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イエバエ類(house flies) ~ 形態・習性および発育・害・防除

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イエバエ類(house flies) 家畜害虫

 
 
畜舎あるいは鶏舎を訪れると多数のハエが飛翔しています。
 
 
また、牧野などの放牧地の牛体に無数のハエが寄生しています。このハエの種類は数多く、10科以上を数えます。
 
 
本ページでは家畜と関係のある非刺咬性のハエについて紹介します。
 
 

おもなハエの種類ならびに分類上の位置

 
 
双翅目:Diptera
短角亜目:Brachycera
イエバエ科:Muscidae
イエバエ亜科:Muscinae
イエバエ属:Musca
イエバエ:M.domestica
ウスイロイエバエ:M.conducens
ノイエバエ:M.hervei
クロイエバエ:M.bezzii
セジロハナバエ属:Morellia
セジロハナバエ:M.saishuensis
ミドリハナバエ属:Orthellia
ミドリハナバエ:O.coerulea
トゲハナバエ亜科:Phaniinae
ヒメクロバエ属:Ophyra
ヒメクロバエ:O.leucostoma
クロツヤハナバエ:O.nigra
オオイエバエ属:Muscina
オオイエバエ:M.stabulans
ヒメイエバエ亜科:Fanniinae
ヒメイエバエ属:Fannia
ヒメイエバエ:F.canicularis
 
 

イエバエ類の形態

 
 
ハエは双翅目を代表する典型的な形態をしていて、成虫は1対の翅と3対の脚をもち、大きな複眼と口器をもっています。
 
 
卵はバナナのような形で幼虫は細長く、いわゆる「うじ型」をしています。
 
 
また、蛹はビール樽のような形をして、発育の段階によってまったく違った様相を呈します。
 
 

イエバエ類の成虫

 
 
体長は4~15mmあって、種類によりまちまちです。
 
 
体は明瞭に頭部、胸部、腹部の3部に分れています。体色は種類によりいろいろな色彩をしていますが、一般に暗黒色、灰白色です。
 
 
頭部には複眼compound eyesと単眼ocelli、simple eyes、触角antenna、ひげpulpi(小あごひげmaxillary palpi)および口吻proboscisがあり一定した剛毛があります。
 
 
ハエの複眼は左右に分かれていますが、雄の複眼は雌の複眼よりさらに大きく、左右のものが接近し、その間は細い糸の太さくらいしか離れていません。
 
 
触角は1対あり、それぞれ3節からなり、第1、2節は小さいが第3節は大きくて端刺aristaが生えています。
 
 
口器は伸縮自在の口吻よりなり、非刺咬性のハエは餌をなめるときには口吻をのばしますが、それ以外のときは縮めています。
 
 
しかし、サシバエのような刺咬性のハエは吸血に適するような構造になっています。
 
 
イエバエのような非刺咬性のハエの口吻は3つの部分よりできています。すなわち基部nostrum、吸部hastellumおよび唇弁labellaよりなります。
 
 
唇弁は口吻の先端にあって、心臓型をしている1対の大きな軟らかい肉状をなし、その下面には約30個の偽気管pseudo tracheaeという隆起線が平行して走っています。
 
 
偽気管は管で直径3~4μあり、液状の餌およびこの直径より小さい微細な固形物は偽気管を通って体内に摂取されます。
 
 
吸部は大きな下唇labiumと細長い舌状体hypopharynx、上唇labrumからなっていて、大あごmandibleと小あごmaxillaはありません。
 
 
下唇はくぼみをつくり、下唇、舌状体および上唇とで管をつくり、偽気管から摂取された餌を体内に送りこみます。なお、舌状体には唾液管salivary ductがあり、唾液を分泌します。
 
