ハリセファロブス感染症は、線虫であるハリセファロブス・ジンジバリス(H.gingivalis)によって引き起こされる、まれで致命的な馬の寄生虫疾患です。
この病気はあまり解明されておらず、ヒトにも感染すると考えられています。
罹患した馬は、ウエストナイルウイルス(WNV)に感染した馬に見られるような進行性の神経学的徴候を発症します。
ハリセファロブス・ジンジバリス(H.gingivalis)は、馬やヒトへの感染が報告されています。腐敗した有機物、馬糞、土壌などに含まれています。
馬がどのようにしてH.gingivalisに感染するのか、その生活環についてはほとんど知られていません。
馬への侵入方法は、粘膜、特に口腔咽頭や皮膚の創傷からの侵入が関係していると考えられています。
馬の体内に入ったH.gingivalisは、馬の体内の様々な器官に移動し、そこで繁殖します。
いったん中枢神経系病変の臨床徴候が発現すると、急速に死に至ります。
感染馬の事例
12歳のアラビアン・ゲルディング(去勢した牡馬)がイベルメクチン(体重1.2mg/kg、PO、2週間ごと3回)で治療されました。肉芽腫はイベルメクチンの初回投与の2日後に外科的に摘出。肉芽腫は18ヶ月後に線虫の感染を認めずに消失しました。
●2012年
アイスランドの2頭の種馬がこの病気で死亡しました。1頭の牡馬は事故で口腔を損傷し、重篤なの神経症状を呈したため安楽死させられました。
組織学的検査では、小脳に軽度の炎症と軟化が見られ、多数のH.gingivalis線虫が存在していました。2頭目の牡馬は、片側に旋回し始め、治療に反応せず急速に悪化したため、安楽死させられました。
組織学的検査では、小脳、脳幹、頸髄、髄膜に多数のH.gingivalis線虫が認められ、反応性の変化はわずかでした。
●2013年
ケンタッキー州中部の生後13週目のサラブレッドの種雄子馬が、運動失調、失明、頭部振戦、右傾、横臥および痙攣発作などの症状を急性発症し、安楽死させられました。
顕微鏡的には、主に小脳を中心に好酸球性および肉芽腫性炎症反応を特徴とする寄生虫性髄膜脳炎が認められました。炎症部位内には、無傷および変性小型線虫の多数の横断面および縦断面が散在していました。
これらの線虫は、Halicephalobus gingivalisの顕著な特徴である背側に屈曲した卵巣と腹側に屈曲した外陰を持っていました。
剖検後5週間凍結保存された脳の一部からも、Halicephalobus gingivalisと同じ線虫が回収され、同定されました。
●2014年
韓国の6歳のサラブレッド種馬が、丸馬場の中で左旋回し、頭や体を壁にぶつけるなどの異常な神経学的徴候が2ヶ月間続いた後、安楽死させられました。
この馬が農場で安楽死させられた後、脳と全血の半分が診断検査のために提出されました。脳の組織病理学的検査では、大脳を中心に多数の病変内線虫を伴う肉芽腫性および好酸球性の髄膜脳炎が認められました。
また、多発性軟化病巣が脳実質に散在していました。病変内寄生虫は形態学的特徴とPCR検査により、H.gingivalisと同定されました。
●2016年
ルーマニアの2つの異なる飼育場で飼育されていたリピッツァナー種馬2頭がこの病気で死亡しました。剖検の結果、腎臓、リンパ節、脳、後腹膜脂肪組織および肺に肉芽腫性病変と壊死性病変が認められ、全身性の感染症が示唆された。
寄生虫学的および組織病理学的分析では、Halicephalobus種と一致するラブジチス型線虫(rhabditiform nematodes)の幼体および成体が検出されました。
●2017年
イタリア・ピエモンテ州の13歳のオランダウォームブレッドの種馬が死亡した。神経病理学的所見は肉芽腫性髄膜脳炎からなり、脳からH.gingivalisの幼虫と雌成虫が分離同定されました。
※症例1
18歳のジプシーバナーの雌馬が、進行性の神経症状を呈していました。
1日目:運動失調とヘッドプレッシング(歩いていて壁に突き当たったまま頭を壁に押し付ける)
2日目:横臥位
3日目:犬かき
3日目に安楽死させ、剖検では肉眼的病変は認められなかった。
この馬の脳と脊髄の病理組織学的検査では、多発性肉芽腫性髄膜脳炎と脳神経および脊髄神経の神経炎の存在が確認され、病変内線虫と卵を伴っていた。
※症例2
慢性の重篤な血尿のアラビアの雌馬が、(尿に血が混じる)来院しました。この馬は安楽死させられました。
獣医師が行った野外剖検では、馬の両腎臓に大きくて硬いオフホワイトの結節性腫瘤が認められ、肺には小さくて硬いないし砂状の結節が散在していました。
組織学的検査では、腎臓腫瘤は過剰な肉芽組織および多数の病変内線虫、幼虫および卵を伴う炎症であることが明らかとなった。肺結節は線虫を伴う小さな肉芽腫で構成されていた。
症状
●本質的に進行性
●頭部後屈
●旋回
●興奮状態と交互に起こる抑うつ感
●発熱
●外側斜視
●運動失調
●ヘッドプレッシング(歩いていて壁に突き当たったまま頭を壁に押し付ける)
●横臥位・もたれ掛かる
●犬掻き
診断
●病歴
●臨床兆候
●身体診察
●病理解剖(剖検・死後検査)
治療
※イベルメクチン:(体重1.2mg/kg、PO、2週間毎、3回治療):神経学的徴候が現れる前に早期に発見されれば
予防
※放牧地にある馬糞を定期的に回収する
※傷口が開いている場合は速やかに対処する
予後
致命的

