ヨウ素は極微量しか水に溶解しないが、アルコールなどの有機溶媒への溶解性は高い。ヨウ素は皮膚粘膜刺激性や金属腐食性の強い物質であるから、通常、有機化合物担体によって水溶性を高くし、反応性を緩和(taming)した複合体の水溶液で用いる。
このような薬物は一般にヨードホール(iodophor, phorは担体)と呼ばれている。
有効ヨウ素(available iodine)
ヨードホール中の全てのヨウ素が有効な訳ではないので、その酸化力を測定して有効ヨウ素量を求め、消毒薬としてのヨウ素濃度を有効ヨウ素濃度で表現します。
有効ヨウ素量の測定にはチオ硫酸ナトリウムによる電位差測定法が用いられる。通常のヨードホールでは含有するヨウ素の60~80%が有効ヨウ素です。
消毒作用
ヨウ素の消毒力は極めて強く、有効スペクトルも広い。殆どの細菌、真菌、ウイルス、原虫、一部の寄生虫卵などに有効です。
グラム陽性菌・陰性菌のいずれにも有効であり、接触すると1分以内に殺滅させる。しかし芽胞に対しては10分以上の時間が必要です。
静菌作用を示す最低濃度(MIC)と殺菌作用を示す最低濃度(MBC)は事実上同一濃度です。
ヨウ素の殺菌力は酸性が強いほど効力が強く、pH8以上では極めて弱くなる。したがって実用製剤には硫酸やリン酸を添加してpHを4以下にしてあります。
有機物質の存在によって消毒力は低下し、物質を茶褐色に染色する。
ヨウ素は分子I₂として働くと考えられています。水溶液中で次亜ヨウ素酸は事実上形成されない。ヨウ素分子は微生物の細胞壁を容易に通過し、細胞膜や原形質の蛋白と結合して変性させ、微生物を死滅させると考えられている。
消毒薬としての応用
ヨードホールはスペクトルの広い強力な殺菌薬であり、耐性菌の生ずる可能性も殆どないので汎用されます。
しかし弱いが粘膜刺激性があり、金属腐食性が強く、臭気があり、脱色、着色するなどの欠点もあります。
また残効性もあまり期待できない。
ポビドン・ヨード(povidone iodine)
ポビドンはアルブミン代用薬として用いられていた合成高分子物質(polyvinylpyrrolidone, PVP, 平均分子量25,000)ですが、ヨウ素を可溶化する作用があります。
ポビドンとヨウ素の水溶液中における結合形態は明らかではありませんが、ヨウ素は容易に放出され、殺菌作用を示す。粘膜刺激性が弱いので外科用の消毒薬として汎用されます。
表面活性物質・ヨード(surfactant with iodine)
中性表面活性物質類によってもヨードを可溶化でき、その複合体水溶液がヨードホールとして用いられている。ポビドン・ヨードより粘膜刺激性が強いが安価であるので、主に衛生消毒に用いられる。
皮膚刺激性は殆どない。
グリシン・ヨード(glycine iodine complex)
ヨウ素をグリシンと混合すると複雑な構造の複合体が形成されてヨードホールになります。
衛生消毒に用いる。

