トリサシダニはヨーロッパ、北米、カナダ、ニュージーランド、日本などの温帯地域に分布しています。本邦では1963年に初めて愛知県の養鶏場でトリサシダニが発見され、以後全国に分布しています。
トリサシダニの形態
ワクモとトリサシダニは大きさや形が非常に似ています。
ワクモの成ダニは体長1mm内外ですが、トリサシダニはワクモよりやや小さい。いずれも未吸血のときは肥厚板を除いては灰白色です。
ワクモの雌の鋏角は剛針状をしていますが、トリサシダニの鋏角は雄、雌ともはさみ状になっています。背板は狭卵形で、側縁は後方で陥入しています。
また、肛板は卵円形で肛門は肛板の前半部に開いています。ワクモならびにトリサシダニの雌ダニの腹面にある胸板、生殖板、肛板は明瞭に区別されていますが、雄成ダニはこれらが癒合しています。
トリサシダニの発育と習性
ワクモ、トリサシダニいずれも卵 → 幼ダニ → 若ダニ(第1若ダニ、第2若ダニ)→ 成ダニ(雄、雌)というように脱皮しながら発育します。
また、両者とも鶏に寄生して吸血します。
習性上おもな違いは…
①ワクモは夜間のみ鶏に寄生し吸血しますが、トリサシダニは昼夜とも寄生します。
②ワクモは卵、幼ダニを除いて第1若ダニ、第2若ダニ、成ダニが吸血しますが、トリサシダニは第1若ダニ、成ダニのみしか吸血しません(第2若ダニは吸血しない)。
③一般的に、ワクモはトリサシダニより吸血量が多い。
④ワクモは鶏の全身に寄生しますが、トリサシダニは鶏の肛門付近や頭部に好んで寄生します。とくに、トリサシダニは雌鶏では肛門付近、雄鶏では全身に多い。
⑤ワクモはとくに幼雛の鶏に被害が大きく、トリサシダニは成鶏、なかでも雄鶏に多く寄生します。
⑥ワクモは鶏体外の生息場所で産卵しますが、トリサシダニは鶏体上で産卵します。
⑦ワクモは春、夏に寄生がひどく、トリサシダニは秋~春にひどい。しかし、他の季節にもかなり寄生することがあります。
トリサシダニは鶏、七面鳥、雀、飼鳥、野鳥をはじめ兎、マウス、人にも寄生します。
トリサシダニの伝搬は鶏相互の接触によることが多いですが、ダニが鶏のケージなどを伝わって移動し、他の鶏に寄生することもあります。
ワクモは吸血しないでも4~5ヶ月生存できます(Bakerら、1956)。
トリサシダニの害
トリサシダニは全生涯鶏体上に寄生して吸血するので‥
①ワクモと同様鶏は不安状態になり、睡眠はさまたげられます。
②鶏は貧血、衰弱、死亡することがあります。
③産卵率、増体量は低下します。
④病気に対する抵抗力は減退します。
⑤さらに、鶏の肛門周辺に寄生がひどいので、鶏は汚らしくなり、産卵された鶏卵上にダニが付着して商品価値を下げることがあります。
⑥vectorとしては、各種の脳炎ウイルス、ニューカッスル病のウイルス、鶏痘ウイルスを伝搬します。
トリサシダニの防除
トリサシダニの防除の第1は鶏舎内の清潔、掃除など環境整備です。また、ワクモと同様、鶏舎内に野鳥が侵入しないようにします。
トリサシダニは鶏体上に寄生していますが、鶏ケージなどにもいることがあるので、ワクモの場合と同様に鶏舎内に殺虫剤を散布します。
また、鶏体上のトリサシダニを駆除するには、鶏の羽毛内に殺虫剤がよく入り込むように1羽宛よく擦り込むことが必要です。
現在市販されている殺虫剤は一般に、成ダニ、若ダニ、幼ダニには有効ですが、ダニの卵に対する殺卵効果はほとんどないので、1週間間隔で2~3回散布することが大切です。
しかし、アメリカでは1963年ころよりマラソンがトリサシダニの駆除に効果がなくなったという報告がある(J.D.Foulkら、1963)。
これはマラソンに対する抵抗性の発達したトリサシダニが増加したためと思われます。他の害虫駆除の場合と同じように、薬剤使用に当ってとくに留意しなければならないことです。


