胸膜炎および縦隔炎(pleurisy(pleuritis)and mediastinitis)
胸膜と縦隔(膜)は比較的脆弱な漿膜で、さまざまの原因によって容易に炎症を発生する。一般に漿液性滲出物がないかまたはごく少ないものは、乾性胸膜炎(縦隔炎)といい、滲出液のあるときは、湿性胸膜炎(縦隔炎)と呼んでいる。
とくに化膿菌が感染する場合は、化膿性胸膜炎purulent pleurisyまたは膿胸thoracic empyema(pyothorax)といい、胸腔内に貯留する滲出液には、多数の化膿菌や膿清および膿球が証明される。
原因:損傷、とくに大動物では転倒時に、また犬・猫では打撲をうけて、それぞれ肋骨骨折をおこし、限局性に胸膜炎を発する。
この他に犬・猫では、嚥下した異物が食道や胃壁を貫通して化膿性胸膜炎(縦隔炎)をおこし、また時に骨肉腫やリンパ肉腫、癌腫などの転移病巣が発見される。
なお一般に、抵抗力の弱い動物が寒冷た雨露にさらされたり、肺や縦隔洞の感染症や尿毒症の場合に発生しやすい。
症状:胸部の苦痛は本症の特徴で、咳嗽や深い呼吸時にはさらに顕著となる。とくに両側性にくる場合は、前肢を開張させて、犬座姿勢をとることが多い。
体温は上昇し、呼吸は浅表で腹式になる。粘膜はうっ血し、なかにはチアノーゼをおこすものがあります。胸壁の損傷部ないしは、肋骨骨折の部位は触診により圧痛を認め、聴診により、しばしば胸膜の摩擦音を聞くことができる。
この場合は、肺胞性呼吸音が聞かれ、とくに慢性癒着性胸膜炎のように肺臓が胸膜に広範囲に癒着しているものでは顕著です。しかしながら、漿液性滲出液が胸腔内にたまるにつれて、この肺胞性呼吸音は減少する傾向がある。
滲出液の量が増し、いわゆる水胸hydrothoraxになると、呼吸困難やチアノーゼをおこしやすくなる。
起立位で聴診すると、肺胞音は胸腔の上層で聞かれ、心音は消されてしまうことがある。
胸膜炎の症状の特徴は以上のようですが、診断にあたっては、胸部のX線写真の撮影が胸腔内臓器の異常所見や浸出液の貯留の状態を知るうえで重要です。
治療法:暖かく環境の良い静かな場所で安静をとらせ、十分な栄養を与える。感染症による場合は、抗生物質を使用し、同時に鎮痛、鎮咳剤などを与える。
また胸壁には、消炎の目的で湿布を用いると良い。胸水の貯留が多い場合は、穿刺術により、その一部または全部を除去して患畜を楽にしてやる必要があります。
なお、肋骨骨折や胸腔内臓器の異常および癒着に対しては、開胸手術により治療を行う。