 
吻rostrumは頭部に接着し、咽頭pharynx、唾液管があります。また、頭部にある対のひげはよく発達しています。
 
 
胸部は硬く、前胸prothorax、中胸mesothorax、後胸metathoraxの3節からなり、剛毛でおおわれています。
 
 
各節からは同じ形の脚が生え、中胸からは強力な翅が生えています。
 
 
脚は基節coxa、転節trochanter、腿節femur、?節tibia、跗節tarsiよりなり、跗節はさらに5つの節に分かれています。
 
 
第5跗節は1対の爪clawと1対の褥盤pulvillusがあります。褥盤は常にしめり、粘着性があります。翅には翅脈があって種類の同定に役立っています。
 
 
そのほか胸部には翅の退化した平均棍halterと鱗弁squamaがあって、飛翔のとき体のバランスを保っています。
 
 
腹部は5節よりなりますが、第1節はみえない。外部生殖器は後端にあり、雌は産卵管oripositorがみえます。
 
 

イエバエ類の卵

 

乳白色をし、長さ約1mmでバナナ型をしています。

 
 

イエバエ類の幼虫

 
 
乳白色をして1齢幼虫の大きさは約1mmですが3齢幼虫となると10~14mmになるものがあります。幼虫の形は円錐形で12節よりなり、前方は頭部となり小さい。
 
 
後端は幅広くなっています。
 
 
口mouthと咽頭骨格cephal-opharyngeal skeltonがあります。咽頭骨格の近くに掌状の前方気門anterior spiracleがあり、後端には後方気門posterior spiracleがあります。
 
 
後方気門の裂孔は1齢幼虫では1個、2齢では2個、3齢では3個あり、1齢幼虫は前方気門がないので、これにより幼虫の齢はわかります。
 
 
ハエの幼虫はいわゆる「うじ型」をしていますが、ヒメイエバエの幼虫および蛹の形はややおもむきを異にしています。
 
 
ヒメイエバエの幼虫は背腹に扁平で褐色を呈し体表に多くの肉質突起を生じています。
 
 

イエバエ類の蛹

 
 
ハエの蛹は3齢幼虫の外皮の内でつくられます。
 
 
これを囲蛹pupariumといい3齢幼虫の末期に外皮が硬化し縮少します。
 
 
一般的に亜円筒形で前後両端は丸味を帯び、初期は乳白色ですが、時間の経過とともに赤褐色、黒褐色になります。
 
 

イエバエ類の習性および発育

 
 
非刺咬性のハエの成虫は、雄も雌も同じような餌を摂取します。餌は液状のものか、固形物を唾液で溶かして液状にしたものか、あるいは口器の唇弁にある偽気管を通過できる3~4μ以下の粒子の固形物などです。
 
 
また、幼虫は有機物を咽頭骨格を動かして盛んに摂取します。しかし、卵や蛹はまったく餌をとりません。
 
 
ハエ類の発育は完全変態で、卵、幼虫、蛹、成虫と発育します。
 
 
発育に要する日数は種類によって多少異なりますが、イエバエとあまり違いません。
 
 
イエバエの発育は温度、湿度、発育に要する栄養物の多少によってまちまちですが、夏季では卵期間0.5日、幼虫期間4~6日、蛹期間4~5日で、卵が成虫になるまで10~14日くらいで終了します。
 
 
イエバエの雌は交尾後、2~3日たつと産卵を始めます。
 
 
産卵場所は家畜の新鮮な糞便や厨芥のような幼虫が生息しやすいところで、一般的には日中産卵します。
 
 
雌は産卵管を糞便などに差込んで、1回に50~150個の卵を卵塊として産みつけます。
 
 
ヒメイエバエの産卵数はイエバエよりやや少ない。卵は乾燥に弱く、温度40℃以上あるいは15℃以下では大部分死滅します。
 
 
卵のふ化時間は好条件下では6~12時間です。
 
 
温度が高くなってもふ化時間はほとんど変わりませんが、低温では延長します。ふ化直後の1齢幼虫は環境の影響、すなわち、温度、湿度あるいは薬物に対しても感受性が高いですが、2齢、3齢幼虫と発育がすすむにしたがって外界の影響をうけにくい。
 
