検査法
耳の外科的疾患ないし外科的処置は、大動物よりも小動物の方がその機会が多い。牛・豚では時に耳刻、耳標をつけることがある。検査にあたっては、まず一般に、頭を振ったり、頭を傾けたり、耳を掻く動作をしたり、痛みを訴えたり、耳からの分泌物があるかどうかなどの病徴をたしかめる。
耳介の挫傷、裂創、創傷痕の有無、血腫、腫脹を調べる。さらに皮膚の寄生虫には十分注意を払う。通常犬の場合には、外耳道の十分な検査あるいは処置のため、短時間の麻酔をほどこした上で行うことが多い。
犬種によっては、耳道内が毛深くて検査を妨げるものもありますが、湿した綿棒などで拭いて診ることも有効です。同時に耳垢、滲出物、組織破壊物などのつまっている時は、これを静かに清拭する必要がある。
また外耳道の特殊な分泌物(膿様、血様、漿液性)については、その性状を調べる。
犬に使う耳鏡などはやや長めのものが望ましい。
耳血腫(hematoma of the auricle, othematoma)
皮膚と軟骨の間に生ずる血腫で、犬と猫に多発する。多くは耳の内面に発するが、時に外面あるいは両側面に発生することもある。
原因:皮膚病や外耳炎などにかかって耳を引っ搔いたり、激しく頭を振ったりすることによって血管に損傷が生じて出血するものと考えられています。
症状:耳介に円形の充実した腫脹が生じ、波動・疼痛を示す。急性炎症症状は間もなく消退するが、血液は長く残留し、穿刺吸引しても再発することが多く、時には化膿することもある。
本症は難治の例が多く、耳介が次第にねじれて著しく変形する結果に終わることが少なくない。
治療法:種々の治療法が発表されていますが、圧迫包帯のみで成果のあがることもあり、また中心部を切開、排液し、創縁を消毒洗浄して緊密に縫合することもある。
またFibrinfoamなどの局所適用、止血剤の注射が奏効することもある。特に処置後の耳の安静に留意し、包帯法を考慮する。
外耳炎または外聴道炎(耳漏)otitis externa(otorrhea)
外耳道の炎症は犬に多い。
原因:外耳道内の耳垢cerumen・塵埃の蓄積、異物、寄生虫、創傷、湿疹、細菌・カビの感染、耳根部皮膚炎の蔓延により発する。
症状:外耳道より悪臭のある分泌物を排泄し、耳介周辺を汚染し、固着する。耳内の不潔、瘙痒ないし疼痛が著明で、犬はしきりに耳を引っ掻き、頭頸を振る。
耳根部の指圧に対して一種の音響を発し、知覚過敏となる。一側ないし両側に発し、慢性経過をとることが多く、耳周辺の皮膚炎に拡大することもあります。
治療法:治療は根気よく長時日にわたって続けることが必要です。外耳道をオキシドール、酒精綿で十分清拭し、乾燥後、種々の抗生物質を用いる。
また耳内にタンノフォルムなどの収斂剤を撒布することもある。全身的には緩下剤で整腸に努め、野菜スープ、乳製品、アルカリ性飼料を給与する。
特に犬では、軟骨性外耳道は長く、また屈折して経路が複雑なため、徹底した治療を行うことが難しく、時に外科手術的に切開開放して治療を行う必要が生ずる。
中耳炎(otitis media)
豚にときどき見られ、その他の動物にも稀に発生する。鼓室および耳管の炎症をいう。
原因:鼓膜の穿孔がおこって、外耳道より炎症が波及し、あるいは感冒、インフルエンザの際に耳管を経て、感染継発する。
症状:体温上昇、食欲不振、元気沈衰、横臥、時には痙攣様発作などの全身症状を示す。動物は患側を下にして頸を曲げ、時には旋回運動をし、両側性の場合は頸を伸展して下方に下げる。膿が蓄積する時は聾状態となる。患部の検査は容易ではないが、特異の全身症状より判断する。
治療法:炎症が中耳に限局していれば、予後は比較的良好です。すなわち、全身的に大量の化学療法剤を連続投与し、ブドウ糖、リンゲル液、ビタミン剤を追加する。
局所的には麻酔後、鼓膜を穿孔し、サイフォン式に鼓室などの排液洗滌を行う。
