ワクモは日本全国はもとより、世界各地で養鶏上莫大な害を与えるダニです。
ワクモは主として鳥類に寄生して吸血しますが、まれに哺乳類にも寄生することがあります。
ワクモの形態
雌成ダニの体長は1mm内外ですが、幼ダニ、若ダニはこれより小さい。
未吸血のときには、肥厚板を除いて灰白色をしていますが、吸血すると、赤色からだんだん暗赤色、黒色になります。
触肢は細長く歩脚状です。
鋏角は無色透明で見えにくいが、雌の鋏角は細長くて剛針状を呈し、雄の鋏角ははさみ状になっています。背板は幅広く卵円形で、後端は胴体部の後縁まで達しません。
また、背板の後縁はほぼ直線状あるいはゆるやかに彎曲しています。
胸板には2対の毛が生えています。肛板は円形をもった亜三角形で、前縁はおおむね直線状です。肛門は肛板の中心部より後方で開口しています。
ワクモの発育と習性
雌ダニは吸血後、鶏舎内のはめ板、壁板や柱の割目、鶏ケージのアングルの蔭、鶏の巣などにひそんで産卵します。卵はやがて幼ダニとなります。
幼ダニは3対の歩脚をもっていますが、餌はとらない。
幼ダニは脱皮して第1若ダニになります。第1若ダニは、夜間鶏体上に移動して吸血します。昼間は鶏体を去り、ものの蔭にかくれて脱皮して第2若ダニになります。
第2若ダニも夜間吸血して、脱皮後成ダニになります。成ダニの吸血量は約0.2mgです。Sikesら(1954)によると、ワクモの発育は次にようになっています。
ワクモの一世代は8~9日で完了するといっています。雌ダニは数回吸血をくりかえし、そのつど産卵して計20コ以上産卵するといわれています。
ワクモの吸血時間は5~30分です。飽血したワクモはただちにかくれ場所をさがし、吸血後24時間以内で産卵を始めるものもありますが、多くは24~72時間たってから産卵をはじめます。
1回の産卵数は5~7コが多い。
ワクモは一般に冬季は活動しませんが、夏季には活発に活動し、繁殖力も旺盛です。しかし、気温が25℃あれば一年中活動します。
最近作られているウインドレス鶏舎のように保温された鶏舎では、一年中ワクモが繁殖する可能性があります。成ダニは吸血しないでも4~5ヶ月生存でき、一般に成鶏より若鶏に寄生しやすい。
ワクモの寄生宿主としては、鶏、鳩、雀、ムクドリ、カナリヤ、その他の飼鳥や野鳥ですが、人や兎、マウスにも寄生することがあります。
ワクモの害
鶏舎内の温湿度がワクモの活動に好適であったり、木の割目やごみが多くワクモのかくれ場所が豊富であると、大発生の原因となります。
①ワクモの寄生、吸血のため、鶏は不安状態となり、夜間の安眠がさまたげられます。
②吸血によって鶏は貧血を起こし、衰弱します。
③その結果、発育や産卵率は低下し、死亡することもあります。
④さらに、病気に対する抵抗力も低下します。
⑤ワクモのvectorとしての害は、鶏のスピロヘータ、家禽コレラ、トリパノゾーマ、脳炎ウイルス、雀のランケステレラを媒介します。
ワクモの防除
壁板や柱の割目は目張りをしてすきまを作らないようにしておきます。鶏ケージの蔭、天井の張りの上、ケージや餌樋、給水樋の裏などにごみをためておかない。
このようなところにワクモはかくれているので、よく掃除をして生息場所をなくすように対策します。
ワクモは野鳥にも寄生するので、雀などが鶏舎内に入らないように、出入口や窓は金網張りとします。
さらに野鳥が鶏舎の近くで巣を作らないようにすることも大切です。
以前鶏舎として使用していた建物を、再び鶏舎として使用する際には、よく掃除をしてから殺虫剤をじゅうぶん散布した後、鶏を収容します。
殺虫剤の水溶液、粉剤などを鶏舎の壁、鶏ケージ、器具、その他ワクモの生息しそうな場所に散布します。殺虫剤は一般に、ワクモの卵にはほとんど効果がないので、1週間間隔で2~3回散布します。

