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ウマバエ ~ 形態・発育および習性・害・防除

ウマバエ 家畜害虫

 
 
F.Zumpt(1965)によると人畜にハエ幼虫症myiasisを起こすハエは多数あり、12科にもおよびます。これらのハエの幼虫は皮下、鼻腔、消化管、泌尿器などに寄生して、人畜に各種の障害をあたえます。
 
 
家畜のハエ幼虫症はクロバエ(キンバエ)、ニクバエの幼虫などによる場合もありますが、家畜衛生の発達している本邦では、これらによる被害は少ないのではないかと思われます。
 
 
本邦の家畜で問題となるハエは、ウマバエ、ウシバエ、ヒツジバエではないでしょうか。
 
 
これらのハエは完全変態をします。成虫はいずれも口器が退化している変わった種類で、成虫の寿命は短い。しかし、幼虫は家畜の体内にかなり長時間寄生して、家畜に与える害も大きい。
 
 
ウマバエは胃腸に、ウシバエは皮下に、ヒツジバエは鼻腔に、それぞれ幼虫が寄生します。
 
 

ウマバエ(horse bot-flies)

 
 
ウマバエの固有宿主は馬で、シマウマやロバにも寄生します。また、場合によっては人にも寄生することがあります。
 
 
しかし、人では1齢幼虫が皮膚内に寄生し、いわゆるCreeping myiasisをおこしますが、2齢幼虫にはならないといわれています。
 
 

種類および分類上の位置

 
 

双翅目:Diptera
短角亜目:Brachycera
ウマバエ科:Gasterophilidae
ムネアカウマバエ:Gasterophilus nasalis
アトアカウマバエ:G.haemorrhoidalis
ウマバエ:G.intestinalis
G.pecorum

 
 

ウマバエの形態

 
 
成虫はミツバチに似ていますが、翅は1対で口器は退化しています。
 
 
体全体は毛深く一見して褐色にみえますが、種類や個体によって、黄色、黄褐色、赤褐色、灰色、黒色および白色の毛が頭部、胸部、腹部をおおっています。ウマバエ(G.intestinalis)の翅はすすけています。
 
 
脚は黄色、黄褐色、黒褐色などの色をしています。
 
 
卵はアトアカウマバエの色は褐色~黒色で、G.pecorumでは黒っぽく、ムネアカウマバエの卵は黄色、褐色または黒色です。
 
 
幼虫は1~3齢ありますが、3齢幼虫はいわゆるタケノコのようで頭部はやや細くなり、2本の鋭い鈎があります。
 
 
色はウマバエは赤色、ムネアカウマバエは淡黄色、アトアカウマバエは赤色、G.pecorumは血様赤色です。
 
 

ウマバエの発育および習性

 
 
成虫は夏に活動し、蛹から羽化した成虫(雄・雌)はただちに交尾し、1~2時間後には産卵を始めます。産卵が終わった成虫は餌をとらないで、羽化後、3、4日で死にます。
 
 
ムネアカウマバエ、アトアカウマバエおよびウマバエは馬の体毛上に卵を1~数個膠着します。1週間たらずでふ化した1齢幼虫を馬がなめたり、かんだりしたとき馬の口の中に入ります。
 
 
アトアカウマバエの1齢幼虫は自分自身で移動します。しかし、G.pecorumは草の幹や葉などに卵を生みつけ、そこで発育した卵を馬が草を採食するとき、草とともに口の中にはいり、口腔内でふ化して1齢幼虫になります。
 
 
どの種類のウマバエも1齢幼虫は口腔内の粘膜下にとどまり、その後2齢幼虫となります。
 
 
2齢幼虫はやがて3齢幼虫となり、胃、十二指腸あるいは直腸壁に固着し、その状態で長期間滞留して成熟します。
 
 
成熟した3齢幼虫は腸内容物とともに外界に排出され蛹になります。ウマバエの幼虫は宿主の消化管内にほぼ1年近くいて、春に宿主を離れるので年1回の発生です。
 
 

