下剤はその作用の強さによって軟下剤(laxatives)、緩下剤(cathartics)、峻下剤(drasticpurgatives)に分ける。峻下剤は医薬品として用いない。
塩類下剤(saline cathartics),膨張性下剤(bulk cathartics)
塩類下剤は水溶性で難吸収性の無機塩であり、硫酸ナトリウムと硫酸マグネシウムが代表薬です。塩類下剤に限らず、一般に非吸収性の薬物が大量に経口摂取されると大腸における水分吸収が抑制されて下痢が起るので、この種の薬物を膨張性下剤と総称します。
塩類下剤は速効性で、薬用量を投与したあと3時間以内に下痢が起る。
塩類下剤は、低張溶液で与えても高張溶液で与えても瀉下作用を示しますが、いずれの濃度で投与しても空腸に入った時点での腸管内容はほぼ等張になっている。
小腸では電解質が吸収されるが吸収される電解質に見合う以上の水分が腸管内に存在するので塩類下剤の影響はない。しかし大腸での吸収では塩類下剤の浸透圧に見合うだけの水分が吸収されずに腸管内に残る。
即ち塩類下剤は結腸・直腸での水分吸収の抑制によって瀉下作用を発揮する。
3.2%が等張液です。硫酸イオンは難吸収性ですがNa塩で用いると、2個のNa⁺も吸収されないので3倍の浸透圧効果がある。馬に用いられる。
通常NaHCO₃、NaCl、K₂SO₄を配合した人工カルルス塩(カルルスバート鉱泉の泉水乾燥物をまねた配合剤)として用いる。
この製剤には瀉下作用と弱いアルカリ化作用と利尿作用がある。
4%が等張液です。Mg²⁺もSO₄²⁻も難吸収性で浸透圧効果を発揮するが、さらにMgイオンは十二指腸粘膜のコレシストキニン(CCK-PZ)分泌を促進する。
CCK-PZは胆汁分泌を促進し、胆汁酸は結腸の水分分泌を促進する。
硫酸マグネシウムは反芻動物や犬猫に用いられる。
刺激性下剤(stimulant cathartics)
多くの植物成分が経口投与後の刺激作用によって強い瀉下作用を示すことが知られ、一部の書籍には”irritant cathartics”と記載されている。
しかし”irritant”は組織に炎症性変化が起ることを条件にした用語であり、これらの下剤のうち実用的な薬物では組織病変を起こさないので”stimu-lant cathartics”と呼ぶことにする。
トウゴマの種子から得られる油で、経口投与すると小腸で刺激性のリシノール酸が遊離されて小腸の塩分・水分分泌機構を促進する。
速効性で投与後1~2時間で水様性下痢を発症させる。
医薬品としては殆ど用いられていない。
アロエ(aloe)、ダイオウ(rhubarb)、センナ(senna)などの植物生薬が下剤として用いられるが、いずれも有効成分としてアントラセン誘導体を含有している。
いずれも大腸粘膜の刺激によって作用すると言われており、遅効性であるので便秘の治療薬になっている。
家畜には用いない。
フェノバリン(phenovalline)はヒトに対する持続性の緩下剤として用いられている。大腸粘膜の刺激によるといわれている。
猿と豚に弱い瀉下効果があるが、その他の動物種には無効です。
家畜には用いない。
粘滑性下剤(emollient cathartics)
流動パラフィンは潤滑的効果によって排便を容易にするので、犬猫の便秘症に経口投与する。
グリセリン(glycerine)は浣腸に用いる薬物です。
ドクサート(docusate、ジオクチル-Na-スルホコハク酸、DSS)はその界面活性作用によって糞の水分含有量を高めて排出を容易にする。
犬猫の便秘症に用いる。
欧州の獣医界ではカルバコールを下剤として用いていた。現在では殆ど用いていない。
臨床的には下剤の有用性が次第に減少している。
①腸管の診断や手術の前の内容除去には塩類下剤を用いる。
②幼弱小動物での便秘症にはグリセリンによる浣腸が適切です。
③ヘルニアや直腸脱での排便容易化には糞軟化薬を用いる。
④体内貯留水分の除去には利尿薬の使用が適切。
⑤駆虫薬投与後の寄生虫の排出促進は駆虫薬の進歩によって必要性がなくなった。
⑥中毒症での毒物排出促進に下剤を使用するのは危険です。

