腫瘍の診断が確定した場合、それが良性腫瘍であるか悪性腫瘍であるかによって治療方法がおのずから異なってくる。良性腫瘍においては、一般に生命にかかわることが少なく、簡単な乳頭腫では自然に脱落して治癒することもあります。
しかし、その他のものでは、自然治癒の傾向がほとんどみられないので、それらは治療の対象となります。特に良性腫瘍でも、そのまま放置されて巨大となり、また圧迫牽引によって動物体が苦痛を感じたり、局所的に疼痛を生じ、あるいは悪性腫瘍に転化する傾向のあるものにおいては、早期に積極的な治療が実施されます。
悪性腫瘍では早期発見・早期治療を原則としますが、家畜では発見が遅れる場合が多い。したがって、まず患畜の全身症状を調べ、手術が可能かどうかについて検討する。
手術が可能なものについては、腫瘍のリンパ節転移や、できれば臓器転移をも調べ、これらの全摘出が可能であるかどうかを判定する必要があります。
一般に腫瘍が限局性で隣接組織との癒着が少なく、また転移のない時には、それが周囲の健康組織とともに完全に摘出しうる場合に限って完全治療が期待できるが、摘出にあたり腫瘍の一部が残存するときは再発し、かえって予後不良に陥るものです。
手術療法(operative treatment)
周囲の健康組織とともに全摘出を行う方法で、今日ほとんどすべての腫瘍の治療に実施されています。出血を最小限にとどめるため、腫瘍の栄養血管の主幹部を鉗圧止血しながら、順次に健康部より腫瘍組織を分離して摘出します。
嚢胞状のものは嚢胞のまま摘出します。また天然孔や分泌管付近の手術では、摘出後の整形処置を忘れてはならない。
鋭匙により腫瘍実質を掻爬除去する方法で、管腔内の腫瘍の場合に応用されますが腫瘍細胞を播種する可能性があり、一般的には推奨されない。
体表の有茎腫瘍に対し、その茎部を糸・ゴム紐などで結紮し、壊死に陥らしめて自然脱落をまつ。
鼻腔・膣腔・腹腔内などにある有茎腫瘍に対し、絞断器を用いて摘出する。
烙鉄・パクラン烙白金・電気焼烙器・電気メスにより烙断する。
腫瘍組織を液体窒素で凍結崩壊させる。
化学療法(cancer chemotherapy)
従来、腫瘍組織の破壊死滅をはかる目的で、種々の消毒薬や腐蝕薬の腫瘍実質内注入が試みられてきましたが、いずれも姑息的で、今日ほとんどかえりみられていない。
現在、腫瘍の化学療法剤としては、アルキル化薬、ビンカアルカロイド、代謝拮抗薬、抗腫瘍性抗生物質、ホルモン剤などがあり、いずれも悪性腫瘍に対して用いられています。
白血病や種々の悪性腫瘍で全摘出が不可能な症例や、手術療法と組合わせて使用される場合が多いが、これらのいわゆる制癌剤は、造血臓器や消化器系などへの副作用が強いので、使用にあたっては、十分に注意する必要がある。
なお、ホルモン依存性の強い前立腺癌や犬の肛門周囲腺腫瘍では、女性ホルモンの投与や去勢手術などが併用されています。
放射線療法(radiotherapy)
放射線療法には、古くからX線とラジウムが使用されてきたが、今日では、加速器や高電圧X線装置が普及し、また種々の放射性同位元素(⁶⁰CO,¹³¹I,³²P,¹⁹⁸Auなど)もさかんに応用されるようになりました。
放射線療法は放射線感受性の高い腫瘍が体表に近くあり、小病巣で転移巣のない場合に大きな効果が期待できる。一般に放射線の腫瘍細胞殺滅効果は手術療法についで大きいが、ときには手術より優れている場合もあります。
照射方法には、外部照射と内部照射の2法があり、体表または臓器の内腔から照射し、あるいはラジウムのように直接針を刺入する方法があります。
獣医外科領域では、X線や⁶⁰Coあるいは¹³⁷Csを用いたγ線の遠隔照射法が多く用いられている。副作用を避け、なるべく腫瘍に大量の線量を照射できるよう、通常は分割照射が用いられている。
上皮性の体表の癌や犬の可移植性性器肉腫(transmissible venereal sarcoma)のように、とくに感受性が高いものでは、放射線による単独治療も期待できますが、一般に多くの腫瘍に対しては、手術療法あるいは化学療法などと併用することにより、単独使用では期待できない効果の得られることが少なくない。