどこす。

