食道は頸部、胸部、腹部の3部に大別され、馬では全長125~150cm、牛では90~105cmです。当初は気管の背面を走るが、頸の下部では左側に出て、外部からもその充満の状態がみられる。
食道は反芻獣や犬では、全長にわたって横紋筋からなり、反芻、嘔吐が比較的自由です。馬では横紋筋が途中で平滑筋にかわり、噴門に達している。
食塊の進行は横紋筋では早いが、平滑筋ではきわめて遅い。牛では食塊が胃に達するのに20秒位ですが、馬では60~80秒を要します。犬では2~6秒で胃に達する。
液体は一般に急速に食道内を流れ、末端で蓄積し、蠕動によって胃にはいる。迷走神経、舌咽神経および交感神経が分布する。
検査法
食道の検査法としては、次の方法がとられる。すなわち、頸部食道の疾患については、頸側部の視診と触診により、局所的変化を知ることができます。
また食道に疾患があるときは、その障害の程度によって、症状および経過を異にするが、採食不能、嚥下困難、流涎、嘔吐、咳嗽、呼吸困難など、あるいはそれに継発する異常所見を認めることができるので、これらの観察を行うことが必要です。
食道梗塞や食道内壁の異常を知るために、食道カテーテルや、食道鏡が用いられ、また単純X線撮影および造影剤による撮影は、食道の異物刺入や狭窄および拡張の診断上きわめて重要となります。
食道内異物および食道梗塞(Foreign Bodies in the Oesophagus and Choking)
各種動物に発しますが、とくに牛に多く、頸部および胸部食道のいずれにもおこる。
原因:体力衰弱(妊娠、過労)、消化力の減退(唾液、消化液の減少、蠕動微弱)、採食中の驚愕、不安、採食の突然中止、麻酔などは発生の有力な素因となります。食道狭窄、食道粘膜損傷などは誘因となります。
馬では異物、粗大飼料、粉末飼料の蓄積凝固(食道麻痺・食道弛緩時に食道内で)などにより発する。牛では尖鋭物、異物、根菜、カブ、リンゴなどの固形物の嚥下などにより、犬では針、釘などの尖鋭物、異物、骨片などによることが多く、豚では根菜類、肉塊、異物などによります。
症状:梗塞部位は限定されないが、咽頭直後、胸腔入口付近および噴門部に多いというものもあります。馬では、症状は突発することもありますが、徐々に発することも少なくありません。
当初採食不振、不安、嘔吐運動がさかんにみられ、飼料・飲料水が鼻、口などより逆流して一見胃破裂の症状を呈する。次いで咳嗽、呼吸困難がおこり、梗塞部の膨隆がみられる。
時には吸引性肺炎を発するものがある。消息子の挿入によって梗塞部を深診しうる。
牛では、多く突発し、ただちに顕著な流涎、不安症状を発し、嘔吐運動をさかんに行う。しばらくして第一胃の鼓脹を発し、呼吸困難、不安症状が大となる。
梗塞部の膨隆腫脹を認めることが多く、咳嗽を発する。発生と同時に採食を中止し、しばしば鼻孔から飼料片の逆流をみる。患畜は頸を地上近くに伸ばし、嘔吐を試みる。
梗塞の状態が続くと、重度の鼓脹を招き死亡するから注意を要します。
犬でも多くは突発し、大動物と同様、不安、嘔吐運動がおこり、流涎、咳嗽を発します。消息子で、あるいはX線によって梗塞物の位置を知ることができます。
豚でも以上とほとんど同様な症状を示します。
治療法:牛ではまずその部位をたしかめ、その位置により異物の推送か、上部へ取り出すか、あるいは破砕するかを決める。
馬の場合は根菜類などの大食塊は少なく、粉餌の固い凝固物であることが多いので、食道切開によらねばならぬことが多い。
犬ではアポモルフィンなどの吐剤を試みる。
異物の推送を試みる時は、ピロカルビン注射、油剤の食道内注入、胃カテーテルによる水の注入排出などの補助手段を繰り返す。
食道深子は種々のものが考案されていますが、針金を曲げ先端にループをつくり、異物をこえて挿入し、それに梗塞物を引っかけて取り出す方法はしばしば成功することがあります。
食道深子による推送はなかなか困難ですが、とくに食道壁の損傷、穿孔には十分留意する必要があります。以上の処置によっても梗塞物の除去または推送が困難な場合は、食道切開手術により摘出します。
なお、犬や猫の胸部食道梗塞では、開胸手術により異物の摘出が行われる。この場合、とくに細菌の感染に注意する必要があります。