ウマバエの宿主とその習性

 

●ムネアカウマバエ
 
宿主
 
ウマ、ロバ、シマウマ
 
成虫活動期間
 
5~8月
 
成虫の寿命
 
3日以内
 
産卵場所
 
下あごの間の毛
 
産卵数
 
1本の毛に1コ、5コ
300~500コ/雌
 
卵期間
 
5~6日
 
 
 


 
 
●アトアカウマバエ
 
宿主
 
ウマ、ロバ、シマウマ(人-1齢幼虫のみ)
 
成虫活動期間
 
6~9~10月
 
成虫の寿命
 

 
産卵場所
 
(下唇の短毛)口の周囲やほほの毛
 
産卵数
 
50~200コ/雌
 
卵期間
 
2日
 
 
 


 
 
●ウマバエ
 
宿主
 
ウマ、ロバ、ラバ、(人-1齢幼虫のみ)
 
成虫活動期間
 
夏・秋
 
成虫の寿命
 

 
産卵場所
 
前肢の肘の内側、距毛、背腹部、後肢の毛
 
産卵数
 
1本の毛に数コ
400~700コ/雌
 
卵期間
 
5日
 
 
 


 
 
●G.pecorum
 
宿主
 
ウマ、ロバ、シマウマ(人-1齢幼虫のみ)
 
成虫活動期間
 
4~9月
 
成虫の寿命
 
4日
 
産卵場所
 
草の幹、葉
 
産卵数
 
1つの草の葉に10~15コ
1,300~2,425コ/雌
 
卵期間
 
5~8日
 

 
 

ウマバエの害

 
 
ウマバエ成虫は産卵のため馬に向って飛来してくるので、馬は興奮し、奔走して日中はまったく採草しません。
 
 
ウマバエの幼虫が胃、腸壁に寄生すると、するどい棘や口鈎によって消化管の内壁を機械的に害して胃腸の機能を阻害します。
 
 
おもな症状は消化障害、食欲異常、貧血、栄養不良で、衰弱することがあります。しかし、一般にはウマバエ幼虫が寄生していても症状を呈しないことがおおい。
 
 
これらの症状以外種類によって次のような害を馬に与えます。
 
 

ムネアカウマバエ

 

1齢幼虫は歯ぎん内に膿汁の袋をつくり、組織壊死をおこします。

 
 

アトアカウマバエ

 

唇内に幼虫が寄生すると馬は非常に不安になり、肛門近くに寄生すると排糞困難、直腸脱をおこすことがあります。

 
 

ウマバエ

 

胃内の2、3齢幼虫は組織の滲出物や血液を吸収し、胃粘膜に浮腫を生じます。

 
 

G.pecorum

 

舌根、咽頭壁などに寄生すると嚥下困難となることがあります。

 
 

ウマバエの防除

 
 
ウマバエの防除は成虫の産卵を防ぐこと、卵を殺すことおよび消化管内の幼虫駆除です。ウマバエは日中活動するので、日中は馬を厩舎内におき、夜間放牧することはウマバエ防除の一方法です。
 
 
放牧場内に馬が避難できるような樹木林をつくることも必要でしょう。また産卵防止のため、馬体のうちウマバエが産卵しやすい場所、たとえば頭部の顎、唇、前肢、下腹などを布でおおって保護します。
 
 
忌避剤を塗布することもありますが、あまり期待できません。
 
 
産卵された卵は馬体の手入れ時、被毛とともにとり去ります。しかしながら、産卵防止、卵の除去などは夏期放牧などの場合は容易なことではないので、消化管内幼虫の駆除が必要です。
 
 
古くから二硫化炭素の内服が行われ、馬の飼育が盛んであった戦前は必ず定期的に二硫化炭素による駆除が実施されていました。
 
 
現在では低毒性殺虫剤を経口投与しています。

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