受勒部の損傷(injuries of the interdental space*)
馬の受勒部すなわち隅歯と第一前臼歯の間には、勒または開口器の使用失宣などによってさまざまの損傷が発生する。粘膜の挫傷から骨膜に達するものまであり、馬は口辺の接触を著しく嫌う。
口腔粘膜の挫傷に対しては2%明礬水、生理食塩液による洗浄を行って自然治癒を待つ。外皮の損傷は一般創傷療法に準じて治療する。その他下顎には膿瘍を発生することが少なくない。
顎骨放線菌病(actinomycosis in the mandibula and maxilla)
牛に多く、山羊、稀に豚にもみられ、上・下顎特に下顎に多発する。
原因:Actinomyces bovisの感染に起因し、主として前臼歯の歯肉縁、歯槽より飼料片とともに侵入するものと、外力による下顎の外傷から発するものとがある。
症状:初期は軟部組織および骨のびまん性腫脹が生じ、次第に増大して、ついに特異な硬固物となる。歯肉、歯槽に膿瘍を生じ、しばしば自潰排膿して数か所に瘻管を形成する。中にグラム陽性の菌塊sulfur granuleを認めることができる。
病変は顎骨に波及して骨膜炎がおこり、また骨の崩壊、粗鬆化をきたし、歯が弛脱するため咀嚼、嚥下が困難になる。口内に悪臭があり、いびき様の呼吸音を発する。
経過は極めて慢性で数か月~数年におよび、動物は削痩する。
治療法:ヨード療法(NaI体重1kgにつき0.08g, 10%溶液, i.v)、X線照射はあまり効果が期待できない。ペニシリン、ストレプトマイシン(日量5g, 3日間i.m.)、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、サルファ剤(普通投与量の約2倍量を5日間)の投与は有効です。
また局所を切開して排膿をうながし、創内に濃厚ヨードチンキ綿を充填する。なお以上の治療法を併用すると一層効果が高まる。
顎関節炎(arthritis of the temporo-mandibular joint)
馬、犬にまれにみられる。打撲、外傷、褥瘡などより発し、また付近のフレグモーネ、腺疫および膿毒症などの転移によって発する。
高度の咀嚼困難、他動的開口時の疼痛、関節付近の硬固な腫脹、軋轢音を発し、牙関緊急trismusの症状を示すことがある。
慢性症では咀嚼筋の高度の萎縮、関節癒着などがみられる。
治療法として、局所的に皮膚刺激薬の塗擦、焼烙などを試みるが、予後は一般に不良です。