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乳房炎(Mastitis) ~ 乳房炎発症の素因および誘因

乳房炎(Mastitis) ~ 乳房炎発症の素因および誘因 乳房と乳頭の疾患

 
 

乳房炎

 
 
デリケートな構造や高度の複雑な機能、あるいは体の部位、生活環境などの関係で、家畜の乳房には炎症がおこりやすい。いったん乳房炎が発生すると、薬物の浸透が容易でなく、激しい疼痛などのために万全の治療を行うことが難しい。
 
 
また泌乳期においては、乳腺の機能を一時的に停止させて治療を施すことが困難なために、治療効果が上がらないことが多い。
 
 
乳房炎は牛、山羊、豚、犬などに発生する。
 
 
多量の乳の生産を要求される乳牛では特に発生率が高く、また乳房の病的変化が著しいために、牛の死命を制するに至ることもまれではない。また乳量の減少、乳質の不良化が避けられないため、酪農家のうける経済的損失は非常に大きい。
 
 

乳房炎発症の素因および誘因

 
 
牛の乳房炎は、原因が単一でなく、病性には軽重さまざまの程度があり、また病気の持続期間や予後にも相違があります。
 
 
また近年は外見上症候の明らかな臨床型乳房炎clinical mastitisのほかに、乳房に異常が認められない潜在性の非臨床型乳房炎subclinical mastitisの存在が注目されています。
 
 
したがって、牛ことに乳牛の乳房炎は、一つの複合疾病群と考えるのが適当です。
 
 
乳房炎の大多数は、病原細菌が乳頭管口から乳房内に侵入することによって発症します。細菌感染によるもののほかに、少数ですが、アレルギー、ホルモン、飼料中の毒物による非感染性の発症が知られていますが、これらはまた細菌感染による乳房炎の素因または誘因になる。
 
 
感染の成立の素因または誘因としてあげられている事項は数が多い。しかし、個々のファクターについて厳密な対照をおいて検討することは難しく、またそれらが相互に影響しあうため、決定的な結論は得難いが、一般に受け入れられているものは次のようです。
 
 

素因(predispositoon)

 
 
(ⅰ)年齢:
 
 
牛の年齢が進むにつれて初感染の発生率が高くなるとされています。
 
 
(ⅱ)乳房および乳頭:
 
 
均斉のとれた、付着のよい乳房、前分房と後分房の泌乳量に著しい差がないもの、乳頭の配列がよく、長すぎず、細目であり、乳頭管が真直ぐで、乳頭管口が適度の口径を有して、乳の流出速度が2.5~3kg/分くらいの牛には、概して乳房炎の発生が少ない。
 
 
これらの素因は遺伝的なものです。
 
 
(ⅲ)内分泌:
 
 
エストロジェンは病原菌に対する乳腺の感受性を高めるといわれています。
 
 

誘因(occasion)

 
 
(ⅰ)気象:
 
 
気温の急変、寒冷の感作は乳房炎の誘因になると考えられています。また気温の高い時期に多数発生する昆虫が乳房を刺して吸血し、あるいは乳頭管口を傷めて乳房炎を誘発する。
 
 
ミルク中の細胞数の増加は、気温よりもむしろ季節の影響をうけるといわれています。季節としては、晩秋および早春に乳房炎が多発する傾向がある。
 
 
荒天の時には放し飼いの牛に乳房、乳頭の損傷が発生しやすい。
 
 
(ⅱ)環境:
 
 
舎飼いの牛には、つながれていてもゆっくり体をのばして休むことができ、また起立する時に不自由がないだけの広さの牛房が必要で、狭くかつ床のすべりやすい牛房は、乳房、乳頭の損傷を生じやすく、また牛にとってストレスとなります。
 
 
牛舎の構造が悪くて隙間風のあたる場所につながれる牛には乳房炎の発生が多いという。
 
 
不潔な牛舎および運動場が乳房に悪感作を与えることはいうまでもなく、乳房、乳頭はたえず糞尿で汚され、そのような場所で分娩させると、その2~3日後に早くも乳房炎が発症する例がある。
 
 
床の敷物beddingも問題で、湿った鋸屑、鉋屑、ワラの中では大腸菌群が増殖して、新しい感染の原因になる。またウォーターカップがこわれて床が絶えず濡れている牛舎では、緑膿菌感染のおそれがあります。
 
 
放し飼いの牛で給飼の場所が狭く餌が食べにくいこと、また勢力の強い牛に追われて弱い牛が密集することは、心理的なストレスを与え、ことに非臨床型乳房炎を有する牛には問題となるといわれています。
 
 
(ⅲ)飼料:
 
 
濃厚飼料の多給は生理的なストレスとして作用し、乳房炎の発症が多いとされている。
 
 
若いマメ科植物はエストロジェンを多量に含むため、それらの生草またはサイレージを給与することは、乳房炎発症の誘因になると考えられています。
 
 
(ⅳ)搾乳:
 
 
搾乳が不十分で乳管洞内に残乳すると乳房炎がおこりやすいと考えられている。残乳はまた乳房炎の病状を悪化させる。
 
 
搾乳器は使用法が適正であれば、それがただちに乳房炎の原因になることはない。しかし使用法が適切でなければ、直接間接に乳房炎の原因になる。
 
 
以上のほか、植物毒による中毒、アレルギー、ケトージスなど多くの因子が、乳房炎の素因あるいは誘因になりうると考えられています。

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