 
幼虫は餌を多量に摂取し、空気中の酸素も多量に必要とします。このような条件の悪いときには発育の悪い、小さな幼虫になります。
 
 
3齢幼虫の末期になると、外皮は硬くなって蛹になります。蛹は餌をとらず、土の中、堆肥の乾燥したところ、時にはコンクリート床上などにもぐります。
 
 
蛹の期間は暖かいときには4~5日ですが、涼しいときには1~2週間かかり、冬期は蛹の状態で越冬することがおおい。
 
 
蛹がじゅうぶん発育して、蛹殻内で成虫の形ができるとやがて羽化します。羽化のときには蛹の上方を開けて頭部の前面から脱出します。
 
 
羽化直後のハエは速やかな歩行運動をしますが、まもなく翅がのび、体は硬化して飛びたちます。ハエは一般的に冬季期は蛹の状態で越冬しますが、成虫で越冬するものもあります。
 
 
春から秋まで各種のハエが活動しています。
 
 
イエバエ、ヒメイエバエ、オオイエバエなどは屋内性のハエで畜・鶏舎、住宅内で活動していますが、ノイエバエ、クロイエバエ、ウスイロイエバエなどは屋外性のハエで牛の体に多数寄生しています。
 
 
これらのハエはアブ、ブユ、サシバエなどの吸血後の血液を舐めることもあります。イエバエは昼間、住宅内や畜舎内の食卓、飼槽、床などで餌をとりながら生活していますが、ヒメイエバエは床上1.5~2.0mくらいの空間をぐるぐる飛んでいます。
 
 
夜間はいずれも天井などに静止してすごします。ハエの発生源は種類によってまちまちですが、家畜の糞便は好適な発生源となっています。
 
 

ハエの活動場所

 
 

屋内性のハエ
 
 
●種類
 
 
イエバエ、ヒメイエバエ、オオイエバエ
 
 
●活動場所
 
 
食卓、台所、餌場、畜体など
 
 
●主な休息場所
 
 
主として天井、ときにより木、草の幹や葉の上

 
 


 
 

屋外性のハエ
 
 
●種類
 
 
クロバエ、キンバエ、ニクバエ、サシバエなど
 
 
●活動場所
 
 
ゴミ捨て場、堆肥、地表面など
 
 
●主な休息場所
 
 
樹木、草の幹や葉の上

 
 

イエバエ類の害

 
 
非刺咬性のハエは人の食物、家畜の飼料、あるいは厨芥、糞便など人畜の生活と関係あるものに集まるので、各種の病原体や寄生虫を伝搬します。
 
 
また、野外に多いノイエバエ、クロイエバエなどは牛の顔面にとまり、涙液を舐めたり、他の吸血性害虫が吸血した後の血液を摂取します。
 
 
このようにハエは古くより人畜の生活と深い関係があるのでvectorとしての害はおおきい。家畜寄生虫の中間宿主となるハエは次にようです。
 
 

寄生虫の中間宿主となるハエと寄生虫

 

●イエバエ

ハエ馬胃虫 Habronema muscae
大口馬胃虫 H.megastoma
 
 
●ノイエバエ

ロデシア眼虫 Thelazia rhodesi, T.skrjabini
 
 
●クロイエバエ

ロデシア眼虫 T.rhodesi
 
 
●ウスイロイエバエ

大口馬胃虫 H.megastoma
沖縄糸状虫 Stephanofilaria okinawaensis

 
 
また、病気のvectorとなるハエは下記のようです。
 
 

ハエが媒介する病原体

 

●病原体

Moraxella bovis(牛のピンクアイの病原体)

●vector

Musca autumnalis
 
 
●病原体

ニューカッスル病ウイルス

●vector

ヒメイエバエ

 
 
以上のようなvectorとしての害のほか、屋内性のハエ、イエバエ、ヒメイエバエ、オオイエバエなどはnuisanceとしての害が大きく、社会問題さえ起こします。
 
 

イエバエ類の防除

 
 
屋外性のハエは発生源対策が困難であるので成虫対策に重点をおかなければいけません。
 
 
畜体に薬液を散布したり、バックラバー、ダストバッグを応用していますが、完全な技術の解決はできていません。

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