ダニが多数寄生すると、局所刺激によって動物は落ち着かず、牛、馬は前肢で地を掻き、あるいは蹴踢して不安状態がみられます。犬では趾間の寄生で跛行します。
耳内寄生によって動物は頭を振り、耳を掻き、叫び、ヒステリー状態となって騒擾します。
また、咬着局所には炎症が生じ、局所を器物に摩擦し、引っ掻き、舐め、噛む動作がみられます。寄生局所の皮膚は損傷して、二次感染をきたすこともあります。ダニは体の多くの部位に咬着してみられますが、首、肩、頭部に多い。
本邦の牧野に多いフタトゲチマダニ、オウシマダニは牛の胸垂、腰、臀部から下側にかけてと四肢内側に、Ixodes属は高密度で寄生せず、眼瞼、頭部に認められます。
種類によっては牛、馬の耳に優性に寄生するものもあります。本邦で畜産上重要な種類は、フタトゲチマダニ、オウシマダニであり、前者は全国に、後者は沖縄、九州に多く分布します。
ダニの吸血日数は長く、数日から数週間にわたります。寄生成ダニの吸血量は多く、飽血によって極めて大となり0.5~2cm以上に及ぶ。
飽血ダニは未吸血体重の100~200倍となり、実際の吸血量はフタトゲチマダニ、オウシマダニで飽血体重の3~5倍とされています。
宿主は吸血および注入されるダニの唾液によって影響を受けます。唾液には炎症・溶血・神経毒作用のある毒素が含まれています。
動物はおびただしい数の寄生により、吸血による失血や溶血に原因して、貧血、水血症、体重減少、栄養不良、食欲不振が認められ、また、ときに神経毒からダニ麻痺の発生が知られています。
重度寄生による被害は幼獣に多いが、また、肉、牛乳、羊毛の生産低下や皮の価値が低下し、経済的損失もきわめておおきい。
ダニ麻痺(tick paralysis)はダニが寄生するすべての動物に生ずるのではなく、感受性のある犬、猫、牛、めん羊、馬、豚などの主として幼獣にみられ、また、ヒトでの発症も知られています。
原因は、主として雌成ダニの寄生により、体内に注入されるダニの唾液中の末梢神経性toxinであり、ダニの咬着によるtoxinの持続的分泌が本症発生には必要です。
本症の激しさは必ずしもダニの寄生数に依存せず、感受性の高い個体は少数の寄生で重い症状を生じます。症状は徐々に始まり、最初は弛緩性麻痺から後肢の失調性の不安定な歩様がみられ、麻痺は数日にして悪化し、後に前肢、胸部の麻痺となり、運動不能、呼吸不全をおこすと死亡します。
犬では嘔吐もみられ、死亡率は高く、50%に達するといわれています。
ダニ麻痺の解剖的変状はダニ咬着部の局所的な刺激反応のみですが、肺水腫、髄膜充血、リンパ節腫大、脾臓委縮も知られています。
マダニ症の防除
ダニを防ぐには牧野、採草地、茂みからダニを駆逐し、ダニの生息をできるだけ減少させることです。それには、牧野・採草地の改良、牛の通路・餌場・水飲場・休息場などの環境改善、輪牧、計画的な牧野への殺虫剤の散布、動物体への殺虫剤の適用などを計画的に根気よく、長期にわたり実施することです。
しかし、放牧地などでマダニを駆除することは困難なことがおおい。環境改善による方法が比較的根本的なもので、植生が複雑で茂みの深いところにマダニの密度が高い傾向があるので、野草地を牧草地にするとマダニが減少します。
牧野の火入れは草量の減少などの不利に見合うほどのマダニの減少は認められず、マダニの減少率は14%にすぎません。また、越冬場所である枯草の堆積の除去、輪牧や休牧などもかなり有効です。
マダニの寄生を受けた牛にはダニの個体数が少ないことから免疫現象が考えられる。多くのダニはウイルス、リケッチア、細菌、原虫など多くの種類の病原体を媒介しますが、特に本邦で重要視されるのはピロプラズマとアナプラズマの媒介です。
ダニ寄生の防除はこれらの疾病の予防にも重要です。

