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鉱物毒中毒 ~ 水銀 Hydrargyrum Hg

鉱物毒中毒 ~ 水銀 Hydrargyrum Hg 家畜中毒

 
 

性状

 
 
自然水銀として産することもありますが、多くは硫化水銀(辰砂)HgSを焼灼して水銀蒸気とし、これを液化して製します。
 
 
水銀は比重13.595、融点-38.89°、沸点35.7°の唯一の液体金属元素であつて、光輝を有する銀白色で常温において揮散し稀硝酸、ハロゲン、硫黄には溶解しますが、塩酸、硫酸には侵されない。
 
 
他の金属と化合してアマルガムAmalgameを生じ、これは水銀軟膏およびその他の水銀製剤を作るに用いる。
 
 

(1)昇汞(猩汞)(塩化第二水銀)Sublimate HgCl₂

 

昇汞は食塩と硫酸水銀の混合物を熱し昇華して造ります。
 
重い白色粉末で比重は5.41に達し刺戟性の味を有し16倍の冷水、3倍の沸湯に溶解して酸性反応を示しアルコール、エーテルにも溶解し、殊に塩酸または食塩を加えると一層よく溶け、熱すれば265°で溶融して無色となり、307°で重い蒸気となり揮散します。
 
アルカリを加えると黄赤色、ヨードカリを加えると猩赤色、硫化水素を通ずれば黒色、アンモニウムを加えれば白色を呈し銅片に触れるとその面にアマルガムを生じ、卵白を加えると沈澱を生じます。
 
水溶液を日光に曝すと徐々に分解して甘汞に変じます。

 
 

(2)甘汞(塩化第一水銀)Calomel、Hg₂Cl₂

 

甘汞は塩化第二水銀に水銀を加え蒸溜して造ります。
 
HgCl₂+Hg=Hg₂Cl₂
 
帯黄白色の重い粉末で水に極めて溶け難く無味で熱すれば揮散しアルカリに遇うと次式の分解が起こって黒変するためカロメル(美黒色)の名があります。
 
甘汞は光に当たると逆反応により水銀と昇汞に分解します。
 
Hg₂Cl₂+2NH₃=NH₂・HgCl+Hg+NH₄Cl

 

 
 

(3)赤降汞(酸化第二水銀、赤色酸化汞)HgO..

 

黒色水銀を空気中で357°付近に熱すると、赤色のHgOを生じ、水銀塩にアルカリを加えると黄色のHgOが生じます。
 
即ち赤降汞は黄色あるいは黄赤色の重い粉末で酸に溶解し、熱すれば一部分金属水銀を析出して揮散し、日光に曝すと分解して水銀を析出し褐色となります。

 
 

(4)白降汞 HgNH₂Cl昇汞

 

10分を温蒸溜水200分に溶解して冷後その濾液にアンモニア水を加え沈澱させて製します。
 
白色の重い粉末で水に不溶解ですが、熱すると揮散しナトリウムおよびアンモニア水に依て黄色の酸化汞を生じます。

 
 

(5)赤色ヨード汞(沃化第二水銀・第二沃度汞)HgI₂

 

昇汞溶液にヨードカリ液を加えると最初黄色の沈澱を生じ、直ちに鮮猩紅色となります。
 
この粉末が赤色ヨード汞で水には殆ど溶けませんが、ヨードカリおよび130分の酒精に溶解し、熱すれば揮散する性質があります。
 
農業薬剤としての水銀剤は無機水銀塩より有機水銀化合物が多く、種苗消毒剤として勝れ使用範囲も広い。
 
a)昇汞は主として土壌や蚕室蚕具などの消毒に用いられますが、使用濃度は1000倍溶液で昇汞18g(重量%で水の0.1%)、水18ℓ、食塩少量を加え危険を防ぐためエオジンなどで赤く着色します。
 
殺菌力は極めて強く人畜に対して猛毒です。貯蔵に際して日光に当てぬことが肝要です。
 
有機水銀化合物は殺菌剤としての昇汞の長を採り短を防ぐため考えられたもので次の種類があります。
 
有機水銀化合物には次のようなものがありますが、物理、化学的性質が異なります。
 
b)ルベロン(C₂H₅Hg)₂HPO₄ エチル燐硫水銀 ethyl-mercuric-phosphate
 
c)ウスプルンCH₃OC₂H₅HgCl メトキシュチレン塩化水銀 methoxy-ethylene-mercuricchloride
 
d)セレサン、ルベロン、リオゲン・酢酸フェニール水銀 phenylmercuric acetate
 
e)グラノサンM、メルノサン・エチル水銀パラトルエン スルフォンアニライド ethylmercury-p-toluene-sulfonanilide
 
f)フロミン・フェニール水銀パラトルエン、スルフォンアニライド phenylmercury-p-toluene・sulfonanilide
 
g)PMF ジナフチルメタンジスルフォン酸、フェニール水銀 phenyl-mercurie-dinaphtyl-methane disulphonate(phenyl-mercury-fixtan)
 
ルペロンは水に溶け易いが、フロミン、グラノサンM、メルノサン、などは水に極めて溶け難く、溶解度の大きい化合物は水溶液として紫外線の影響により分解されますが、溶解度の小さいものは分解を分け難い。
 
蒸気圧はエチル塩化水銀、ウスプルンが大きく、ルベロンが小さい。然し燐酸水銀が水に溶け、エチル水酸化水銀C₂H₅HgOHになると蒸気圧が大となります。
 
撒布用には蒸気圧の小さいフェニール酢酸水銀などを用い、種子用液剤にはルベロンやウスプルンを用います。

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